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大口顧客の経営悪化で受注が消滅した経営失敗の実例です。経営不振に悩む経営者の方は、会社の倒産、破産に強い弁護士にご相談下さい。

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44 サービス業の経営の失敗(2):大口顧客の経営悪化で受注消滅

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、大口顧客の経営悪化で受注が消滅した経営失敗の実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 大口顧客の業績悪化で受注が消滅し売り上げに穴が

一番の大口顧客が貸金業規制を受けて業績が悪化し、その影響から同社からの受注が消滅、売上に大きな穴が空いた。営業におけるリスク管理機能が欠如していたこともあり、当社とは直接関係のない規制とはいえ、それに気づくのが遅かった。

 企業プロフィール

所在地 石川県
業種 サービス業
従業員数 8名
設立・創業 設立:平成8年6月/創業:平成6年6月
事業分野 その他(化粧材料企画・開発・セールスプロモーション)
事業概要 化粧材料問屋からグラフィックス事業部として独立し発足。当初は取引先の広告・セールスプロモーション業務を手掛けていたが、その後ものづくり企業へ進出。いまではドラッグストア数社のプライベートブランド商品を請け負うまでに成長している。
社長の年齢 30歳代
創業時の属性
(職業)
会社勤務(親族経営の会社よりスピンオフ)


会社経営の失敗の詳細


 結論

最も取引額の大きかった販売先からの受注がなくなり、見込んでいた売上に大きな穴が空いた。しかし、金融機関の支援を受け、他社との取引を増やす努力により業績悪化を防いだ。

 設立から成功まで

親族が経営する化粧材料問屋に勤務し、専務となったが、扱い商品がどれも横並びで、他社のマネが多いとの思いから新事業を手掛け始めた。美大出身ということもあり、当初は取引先の広告・セールスプロモーション業務からスタートした。その後当社を設立し、3年間は経営全般の経験を積むため広告・デザイン業務に特化、Webコンテンツ開発も手掛けた。また、eコマース事業に参入。徐々に人脈も広がり、本格的なマーケットイン思想に基づく商品開発に注力していった。通販・ドラッグストア・業務用等各販路に対するヒット商品の導入が増え、、特に販売支援に関わる企画業務とデザイン性に評価を得て、業界での存在感を増している。

 課題・ヒヤリとした経験

これまで事業拡大を図るべく様々な業務に携わり、人員を増やしてきたため、支出超過から赤字となる期が続いたが、ある程度予想できる赤字であったため経営に行き詰まった感覚はなかった。ただ、当時一番の顧客であったS社からの受注が一気にゼロになった点が大きな衝撃であった。それまでは同社の製品をOEMで製造していた。同社はエステティックサロンの業務を手掛けていたが、貸金業規制が厳しくなりクレジット契約による施術や商品購入が低下し、サロン会員が減少。業績が悪化した同社からの年間7,000万円近い発注がなくなった。

 対処と結果

もっとも大きかったのは金融機関の支援と言える。D信金がメインであるが、同信金では「これからはベンチャー企業に対し支援していく時代」との考えが浸透しつつあった。売上落ち込み分を同信金からの借入で対処、繰り回しに支障はなかった。結果、借入増・支払利息増を招いたが、他社との取引が増えたことで平成19年期は増収決算となった。ただし、これまで通り赤字決算に終わり、依然収益性に課題を抱えている。

 原因

(1) 特性

危機管理や情報共有化の機能がなく、組織が未成熟
ものづくりが主という考えから営業機能に欠け、危機管理ができていなかった。設立当初から人員が少なく、かつ各人がそれぞれの業務を遂行する意識が強いため情報の共有化が図られていなかったなど、組織が未成熟であった。

(2) 要因

取引先の状況をよく把握していなかった
取引先が遠方であったため、話し合いの機会が少なく、情報交換不足に陥りやすい。取引が長くなってくると、いわゆる「慣れ」の状態になってしまいがちであった

 経営判断

経営判断に誤りがあったとは考えていない。同社からの売上がなくなったことは確かだが、焦付などの未回収が発生した訳ではなく、同社は現在も活動している。強いて言えば、世の中の情勢が取引先にどう影響するのか、ひいては当社にどのような影響を及ぼすかという予測能力に欠けていたのかもしれない。ただ、結果的に今回の事象があっても増収決算となった分、逆に今後益々業績を伸ばせるという自信にもつながった。

 背景

当社とは直接関係のない貸金業規制の影響を受けるとは予想外であった。また、近年は抗がん作用があるといわれるアガリクスが薬事法に抵触したり、「発掘!あるある大辞典U」のデータ捏造報道等が世間を賑せたことで、特長のある商品が売れにくくなった感がある。

 得られた教訓

正直、予想外の因子による事象であり、回避することは不可能であった。今回は実害がなかっただけ運が良かったと前向きに物事を考えている。ベンチャー企業たるもの大なり小なり失敗が付き物と覚悟している。起業2〜3年で成功なんて無理であり、最低でも10年は必要と考えている。常にリスクはあるが、最悪マイナスになってもその大きさが経営にどれだけ影響を及ぼすかを考えて、推進するか撤退するかを判断する。 今後もトラブルや失敗はあると思うが、その際身近に相談できる人がいるかが重要である。各分野のスペシャリストがいるかいないかで、対応の仕方が全然違ってくる。当社の場合、約100の組織(民間企業40前後、大学等の研究機関40前後、工業試験場等の公的機関20前後)が参加している「北陸ライフケアクラスター研究会」に所属していたり、人脈を通じて多くの人と交流させてもらっている点は有難い。今回の事象では直接生かせなかったが、他社・他人の失敗談は意外と精神的に安心できるものである。

 後日談

平成19年期で設立11期を終えた。デザイン・プロモーション企画は当初から継続している事業だが、eコマース開発のITベンチャー、産学官共同研究・バイオベンチャー、そして現在の商品開発・開発型ベンチャー(ライフサイエンス分野)へと変遷を辿ってきた。その間10期が赤字決算だが,取引先・金融機関・社員に支えられ今日に至っている。
失敗は付き物。とはいえ動かなければ成長はない。自らの身の丈を考えて、いかにマイナスを抑えるかが重要と考える。

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