M&A・事業承継に強い、弁護士の鈴木陽介です。
会社の引継ぎにお悩みの経営者の方は、サンベル法律事務所にご相談下さい。会社の引継ぎ、承継には、M&A、事業承継に強い弁護士を関与させるべきです。
弁護士鈴木が力を入れているM&A・事業承継のコラムです。
従業員承継での人(経営)の承継、資金調達(MBO・EBO)、株式の分散の防止、債務・保証・担保の承継をご説明します。内容は、中小企業庁の公表資料「
事業承継ガイドライン(平成28年12月,中小企業庁)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜編集等しています。
M&A・事業承継のコラム
従業員承継における課題と対応策
従業員承継における課題
「従業員承継」を行う際には、現経営者の親族や、後継者である従業員の配偶者といった関係者の理解等を得るのに時間がかかる場合もあるため、後継者の経営環境の整備により一層留意する必要があります。また、株式・事業用資産を相続等によって取得する親族内承継と比較して、所有と経営の分離が生じやすいと言えます。株式・事業用資産の承継は、有償譲渡によることが多く、その場合、相続税対策は不要となるものの、買取資金の調達や現経営者及び親族との合意形成が極めて重要となります。
なお、遺贈や贈与によって株式・事業用資産を承継する場合は相続税・贈与税の課税を受けることがあるため、留意が必要です。
人(経営)の承継
従業員が後継者となる場合、社内で一定の経験を積み、経営に近い役割を担ってきた従業員、いわゆる「番頭さん」が後継者となる例が多いといえます。「番頭さん」は他の従業員との信頼関係を構築できているため、会社の一体感などを事業承継後も維持しやすいといったメリットがあります。
一方、従業員と経営者で大きく異なるのが、会社を経営することに対する覚悟や責任感であると言われています。そのため、従業員に承継を行おうとする場合、まずは当該従業員との対話を重ね、また責任のある役職に置くなどして、自身の責任で会社を経営するのだ、という覚悟を持ってもらうことがまず重要です。
また、現経営者の親族等が事業承継後の従業員後継者による会社経営に協力していけるよう、現経営者による親族等の関係者との対話も重要です。ここでいう関係者には、会社経営という大きな責任を引き受ける従業員後継者の配偶者等も含まれるものと考えられます。
近年は、従業員後継者と現経営者の親族との関係を調整するために無議決権株式や優先株式等を活用するケースも見られ、専門家への相談を行うことも有用です。
資金調達(MBO・EBO)
後継者の経営を安定させるためには一定数の株式や事業用資産の取得が必要ですが、いわゆるMBO(役員による株式取得:Management Buy-Out)やEBO(従業員による株式取得:Employee
Buy-Out)に代表されるように、有償の譲渡により株式・事業用資産の承継が行われることが多いといえます。
しかしながら、現経営者の親族外の役員や従業員は、現経営者から株式・事業用資産以外の資産の取得が期待できないことなどから、買取資金を調達できないことが多く、そのため、円滑な従業員承継を実現するためには、資金調達の成否が非常に重要であると同時に、従業員承継の実現を阻む高いハードルとなっています。
資金調達の手法としては、@金融機関からの借り入れ、A後継者候補の役員報酬の引き上げなどが一般的です。その際、経営承継円滑化法に基づく金融支援は親族外の後継者にも利用が可能であるため、積極的な活用が期待されます。
従来は、上記のとおり金融機関からの融資によって株式・事業用資産の取得資金を調達することが多かったのですが、近年は、一定の規模を有する中小企業の事業承継において、後継者の能力や事業の将来性を見込んで、ファンドやベンチャーキャピタル(VC)等からの投資によってMBO・EBOを実行する事例が増えてきています。そのスキームの流れは概ね以下のとおりであり、円滑な従業員承継を実現する環境が整ってきているといえます。
@後継者(役員・従業員)が、自己資金や金融機関からの借入れにより対象会社の株式を取得する特定目的会社(SPC)を設立し、ファンドやVCがSPCに出資。
ASPCが、自己資金の不足分を金融機関から借入れ。
BSPCが現経営者から対象会社株式を買い取り、対象会社を子会社化。※SPCが対象会社を吸収合併することもある。
C対象会社からSPCへの配当等により、金融機関からの借入れを返済。
株式の分散の防止
経営承継円滑化法の民法特例については、平成28年4月1日から親族外後継者が贈与を受けた株式等についても遺留分減殺請求の対象から除外することが可能となっています。本改正により、資金調達が困難であるなどの事情で従業員後継者に対する株式の贈与を選択した場合であっても、遺留分に関する特例の適用を受けることができるため、後継者が将来にわたり安定的な経営を行うための手法として活用が進むことが期待されます。
債務・保証・担保の承継
従業員に承継を行う場合、現経営者による個人保証の処理方法が問題になることが多いといえます。後継者が十分な資金力を有していれば、個人保証を引き継ぐということも考えられますが、これについて、後継者の家族等が反対したために事業承継自体を断念したケースなども存在します。
専門家の助言等を得ながら、債務整理の実施や、経営者保証ガイドラインの活用等を通じて、現経営者、後継者、その他の関係者が納得できる処理方法を検討することが望まれます。
会社の引継ぎ、M&Aに臨む中小企業の経営者の方は、お電話下さい。今後のとるべき方向性や留意点などを事業承継・M&Aに強い弁護士がアドバイスします。