M&A・事業承継に強い、弁護士の鈴木陽介です。
会社の引継ぎにお悩みの経営者の方は、サンベル法律事務所にご相談下さい。会社の引継ぎ、承継には、M&A、事業承継に強い弁護士を関与させるべきです。
弁護士鈴木が力を入れているM&A・事業承継のコラムです。
収益方式(収益還元方式、DCF方式、配当還元方式)による株式評価の留意事項をご説明します。内容は、中小企業庁の公表資料「
経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン(平成21年2月,中小企業庁)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜編集等しています。
非上場株式の株価評価のコラム
株価評価の判例紹介のコラム
収益方式の選択の留意事項
収益還元方式、DCF方式選択の留意事項
1 利益又はFCFの算定
収益方式のうち、収益還元方式及びDCF方式は、評価対象会社が将来獲得することが期待される利益又はFCFを基に株式評価を行う方式です。この点、
評価の基礎となる利益又はFCFの算定に当たっては、過去数事業年度の利益又はFCFの平均値をベースとすることが想定されます。
ただし、先代経営者の貢献により、評価時点において、客観的事情によって評価対象会社の成長(当該会社の価値の上昇)が確実視される場合などにおいては、将来の事業計画に基づき、評価対象会社が将来獲得することが期待される利益又はFCFを基礎とすることも考えられます。また、逆に、客観的事情によって経営が悪化することが見込まれる場合にも同様です。
将来の事業計画を用いる場合においても、事業計画によって評価結果は大きく異なることに留意し、事業計画については慎重に採用すべきです。
採用する利益については、特殊要因により一時的に過大・過小となっている場合、当該要因を調整した正常収益力を反映したものとする必要があります。具体的には、収益還元方式における利益については、税引後営業利益を用いるのが一般的であるとされますが、これは、支払利息を除く重要な営業外損益がないことを前提にしています。したがって、評価対象会社が毎期多額の営業外収益を計上している場合などにおいては、当該会社の実態を踏まえ、経常利益をベースにして税引後利払前経常利益(経常利益+支払利息―税金)を用いることが適当です。
2 割引率の算定
1 WACC以外の方法
収益還元方式又はDCF方式における割引率は、WACCにより算定するのが一般的ですが、非上場中小企業の株式が評価対象であることを勘案し、専門家の判断により、過去数年間における長期プライムレートの平均値をベースに、各種のリスク率(小規模リスクプレミアム等)を加味して算定することも考えられます(大阪地裁平成15年3月5日判決では、過去数年間における長期プライムレートの平均値2.63%に、各種のリスク率4.21%(将来利益の不確実性によるリスク2.63%と市場性を欠くことによるリスク1.58%の合計)を加算し、割引率を6.84%としています。)。
2 WACC により算定する場合
実効税率の算定に関しては、一般的な値を採用することが多いところですが、価額の相当性を証明する専門家の判断により、これと異なる税率を適用することも考えられます。
リスク感応度(β値)については、厳密には、類似会社や類似業種のβ値(レバードβ)を、評価対象会社の資本構成に応じたβ値(リレバードβ)に変換して使用する必要がありますが、専門家が、価額の相当性に大きな影響はないと判断する場合には、レバードβを使用することも考えられます。
リスク感応度(β値)や小規模リスクプレミアム等は、上場会社から算出されたものであるため、これらの数値を利用して算出される割引率は、本来あるべき非上場中小企業に係る割引率と比較すると、相対的に低い水準となる可能性が高い点に留意が必要です。
その他のリスクプレミアムについても、評価対象会社の実態を踏まえ、専門家が判断する必要があります。
配当還元方式選択の留意事項
収益方式のうち、配当還元方式は、少数株主のように主に配当目的で株式を所有する場合の評価に用いられています。この点、中小企業のM&A、事業承継では、後継者が発行済議決権株式総数の過半数を所有することが前提であり、評価対象となる株式は支配株式であることが想定されるため、配当還元方式の適用が妥当とされる事例は少ないものと考えられます。もっとも、還元率を適正にすることで、妥当な価額を得ることも可能であり、かつ、親族等の関係者にとっては、場合により現実の配当による評価の必要性もあるので、他の方式との併用として採用することは想定されます。
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