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健康食品ブームも手伝い飛躍的に業績を拡大させていたが、外国産アガリクス商品の飲用者が死亡する事件が起き、健康食品メーカーの同商品の発癌促進物質が疑われるなど、アガリクス食品の信頼性が悪化。さらに薬事法違反で摘発された会社社長との関係を疑われ家宅捜索を受けるなど、相次ぐ風評被害を受け、一商品に依存した売上構造であったことから、急激に業績が悪化した。
所在地 | 山梨県 |
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業種 | 製造業 |
従業員数 | 13名 |
設立・創業 | 設立:平成2年5月/創業:昭和50年12月 |
事業分野 | 健康食品、環境エンジニアリング、農業資材 |
事業概要 | アガリクス、メシマコブなどの各種キノコ類やゴマ、大豆を用いた健康食品の製造ほか、土壌活性剤等の農業資材製造、環境浄化システムの開発など3つの事業を手掛け、大手化粧品・生活用品メーカーや通販会社らを販路とする。 |
社長の年齢 | 40歳代 |
創業時の属性 (職業) |
その他(前身となる企業の経営) |
外国産及び大手健康食品販売メーカーのアガリクス商品による健康被害や発癌プロモートの懸念など、一部の業者による不祥事の発生で、アガリクス自体の信頼性が大きく低下。さらに某企業によるアガリクス等の健康食品に関する薬事法違反の摘発に絡み、当社も家宅捜索を受け、事件と無関係でありながら企業イメージが大幅に低下した。度重なる風評被害が当社の経営に大きく打撃を与え、アガリクス偏重の売上構造のために危機から脱却出来なかった。
昭和50年に設立した企業を前身に、平成2年当社を設立。当時は松枯れ防止剤、土壌活性剤などの農業資材を主に製造し、年商1億円内外に留まっていた。その後、もともと当社が持っていたバイオテクノロジー技術を用いて、平成5年には健康食品として注目されていたアガリクス茸の大量生産技術を開発し健康食品事業に参入。さらに平成8年アガリクス茸の菌糸体部分の製品化に成功した事で、健康食品ブームも手伝い飛躍的に業績を向上させ、平成15年期には年間売上高は約24億3,000万円、経常利益5億円弱を計上。優良ベンチャー企業として注目されるまでに至った。
平成15年期決算は過去最高の売上高をあげたが、その後平成15年の健康増進法の改正により、健康食品の表示、販売方法に関する規制強化が行われたほか、平成16年外国産のアガリクス商品の飲用者が劇症肝炎で死亡する記事が週刊誌に報じられ、一般消費者の間にアガリクス食品そのものが危険であるかの誤った風評が広がった。さらに平成17年アガリクスを使った健康食品を「ガンに効く」として紹介した東京都内の出版社社長らが、薬事法違反で警察に摘発される事件がおき、当社も家宅捜索を受けた。事件への関与は全くないにもかかわらず、企業イメージは大きくダウン。平成18年初頭には大手健康食品販売メーカーのアガリクス健康食品から発癌促進物質が疑われた事が、アガリクス食品の信頼性悪化に追い討ちをかけた。この間業績も下降し、平成18年期年間売上は4億5,000万円と、僅か3年で売上が1/5に落ち込むなど業績は急激に悪化。いわれのない風評被害から脱却出来なかったうえ、健康食品、とりわけアガリクスに大きく依存していた当社の売上構造も経営維持への障害となった。
大手健康食品の発癌プロモート問題のマスコミ報道において、厚生労働省の成分検査で当社アガリスク製品に問題はないと判定され、取引先にダイレクトメールで商品の検査内容の開示など安全性をアピールした。しかし、マスコミは事件発生時には大きく報道したが、厚生労働省による検査結果を取り上げる報道はほとんど無く、また東京の出版社摘発の時も同様で、その後の事実無根も一切報じず、風評被害を払拭するまでには至らなかった。当社のアピールだけでは取引先、金融機関等の信頼回復は得られなかった。平成18年の月間売上は1,800万円弱に留まるなど事業継続が困難になり、同年民事再生開始申立てに踏み切った。
