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大手研究所からスピンアウトして設立されたベンチャー企業であるため、財務面等、企業経験や専門人材が絶対的に不足していた。設立後間もなく大手製薬企業との巨額な契約を得たが、その後はコスト管理の不徹底さもあり、資金不足に陥った。
所在地 | 茨城県 |
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業種 | 情報サービス業 |
従業員数 | 12名 |
設立・創業 | 設立:平成12年8月/創業:平成12年8月 |
事業分野 | 医療・ヘルスケア |
事業概要 | J研究所のバイオ研究チームがスピンアウトする形で設立。大手製薬会社等との共同開発による創薬関連情報の提供、遺伝子発現解析技術の提供等を手掛けている。最終的な事業形態はゲノム創薬を目指す。 |
社長の年齢 | 30歳代 |
創業時の属性 (職業) |
会社勤務(スピンアウト) |
大企業出身の研究員がメンバーとなって設立したため技術力は秀でているが、企業経験やベンチャー企業としての経営技術が不足していた。大手製薬企業との大型契約もあり、その後の見通しと実際の運営にズレが生じ、コスト管理も不徹底であったため資金不足に陥った。
現代表を含むJ研究所のバイオ研究チームでスピンアウトし、平成12年に当社を設立した。設立後間もなくして大手製薬企業と5年間の共同研究契約を結ぶ。平成14年には単独で、世界初の遺伝子発現像解析システムを開発、その後日本バイオベンチャー大賞で受賞するなど、研究開発において立て続けに成果を残している。平成16年は米国製薬メーカー、国内中堅製薬メーカーとの共同プロジェクトも行った。平成18年以降は病理診断の新テクノロジーの研究・開発に取り組んでいる。
研究機関の研究者チームがスピンアウトする形で設立された経緯にあり、財務面・資金面での経験・専門知識を持った人間がいないため、資金不足の状態に陥りやすく、取引先との交渉も不利になる場合が多かった。設立後間もなくして大手製薬企業と巨額の契約を結んだが、それ以降、米国メーカー、国内製薬メーカーとのプロジェクトもあったが、経済情勢や製薬業界の事情等もあって、設立時以上の大型契約を結ぶまでには至っておらず、一時業容は縮小傾向が続いた。
株主の理解を得る形で減資を行い財務内容を改善した。また、財務・資金面での知識を持った人材を平成17年に新たに採用するなど、立て直しを図った。その結果、財務内容は改善されたが、これまでの累積から十分な資金を確保するには至っていない。
企業経営の経験が不足していた
卓越した技術を持つバイオベンチャーではあるが、メンバーが研究者のみで独立した経緯があり、資金面等、経営管理面において、絶対的に企業経営の経験が不足していた。
事業運営の見通しに若干の甘さがあった
大手製薬企業との大口契約を結んだこともあって、事業の見通しがわずかに甘くなった可能性がある。それゆえ、その後の日本の製薬業界全体の再編・低迷等の影響を大きく受けることにもなった。
設立してすぐに最初の大口契約締結もあって、当初は資金に対してゆとりがあった。周囲からの高い評価もあり、その後の見通しに大きなズレが生じた。
米国企業はその技術が市場に出たときの収益を狙い、発展途上にあるものを積極的に支援するが、日本企業は完成した技術のみを欲しがる性質がある。日本の製薬業界は研究開発段階にあるものに対して、将来の価値についてはあまり理解していない。これに加え、製薬業界再編の影響等もあって、大手製薬各社の研究費への支出が大幅に減少した。
資金不足の問題は未だ完全には回避しきれていない。しかし、経営への甘さを捨てるとともに、経済的な感覚がきちんとわかる人物が経営を担当することによって、状況は改善出来ると考えている。また、足元では常にコスト管理を徹底することが重要である。
技術力、研究レベルは群を抜く高さがあるものの、企業経営としては資金面で課題を残している。資本政策およびコスト管理の重要性など、これまで経験してわかったことが、財務面がしっかりしていれば優秀な企業に成り得たかもしれない、と話している。