M&A・事業承継に強い、弁護士の鈴木陽介です。
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弁護士鈴木が力を入れているM&A・事業承継のコラムです。
株式評価について、併用方式を採用した判例、純資産方式を採用した判例をご紹介します。内容は、中小企業庁の公表資料「
経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン(平成21年2月,中小企業庁)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜編集等しています。
非上場株式の株価評価のコラム
株価評価の判例紹介のコラム
併用方式を採用した裁判例
京都地裁昭和62年5月18日決定:事案の概要
本件会社は、昭和51年1月に設立された各種織物製造販売を業とする株式会社であり、発行済株式総数は1000株で、○○一族が全株式を所有する同族会社である。
本件会社の最終貸借対照表上の純資産額は5億0245万8940円であり、業績が悪化しているものの、立直りが困難と断ずるほど深刻ではない。
本件会社の株主Aは、その所有する本件会社の株式110株(11%)を譲渡するに際し、昭和60年9月20日付け書面をもって同会社に承認を求めたが、同会社はこれを承認せず、B社を買取人と指定した。
なお、B社は、○○一族が経営する会社であり、本件会社の株式115株を所有する株主であるが、当該株式は、昭和60年5月24日に、Aから1株当たり43万5225円で買い取ったものである。
裁判所の判断
鑑定人○○○○は株式評価鑑定書において、本件の場合株式の価格は営業の一部の譲渡であると考えるのが適当であるから帳簿価格による純資産価額方式以外の方式を採用するのは適切でないとし、又市場性がないことによる減価率20%を減ずべきである、として株式価格を算定している。
しかしながら、継続中の企業の資産の価額は必ずしも企業価値を表示するものではなく、したがって株式の価値を直接明らかにするものではないのであって、純資産価額方式も理論上の一方式とはいえるけれどもその一つにすぎないから、これのみを採用して他の方式を排斥するのは本件の場合適切でなく、又市場性がないとして算定した価額から更に減価するのは、もともと市場価格のない株式の評価をするに当たっては理由のないことといわねばならないし、減価率の数値の根拠も不明というほかない。
本件においては、前記諸般の事情を斟酌すれば右各方式を併用するのが妥当というべきであって、本件会社が同族閉鎖会社であり、当事者双方が経営支配株主といえること、昭和60年5月24日には同会社の株式につき当事者間において1株43万5225円とする売買が成立したことがあることを考慮し、純資産価額、類似業種比準価額、収益還元価額、配当還元価額の割合を2・1・1・1とした加重平均値を基準値とするのが相当である。
純資産方式を採用した裁判例
青森地裁昭和62年6月3日決定:事案の概要
本件会社は、発行済株式総数18万株の株式会社であり、昭和59年6月30日現在の純資産額は8970万6248円である。
Aは、その所有する本件会社の株式約3万株(16%)を譲渡するに際し、昭和59年10月2日及び29日付け書面をもって同会社に承認を求めたが、同会社はこれを承認せず、Bを買取人と指定した。
裁判所の判断
本件株式の売買価格につき検討するに、鑑定人○○○○の鑑定結果によれば、右価格は1株につき金1095円と認めるのが相当である。右鑑定結果によると、株式の評価方法については、@純資産価額方式、A配当還元方式、B類似会社業種比準価額方式の各方式が考えられるが、本件株式の価格を算定するについては純資産価額方式すなわち一定時点において会社に帰属する一切の財産を時価により評価し、積極財産から消極財産を控除した残額(正味財産)を発行済み株式総数で除した金額をもって評価額とする方法によって評価するのが最良であるとし、その理由とするところは、株式の評価をする場合、株式に包含される権利として利益配当請求権、残余財産分配請求権、議決権などがあるが利益配当請求権は将来の営業利益に左右され、これは又、市況、経営者及び労働者の能力等にかかわるものであって不確定な要素が多く、これをもって株式の評価額を決定することは困難かつ確実性に欠けること、議決権は共益権であり財産的評価に馴染まないことから右権利をもって評価の対象とすることは相当でないこと、残余財産分配請求権については一定時点において会社に帰属する財産(正味財産)の評価であるからその範囲が明確である以上は評価可能であり、その評価は純資産価額方式によって評価するのが最良であるというのであって、右鑑定結果が理由とするところは至当というべきである。加えて、本件記録によれば、本件会社は昭和53年以降株主に配当をしていない無配会社であることが認められ、無配会社については前記配当還元方式による株式の評価は適切でないこと、また、本件会社の特殊性から同種会社を抽出することが容易でなく、前記類似会社業種比準価額方式によることも困難であると思料され、これらの点からも鑑定結果が純資産価額方式を採用したことは相当であると解される。そして、本件記録に現れた資料を総合すると、右鑑定結果において採られた資産評価の方法、演算はいずれも相当であり、その評価額は適正なものと認められる。
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