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口約束で合意が履行されなかった経営失敗の実例です。経営不振に悩む経営者の方は、会社の倒産、破産に強い弁護士にご相談下さい。

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41 製造業の経営の失敗(41):口約束での失敗

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、口約束で合意が履行されなかった経営失敗の実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 契約書はなく口約束で、合意が履行されなかった失敗

取引先の依頼により新しい商品を開発したが、依頼元の会社都合により約束が履行されず、販売の目処が立たない事態が起きた。口約束のみで、正式な契約書を交わずに開発を進めていたため、損害賠償を請求することもできず、開発費用の損失は自社補填せざる得なかった。取引先との口約束を全面的に信用してしまったことが招いたつまづきであった。

 企業プロフィール

所在地 北海道
業種 製造業
従業員数 4名
設立・創業 設立:平成14年5月/創業:平成14年5月
事業分野 バイオ(化粧水、香水、消臭剤、ハーブティー開発・販売)
事業概要 大学発のベンチャー企業で、ハマナス・キッソウ・ハッカといった北海道産の原料を利用した商品開発を行っている。開発商品としては、化粧水、ハーブティー、健康食品(ハマナス花弁)、消臭剤などがある。
社長の年齢 50歳代
創業時の属性
(職業)
その他(会社経営)


会社経営の失敗の詳細


 結論

販売先の依頼により北海道の花であるハマナスを原料とした健康食品(ハマナス花弁)を開発した。しかし、この開発については口約束のみで、正式な契約書を交わしていなかったことから、開発後に販売先の事情により約束は履行されず、販売の目処が立たなくなった。

 設立から成功までの経緯

医薬品卸業者で長年勤めた代表者が、これまでの経験を生かして調剤薬局の運営を開始。その後、徐々に事業を拡大していく中で、大学教授と知り合ったことにより、北海道産の原料を利用した商品開発を目的に当社を立ち上げた。
設立から約1年間は開発期間であったこともあり売上はなかったが、平成15年に化粧水が完成。平成16年頃には、健康食品(ハマナス花弁)を開発し、17年期には約800万円の売上を計上。同年ハーブティー(ミントティー、ハナマス花ティー)、その後、消臭剤(犬用、猫用)を開発し、18年期は1,100万円、19年期は1,500万円の売上を計上し、徐々に販売量を伸ばしていった。

 トラブル・失敗・課題に至る経緯

起業から約2年が経過した2003年に自社開発の化粧水を開発したが、その後の2004年頃に販売先から北海道の花であるハマナスを原料とした健康食品(ハマナス花弁)の開発を依頼された。商品開発の依頼に応じ、口約束のみの状態のうちに開発に取り掛かったが、商品開発後に依頼先の会社都合により開発商品を扱うことができないことになった。正式な契約書を取り交わしていなかったため、開発後に依頼先との取引は履行されない状況に陥り、販売の目処が立たなくなった。

 対処と結果

商品開発の依頼先を通じたルートでの販売ができなくなったことから、独自での販売ルートによる営業に転換することで、売り先の確保に努めた。また、開発費の負担もあったため、代表者が経営する薬局からの資金援助により損失補填を行った。
結局、販売については、高額商品のため消費者には受け入れられず、軌道に乗らなかったが、薬局からの資金支援により事業運営に深刻な障害は起きていない。

 原因

(1) 特性

契約に対して慎重さが不足していた
法人設立からの期間があまり経過していなかったこともあり、契約を軽く捉えていた点がトラブルの主因としてあげられる。契約に関する知識を持っていなかったが、それに対する助言や進言を第三者や取引先に求めず、契約に関する重要性を認識していなかった。

(2) 要因

依頼先を信じ、契約書を交わさず商品開発を行った
ハマナスを利用した健康食品のアイデアと商品開発の依頼を取引先から請け負った際、正式な契約書を交わさないまま、商品開発を進めてしまった。取引先との口約束を全面的に信用し、詳細な契約条件の話し合いを持たなかった。

 経営判断の問題点

平成14年に設立してから約1年間は研究開発のみで、売上の計上はなかったが、翌年には化粧水の開発に成功。その勢いにのって、売上を拡大するべく商品化を探っていたところへ、取引先からの商品開発の依頼があった。その話に慎重な姿勢をとることができなかったことに経営判断の問題点があった。

 背景

バブル経済崩壊以降、地元経済は低迷から脱しきれていない状態にあった。その中で個人を対象とするには、比較的高額商品であった同商品は受け入れられなかった。高額所得者の多い首都圏に対しては販売ルートがなく、当社エリア内を中心とした販売であったことが販売不振の要因にあった。

 得られた教訓

商品開発の途中では何が起こるかわからないため、正式な契約を交わした上で取引を開始することが必要であったと考える。口約束のみでの取引では、急な条件変更や何らかの事情による取引停止があってもどうすることもできない。結果的には、代表者が経営する調剤薬局からの資金支援が得られたため最悪の状態にはならなかったものの、当社単独のみでの回避は難しかったと思われる。
経営陣としては取引について、第三者や弁護士などに助言を求めるべきであった。また、独自の販売ルートに乏しく、営業努力によって損失をカバーすることができなかったことも課題としてあげられる。今後は販売ルートの確立と慎重な意思決定が必要であるといえる。

 後日談

S工業大学発のベンチャーとして同大学の教授を中心として発足し、数々の健康食品を開発したが、設立以来、単年度黒字を計上したことがなく事業としての採算はとれていない状態にある。今後は商品のアピールも重要であると考えているが、ある程度の広告宣伝費を要することから、資金と相談しながらの展開が必要であるとみている。しかし、雑誌「DIME」で紹介されたこともあり、徐々に問い合わせが増えてきていると聞かれる。

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