電話での相談のご予約・お問い合わせはTEL.03-5925-8437
平日:9時30分〜17時30分
急激な受注増に対して、生産体制の整備や人材育成が追いつかず作業効率が低下。また、外注依存度が高まる中、最大外注先A社が経営難に直面。融資等の支援をするも、同社は倒産。同社に対する不良債権発生とともに、最大外注先を失ったことで生産量が低下。当社自体の資金調達が困難となり民事再生手続開始申立に至った。現在は外注生産に依存しない、かつ効率的な生産体制にシフトし、事業再建中。
業種 | 製造業 |
---|---|
設立・創業 | 創業:平成5年 |
事業分野 | その他(金属加工業) |
事業概要 | 一般産業機械部品の切削、溶接、その他の加工及び組立。および、特殊機械部品の設計、製造及び販売。 |
社長の年齢 | 30歳代 |
創業時の属性 (職業) |
会社勤務(中途退社) |
急激な受注増に対して人員増強や新工場建設などを進めるも、生産体制の整備や人材育成が追いつかず作業効率が低下。固定費や設備投資などの負担増加に採算性の伸びが比例していなかった。また、外注依存度が高まる中、最大の外注先A社が資金繰りに窮する。A社に融資等の支援をするも、同社は倒産。同社に対する不良債権発生とともに、最大外注先を失ったことで生産量が低下。当社自体の与信に影響し、手形決済の資金調達が困難となり民事再生手続開始申立に至った。現在は外注生産に依存しない、かつ効率的な生産体制にシフトし、事業再建中。
平成5年創業。当初は孫請け、曾孫請けによる不定期の受注をこなしていたが、平成9年大手企業からの受注(孫請け)を一手に請け負うこととなった。後に親請け企業の撤退を受け、大手企業より当社が一次外注として引き継いだ。受注量が大幅に増加したほか、新規受注先の開拓により、年々売上高は拡大傾向が続いた。それに伴い本社工場を新設し、億単位の設備投資を行った。
当初は早期の売上拡大を重視していたため、代表自身が営業等により会社を空けることが多くなった。そのため、内部体制の整備が後手に回り、生産能力を超える受注となり、生産ロスが発生するという悪循環に陥る。また、急速な伸びにより外注依存度が高まり、特に最大の外注先A社は外注全体の過半数以上を占めるまでになったが、同社は設備投資過多により経営悪化が深刻化。当社は貸付金等の資金融通を行うようになったが、A社は倒産。A社に対する貸付金が不良債権化し、資金繰りが逼迫した。また、A社という最大外注先を失ったことにより生産量が低下し、当社自体の信用不安が広がった。その中で代表者が交通事故の被害に遭い、営業活動に支障をきたし、更に資金繰りが悪化。結果、民事再生手続開始申立に至った。
特に工場移転以降は内部体制の不備による効率悪化を意識するようになり、売上高を抑えてでも採算性を重視するべく徐々に方針転換を図った。また、A社に対しては投資過多、拡大重視等の経営体質に共通する問題を有していたため、資金融通を行うと同時に体質改善に着手するよう事ある毎に進言した。しかし、同社の投資過多の経営姿勢が是正されることはなかった。
売上規模に応じた生産体制全体の見直しに遅れ
営業活動に注力したことにより売上は急速拡大したが、反面生産効率や採算性に対する対応が遅れ、結果的に製作工程や人材育成等、自社工場の体制整備が後手に回った。また、売上拡大により外注依存度が高まっていたが、リスク管理の点からは一社集中型の外注形態を見直すことも考慮すべきであった
最大外注先の倒産による信用不安
生産力および受注維持のために、経営悪化が進んでいた最大外注先A社に対して資金融通を行ったが、結果的に同社の倒産を防ぐことはできなかった。それに伴い信用不安が発生し、仕入決済のサイトの短縮要請や金融機関からの資金調達が困難となったことから、資金繰りの悪化が加速した。また、最大外注先を失ったことで、生産面でもダメージを受けた。
内部体制が未整備のまま売上拡大し、結果的に外注への依存度が高い経営状態に陥った。また、当時は特に拡大路線にあり金融機関が積極的な融資姿勢を示していたことから、資金調達に対する危機意識が薄かった。取引先への資金支援に関しては、A社の当時の代表者からは従来より技術指導を始めとした強い結び付きが背景にあった。A社の無理な拡大志向を修正し、支援を続けながら徐々に経営再建を図るつもりだった。しかし、自社工場への設備投資と時期が重なり、更なる資金支援は自身の首を絞める結果となった。倒産以後は外注生産に依存しない生産体制を整えつつあるだけに、倒産以前に打つ手はあっただろうとの思いもある。
創業当初は出口の見えない不況の真っ只中にあったが、特に当社は後発企業であり、代表者自身が県外出身であったこと、受注不振に喘ぐ同業各社があるなかで急速に受注を伸ばしていたことなど様々な要因が絡んで、県内の外注先開拓が困難を極めたというのが実情であり、結果的にそれが大きなハンディとなったと言える。
まず、急激な受注増といった状況変化に内部が対応するためには、人材育成の大切さを痛感している。経営面においては、もっと早い段階から社内の隅々にまで目が行き届いていれば、採算性を改善することができたであろう。また、自社内部で代替生産が可能な範囲に受注量を調節など、特定の外注依存度が極端に高い状態を回避することが必要だったと考えられ、現に倒産後はそのような経営姿勢に転換している。
また、創業当初より不定期の受注生産を採っていたために、常に納期が迫るなかで生産ロスが発生するなど、結果的に非効率な生産体制に陥っていたが、現在は数ヶ月単位で受注することにより1〜2ヶ月後に出荷する製品を計画的に生産する体制への転換を図った。更に、当初は与えられた図面の通りにそのまま製作することが大半だったが、倒産後は特に限られた経営資源のなかでやりくりしているため、より自社の生産体制に合った、より効率的な形への設計変更を依頼することが増え、最近では受注先の担当者から代表者に、ほぼ必ずと言っていいほど相談を持ちかけられるようになっている。
民事再生から3年を経過し、効率化が進んで生産体制が整備されてきたことから、徐々にではあるが受注量を増やしていくつもりである。
話は変わるが、倒産によって特に中小企業の一般債権者は担保や保証人といった保全手段が採りにくいのが実情であり、経営体力のある金融機関などと比較して不公平感が強いと考えるようになった。これは自身が一般債権者に迷惑をかけてしまったことにより芽生えた思いであるが、そういった企業を公平に救済するために、全企業が掛け金さえ支払えば加入できて、取引先の倒産により焦付債権が発生した際には、その債権の何割かを保険金として受け取れるといった保険制度を構築することなどを提言したい。