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阪神大震災によって特需が発生し、売上は飛躍的に伸びたが、市場の動きを把握していなかったため、その反動が起きると一転して業績悪化に陥った。業績の急伸を自社の能力と見誤り、営業努力や損益管理、合理化などの企業努力を怠っていたため、不況時にはそれらのシワ寄せが大きく、利益水準は大きく落ち込み、一時的に経営に行き詰ることとなった。
所在地 | 兵庫県 |
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業種 | サービス業 |
従業員数 | 12名 |
設立・創業 | 平成元年5月設立・創業 |
事業分野 | 情報提供サービス |
事業概要 | 不動産事業開業サポート、駐車場等の設計・施工・管理、マンション・テナントビルの設計・施工・管理等を総合的に手掛ける。店舗が最大限の収益をもたらすよう新しいサービスを見つけ、業務の改善等を行うほか、各店舗における収益確保の為の新事業の企画・開発を行うなど、高付加価値サービスを提供している。近年は自社開発した駐車場管理システムが好調である。 |
社長の年齢 | 30歳代 |
創業時の属性 (職業) |
会社勤務(中途退社) |
阪神大震災の特需により大幅な業績の伸びをもたらしたが、その後の特需の反動により受注が急激に減少し、売上が低迷した。売上先行で損益管理などを怠っていたため、利益水準は大きく落ち込み、4期連続の減収減益を余儀なくされ一時的に経営に行き詰まった。
不動産会社に勤務していたが、不動産の販売は小売業と異なり、人的な要素が大切な職業であり、人と人とのつながりをもって組織が成り立っているという思いが常にあった。顧客の立場に立ち、顧客の利益を優先させるサービスは、企業のサラリーマンでは成し得ないとの思いから、平成3年に創業した。
独立に際して、家族などの親族のバックアップはもちろん、取引先や前職における上司などの様々な協力があった。前職の上司が仕事を紹介してくれたほか、不動産会社時代の顧客が新たな顧客を紹介してくれたりした。人脈構築の大切さを実感させられたとともに、信頼関係の重要性を痛感した。こうした多くの支援を受けて、外部環境の好転もあって事業は拡大していった。
平成7年1月の阪神大震災によって、兵庫県南部、特に神戸市内では特需が発生、売上も飛躍的に伸びた。一時的な特需であったにもかかわらず、自身(自社)の能力と過信してしまった。外部環境の好転を自身の努力の結果と取り違え、営業体制整備や損益管理などが後手に回った結果、不況時にはそれらのシワ寄せが大きく、利益水準は大きく落ち込み、4期連続の減収減益を余儀なくされた。これにより一時的に経営に行き詰まった。
損益管理を徹底させ、10%の売上高経常利益率の確保に注力した。また並行して建設事業から不動産管理・運営・コンサルティング事業への転換を図った。これらは、各案件が単発に終わる建設ビジネスではなく、コンスタントにキャッシュフローを生み出すストック型のビジネスである。思い切った業態転換の結果、毎月コンスタントなキャッシュインを生み出し、年間業績予想なども立てやすくなり、収益が安定した。潤沢なキャッシュフローが生み出され借入金の利益償還も進み、経営は大きく改善された。
外部環境の好転で業績が急伸し、自社の能力と勘違い
外部環境の好転などによりもたらされた業績の伸びが、自社の能力と勘違いしていた。自信過剰を生み、外部環境の将来についての把握を怠り、同業他社との検討比較をしなくなっていた。
特需の反動により受注が激減
阪神大震災により兵庫県、特に神戸地区に関しては復興需要が高まり、飛躍的に受注が伸びたが、その分反動も大きく、一気に建設不況に陥った。当社だけでなく多くの建設会社に共通することであるが、この時期に営業展開や合理化などが後手に回っていたことから、急激な落ち込みに対応できなかった。
震災による復興特需という外部環境の好転であるにもかかわらず、自社の経営努力であると見誤った。特需により多くの受注が来るため、売上高は特段の努力をせずともこの間伸びていった。損益管理も疎かになり、特需が終わり、外部環境が悪化すると一転して経営は低迷した。この頃になると少しの経営努力では浮上できなくなる。需要が萎んでから遅れて営業に走ってはみたが、少ないニーズに向けて他社はすでに一斉に動き出しており、お客を見つけることができなくなっていたという。
平成7年1月の阪神大震災は多くの尊い命が犠牲になったが、反面で建設特需を生み出した。その後20年分の建設需要が一度に産み出されたといわれている。しかしこれらは一時的なものに過ぎず、その分の反動も大きく、平成10年度以降はいわゆる建設不況に悩まされた。この間に経営努力を怠った多くの建設会社が倒産、現在も経営再建中の企業は多い。一時的に大幅に増えた公共工事が、淘汰されるべき企業の延命措置に働いたとも言われている。
近視眼的にならず、成長の各段階でしっかりした目標を掲げ、目標をきめ細かにクリアーすることが大切であった。具体的には、売上高経常利益率10%の最低損益ラインを死守することが当社にとって必要である。
創業期、発展期、成熟期などと段階があり、規模においても従業員が数名の企業もあれば数万人規模の大会社もあるが、自社がどの位置にあるかを経営者が的確に把握し、規模に見合った明確な目標を持つことが重要である。また、成長に組織作りが追いついていない状況も慢性的な課題であるため、従業員の教育や組織作り等ハード面の強化も進めていく必要がある。
業態の転換を経て売上高は回復、ストックも積みあがり利益率は大幅に改善された。これは、各段階においてきめ細かい目標を掲げ、順々にこれらをクリアーしてきたことが大きい。同業他社が手っ取り早い中途採用に走るなか、新卒などの採用を進め人材育成に注力し、一からの組織作りに励んできた。同友会など地域における会合などにも出席し、情報を収集することも大切にしている。