一商品に依存した売上構造
当社の急成長の要因となった健康食品事業に突出した依存体制であり、他の農業資材事業、環境事業も中長期的な事業項目としていたため、まだ育ってはいなかった。当社の急成長を支えてきたアガリクス菌糸体食品に大きく依存していた売上構造のため、リスクを分散できる体制ではなかった。
アガリスクを巡る問題の発生
健康食品自体が食品と医薬品との間の曖昧な位置(グレーゾーン)にあり、効能などを宣伝しながら販売する方法に対しトラブルが度々発生した。販売における業界体質・土壌に問題がある中、今般のアガリクスを巡る問題発生の中で、この影響をもろに受けることとなった。
アガリクス菌糸体の製品化成功による健康食品事業の拡大が当社の急成長を支えたが、その後のプロポリス、大豆ドリンク、コエンザイムなど新たな健康食品を開発したが思うように伸びなかった事から、当社最大の売れ筋商品であったアガリクスに依存する体制からなかなか脱却出来なかった。農薬、土壌活性剤等の製造(農業資材事業)やリサイクルシステム開発(環境エンジニアリング事業)など、他の有望事業についても、急拡大した健康食品事業に注力したため育てることができなかった。健康食品の信頼性や販売方法など、業界自体が不安定な土壌にあった中、健康食品に大きく頼った経営はリスクが高かった。こうした状況下、アガリクス一商品に特化した売上構造にあった事から、リスク分散への取り組みが不足していた可能性がある。
健康食品は食品と医薬品(薬事法)の間の商品として、法律的な定義に欠け、曖昧性が常について回る。特定保健用食品なども存在するが、費用負担が大きいうえ、評価方法が医薬品と同じであるため、食品の機能性評価にもともと向いていない等の問題が指摘される。また行政主導で法律が次々と変わってしまい、企業が長年積み上げてきたものが突然ふいになるなど、企業、業界を見ながらの段階的な判断・配慮も求められる。
健康食品自体・業界自体が、法整備が不十分なグレー的な存在であるため、消費者ニーズやブームの変化、健康被害報道などの風評等で浮き沈みが大きい。急激な業容拡大の一方で、状況変化の予測も行ない、早めの対策を取るべきであった。アガリクス市場は今般の風評発生以前の400億円規模から現在は100億円規模まで縮小しており、こうしたリスクの高い分野への、とりわけ一商品に突出した売上依存に対し、リスク分散・回避への意識を強く持ち、新たな売上の柱となる商品の開発や、健康食品以外の事業の育成が必要だった。
今後は法律をよく研究し、法律に則っとり営業・経営を進めて行く。一方で企業の積み上げてきたものを無駄にしないためにも、健康食品の明確な提示や認可など法律面の整備が必要で、行政は企業が安心して事業に取り組める環境を作るべきである。今回の様な落雷的被害に遭わないために、情報の収集と、学求型から営利型への移行もある程度必要と思われ、マスコミによる暴力ともいうべき問題は今後の対策の大きな課題である。
平成18年の民事再生申請後、翌19年に再生計画の認可が決定し、10ヵ年計画に基づき自力での再建を図っている。100億円規模の市場があるアガリクス製品はそのまま継続し、リスク分散の観点からプロポリス、黒ゴマ発酵エキス、乳酸菌製剤(ギャバ)といった取扱商品の多角化も行い、売上も徐々にではあるが向上がみられるようになった。本社ほか、試験研究センター、生産技術センターなどの不動産は今後の事業活動に必要な設備として保有していく方針であるが、最盛時には130名を超えていた従業員は現在13名とし、人員規模のスリム化を図った。10年間の再生計画はスタートしたばかりだが、将来的に有望な事業を多く抱えており、今後の成長が期待される。