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49 サービス業の経営の失敗(7):震災での売上急減

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、震災で売上が急減した実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 取引先が阪神大震災で被災し売上が急減に

売上の大半を占めていた取引先が阪神大震災によって被災し、発注が停止。販売先を分散させるなど、リスク対策への取り組みが遅れていたため売上高の急減という事態を招いた。また、新規事業をスタートさせたが、サービス体制の未整備もあり顧客の期待に沿う結果が得られず、撤退を余儀なくされる。

 企業プロフィール

所在地 大阪府
業種 サービス業
従業員数 60名
設立・創業 設立:平成2年5月/創業:平成2年5月
事業分野 その他(採用支援業務,教育研修業務,人材派遣業務)
事業概要 採用アウトソーシングとして新卒を中心に企業の採用に関わる業務を支援、セミナー、受付段階から内定者のフォロー、教育研修までをサポート。それに関わるシステム開発なども手掛ける。
社長の年齢 30歳代
創業時の属性
(職業)
会社勤務(中途退社)


会社経営の失敗の詳細


 結論

取引先が特定の企業に偏重するなかで起こった阪神大震災による受注環境の悪化と、新規事業をスタートしたもののスムーズに進まず撤退を余儀なくされるなど、売上の悪化による業績低迷で、設立から今日までに二度のカベを経験した。

 設立から成功までの経緯

設立した当時は、代理店業務が中心で求人広告の営業などを行っていたが、徐々に採用に関する出版物への企画ページの掲載、アンケートはがきの企画、教育研修なども手掛けるようになった。また、人材派遣・業務請負を兼営すると共に、平成12年頃から営業アウトソーシングを行うようになり、新規開拓の業務を代行するようになって拡大した。ただ、平成15年頃から採用アウトソーシングが伸びを見せて、営業アウトソーシングは徐々に後退。近時、新卒採用業務を主体としており、学生の売り手市場を背景に順調に拡大し、平成19年には年商10億円を達成している。

 トラブル・失敗・課題に至る経緯

平成7年1月に阪神大震災が発生し、当時の売上の7割を占めていた企業の店舗が多数被災した。同社はその復興に追われて採用業務などは一切ストップ。売上の大半以上を占めていた同社からの受注が無くなった影響は大きく、売上は激減した。さらに、平成12年に営業アウトソーシングをスタートさせたが、当初は順調に伸びを見せたが、基本的には新規開拓営業の業務で、委託を受けた相手先企業の方針転換や商品に左右される部分が大きく、多くの問題が発生した。

 対処と結果

全員が危機意識を共有、新規の顧客開拓を全員が一致して行い、売上の減少を補うこととした。全員の頑張りで、数ヶ月でほぼ元の水準に売上規模は回復。結果的に、販売先を多数に分散させることが出来た。
新規事業の営業アウトソーシングは、営業要員の派遣形態に転換し、相手先企業の指示を受けて業務を行うこととした。しかし、派遣者は意欲低下となり、派遣から更に人材紹介(紹介予定派遣を含む)へと対応を変えて意欲を引き出そうとした。しかし、逆に相手企業からの人材への要求が厳しくなった。その要求レベルの人員を確保することが難しく、他方で採用アウトソーシングが伸びを見せたため、営業アウトソーシング事業は縮小化する方向となった。

 原因

(1) 特性

顧客先が1社に偏重していた
1社のみに受注が傾注した形であったが、拡大方向にあったため、特に対策などは行わない状況であり、その事がリスク要因であることもほどんど認識していなかった。

(2) 要因

阪神大震災の発生、新規事業モデルに多くの問題
阪神大震災が発生し、主力得意先が被災したことにより、発注が一切来なくなってしまった。新事業については、ニーズはあったが、新規顧客獲得という不確実な要素を多分に含む業務であり、相手企業の満足のいく結果を残せないケースが多く、業務の専門としてアウトソーシングを受け、必ず結果を出すというアウトソーシングビジネスに多くの問題が発生した。

 経営判断の問題点

売上が伸びていたことから特定の企業に依存した事業運営をそのままにし、新規開拓の努力や、リスク分散への取り組みなどが遅れた。また、営業アウトソーシングから人材派遣、人材紹介などへと変更したが、結局は優秀な人員が確保できなかった部分が大きい。ベンチャー企業ゆえの知名度の低さもあり、そうした高いレベルの人材を確保することが出来なかった。

 背景

新規事業の取り組みを開始した平成12年頃は、人材派遣、アウトソーシング業界が発展期にあり、さらにIT企業が隆盛していたITバブルもあって、開始当初の受注は好調となり業容も拡大した。しかし、ITバブルの崩壊やその後の景気低迷などから顧客を満足させるだけの結果が出せないケースも増えたと見られる。

 得られた教訓

阪神大震災の発生が最大の要因ではあるが、販売シェアを分散させていれば、大きな影響までは受けなかった可能性がある。販売シェアが偏りすぎると、一企業の状況によって大きな影響を受け、場合によっては危機的な状況にも陥ることを痛感した。
新規事業については、営業アウトソーシングを受けるに当たって得意分野に絞りこみ、高い確率で成果を出せる形にすれば、現在でも続けている可能性はある。営業アウトソーシングが好調時に採用支援の事業を初めており、事業転換がスムーズに出来ている状況から、社会情勢の変化と商品サービスのサイクルなどの影響を回避して事業拡大を進めていくためには、新サービスや、新企画、商品開発などを続けて行くことが重要であると考えている。

 後日談 

ここ数年は、新卒者の減少する背景と、景気の回復、定年退職者の増加などで企業の採用が回復、新卒者は完全な売り手市場で、企業も採用活動に力を入れている。その背景もあって採用支援サービス事業は好調で、営業アウトソーシングや人材派遣などは撤退したが、業績は好調に推移している。他社参入なども多くなっているが、採用支援サービスでも様々な新企画などを提供したり、新サービスを開発するなど、常に進化を続けている。

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