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少子化の影響を考え、子供向けスイミングスクールから大人向けの健康増進施設に経営者の判断によって方向転換を図った。積極的な店舗展開を進めたが、会員数は見込みほど集まらず、借入依存度の高い経営となり財務体質が悪化。不採算店舗を切り離し、売却を進めたが、思うように売却契約が進まず、資金繰りに行き詰まった。
所在地 | 福島県 |
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業種 | サービス業 |
従業員 | 14名 |
設立・創業 | 設立:平成3年9月/創業:昭和60年3月 |
事業分野 | 医療・ヘルスケア |
事業概要 | 現在は大人の為のスイミング、スポーツ施設の経営を行っている。基本的には会員制であり様々な特典があり、地元を中心に平成19年5月時点で約1600名の会員数を有する。スポーツよりも健康増進施設としてのアピールを行ない、地元にて相応の知名度を有している。 |
社長の年齢 | 30歳代 |
創業時の属性 (職業) |
会社勤務(実父経営の会社) |
出店のペースが速く、その都度金融機関からの借入にて対応したことから借入依存の高い経営内容に陥っていた。この負担を軽減する為に既存の店舗を切り離したり、閉店するなどスリム化を図るが、それにより売上は大幅に減少しキャッシュフロー不足が生じ赤字運営を余儀なくされた。
平成3年に既存の子供向けスイミングスクールの営業を受ける形で設立された。平成9年には会員制クラブの運営を開始し、平成11年、平成12年と続けてスクール施設を開設した。平成16年スポーツ施設の営業を譲り受ける。これら積極的な店舗展開から5店舗の経営を行い、平成17年期決算ではピークとなる5億6,000万円超の売上を計上するまでに成長した。
2店舗の子供向けスイミングスクールを経営していたが、少子化問題から大人向けの健康増進施設に方向転換を図った。既存2店舗の減価償却も終わっていないなか、時期尚早との声もあったが、平成11年より大人向けの施設を設置した。これにより借入依存の高い経営となり、負担軽減の為に既存店舗を切り離さざるを得ない状況となった。
借入依存の高い経営となったことから、既存店舗の売却によって借入返済に充てた。一時的に財務状況は改善されたものの、今度は予想を上回る売上減少に直面した。最終的には全ての店舗の売却を進めることとし、既存2店舗の内、1店舗は売却が決定した。しかし、売却は決まったものの最終的な契約は長期化。平成18年に事業譲渡契約の調印を交わすものの、先方の一方的な都合でなかなか最終契約に至らなかった。平成19年にはようやく1店舗の営業権譲渡となるが、もう1店舗の売却は最終的に困難となった。
強い経営者の拡大志向
株主が代表者のみであり、代表者による経営判断で店舗展開が行なわれていた。急激すぎる店舗展開であっても、組織的に抑制することは不可能な体制にあった。
市場ニーズの見込みにズレ
メタボリック、生活習慣病が進む中で医療に頼らざるを得ない現代社会では、大人向けの会員スイミングスクールは爆発的に拡大すると見込んでいた。しかし健康的でない人が増えても健康に関心の高まりは鈍く、出店を進めるものの会員数は予想を大きく下回り、設備負担が重荷となった。
メタボリック、生活習慣病の解消をスイミングスクールでという発想は良かった。健康維持のニーズが拡大すると考えたが、当社の会員となる人はほとんどなく勇み足であった。同地区にほぼ隣接して3店舗を設置し、集中させることでスケールメリットによる会員増加を目指すも、結果的に会員数は伸びなかった。これにより店舗の売却に踏み切るが、売却先の選定が難航し、売却を持ちかけた先からは結果を先延ばしにされ、重く圧し掛かる経費負担が重く圧し掛かることとなった。機を逃すまいと急速な拡大を図ったが、企業として冷静沈着に物事を進めることが伴っていなかった可能性がある。
メタボリックが騒がれ、医療費負担の増加などから医療離れが進んでいく中、健康増進施設としてのスイミング、スポーツ施設の活用を消費者に提案したが、改善が必要な人は当社ではなく医療機関に頼る人が多かった。また、厚生労働大臣認定の健康増進施設に認定されたが、これによる特段のメリットも少なかった。
着実に1店舗づつ設備負担を吸収し、黒字化したところで新たな設備投資を考えるなど、慎重さが必要であった。設備投資に関しても銀行借入に頼りすぎたため内部留保を蓄積できずにいた。市場性を考え、子供向けから大人向けの健康増進施設の転換は必要であったが、それを実行する前に財務内容の強化が必要であった。もっと長期的な計画とし、財務内容を勘案しながらの店舗展開であれば着実に成長した可能性が高い。市場分析においては、消費者ニーズを分析し、事業プランの構想を練ったが、実行に移すには多くの人のアドバイスを受けたり、適切な規模やスピードを考慮して対応するべきであったかもしれない。健康増進施設としてのスイミングは同業他社に先を越されまいと強行したが、当社が先行して出店しても、ニーズがあれば似たような施設を作る同業者は現れる。既存店舗で内部留保を蓄積し財務面を強化してからの出店でも結果的には変わらなかったのかもしれない
現在、民事再生手続開始中ではあるが、受け皿会社を探す考えはなく、現在の経営者が責任をもって再生させる方針である。もし受け皿会社を探す気なら、民事再生ではなく会社分割にし分割会社に営業権を移し、その営業権を移した会社を売却、残った会社は特別清算にしていた。確かに自己破産の方が気が楽ではあるが、立て直すのは経営者として責任がある。しかし民事再生は会社のみのため、個人の保証債務はまた別という問題もある。個人保証の問題が問われる中、経営を続行し立ちなおす責任から個人での自己破産は出来ない(代表取締役になれない為)。地元中小企業は会社の資産も代表個人の資産も同じ場合が多いが、法的手続きは別というジレンマがある。