M&A・事業承継に強い、弁護士の鈴木陽介です。
事業の引継ぎにお悩みの個人事業主の方は、サンベル法律事務所にご相談下さい。事業の引継ぎ、承継には、M&A、事業承継に強い弁護士を関与させるべきです。
弁護士鈴木が力を入れているM&A・事業承継のコラムです。
個人事業主の事業承継の課題と対応(会社形態の承継との違い、人(経営)の承継、資産の承継、知的資産の承継、後継者人材バンク)をご説明します。内容は、中小企業庁の公表資料「
事業承継ガイドライン(平成28年12月,中小企業庁)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜編集等しています。
M&A・事業承継のコラム
個人事業主の事業承継の課題と対応
会社形態の承継との違い
個人事業主であっても、その承継に際しては、会社形態の場合と概ね同様の課題が存在します。
ただし、個人事業主の場合、経営者が「その名」において事業を行い、取引先や顧客との契約関係を持ち、事業用資産を「自ら」所有していることに、「経営権」の本質があると考えられます。従って、真に経営の承継を実行するには、形式的に「開業届」「廃業届」を提出するにとどまらず、それら契約関係・所有関係の承継が不可欠です。この意味で、個人事業主においては「人(経営)の承継」と「資産の承継」が表裏の関係にあるといえます。
人(経営)の承継
個人事業主と先代経営者の関係について、中小企業庁の実施した調査によれば、先代経営者の子であるとの回答が 81.1%を占めるなど、親族内承継が約9割に達しています。会社形態の中小企業における近時の状況と比較すると、親族内承継の割合の高さが顕著です。
このような実態を踏まえると、個人事業主においては、早期に「親族内」の後継者を確保することが重要であり、後継者候補が「事業を承継したい」と思えるような経営状態を確保することが不可欠であると考えられます。
後継者育成の手法としては、自社内で経験を積む内部昇格のパターンが64%と多く、他社経験を経るパターンも54%存在します。業種等の事情に応じて、適切な経験を積ませる必要があるものと考えられます。
以上の他、親族や取引先等の関係者との早期・丁寧な調整や対話が必要不可欠であることは、会社形態の場合と同様です。
資産の承継
1 個人事業主の保有する事業用資産
個人事業主においては、事業用資産は経営者個人の所有に属しており(又は経営者個人が賃借)、事業の継続に必要な資産について、個々に後継者へ承継する必要があります。
個人事業主が保有する事業用資産の構成は、土地・建物の不動産で6割超を占めます。この土地・建物について、例えば店舗兼住宅といった形で経営者個人の用と事業の用という二つの用途に用いられている資産もあるため、事業用資産の承継のみならず、現経営者の個人資産の承継についても同時に準備しなければならないことが多いといえます。
2 税負担への対応・分散の防止
事業用資産の承継にあたっては、上記のとおり親族内承継が大半を占めていることから、相続・贈与による場合が多いものと考えられます。従って、相続税・贈与税の負担への配慮が重要であり、対応策としては会社形態の場合と同様です。
特に、個人事業主の所有する事業用資産のうち土地が大きな比重を占めていることから、小規模宅地特例が多く活用されています。
また、事業用資産が分散してしまった場合の影響は、会社形態の中小企業において株式が分散してしまった場合よりも表面化しやすい特徴があります。例えば、先代経営者の死亡等により事業用資産である土地や建物、器具備品等が相続人間で共有状態に陥ってしまった場合、後継者は当該資産の処分を伴う設備の更新や業態転換等を自由に行うことが困難となります。
このような事態を回避するため、遺留分に配慮した生前贈与による早期の承継や、遺言等の適切な活用を検討すべきです。
なお、近年は個人事業主においても社外の第三者へ事業承継を行うケースが増えてきているとの指摘があります。その際は、事業の全部承継の手法が活用されています。
知的資産の承継
個人事業主においても、事業の強みの源泉である知的資産を承継することは、事業承継の成否を決する極めて重要な取組です。
特筆すべきは、会社形態で株式を承継する場合のように事業承継前後で法人格が維持されるわけではないため、事業遂行に必要な許認可等を後継者が取得し直したり、取引先等との契約関係を引き継いだりする必要がある点です。事業承継の準備段階から、専門家や支援機関の助言を得て、後継者による許認可等の取得に向けた準備を行っておくことが、円滑な事業承継の観点からも有益です。
後継者人材バンク
一部の事業引継支援センターにおいては、後継者不在の個人事業主が営む事業の第三者への承継を支援するため「後継者人材バンク」事業が行われています。これは個人事業主の後継者問題の解決と同時に創業の促進を図るものです。
事業スキームは、後継者不在の小規模事業者(主として個人事業主)と創業を志す個人起業家をマッチングし、店舗や機械装置等を引き継ぐものです。マッチング後の一定期間は起業家と先代経営者が共同経営を行うことによって、経営理念や蓄積されたノウハウ・技術等を引き継ぐとともに、地域の顧客や仕入れ先、取引金融機関等との顔つなぎも併せて行うこととしています。
後継者人材バンクは、有形・無形の経営資源を引き継ぐため、ゼロから起業する場合に比べ、大幅に創業リスクを低減させることができるという特徴を有しています。
後継者人材バンクを取り扱う事業引継ぎ支援センターは順次拡大しています。
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