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事業承継(M&A)での種類株式の活用を説明します。事業承継にお悩みの方は、中小企業のM&A・事業承継に強い弁護士にご相談下さい。

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11 事業承継での種類株式の活用

M&A・事業承継に強い、弁護士の鈴木陽介です。

会社の引継ぎにお悩みの経営者の方は、サンベル法律事務所にご相談下さい。会社の引継ぎ、承継には、M&A、事業承継に強い弁護士を関与させるべきです。


弁護士鈴木が力を入れているM&A・事業承継のコラムです。

種類株式の概要、事業承継での種類株式の活用方法、種類株式の導入手続きをご説明します。内容は、中小企業庁の公表資料「事業承継ガイドライン(平成28年12月,中小企業庁)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜編集等しています。

 M&A・事業承継のコラム

1  事業承継の類型:親族内承継 従業員承継 M&A
2  事業承継の構成要素:人(経営) 資産 知的資産
3  事業承継の進め方(1):ステップ1・2
4  事業承継の進め方(2):ステップ3
5  事業承継の進め方(3):ステップ4・5
6  ポスト事業承継:成長と発展
7  事業承継を断念し廃業する場合
8  親族内承継のポイント
9  従業員承継のポイント
10 M&Aのポイント
11 事業承継での種類株式の活用
12 事業承継での信託の活用
13 事業承継での生命保険、持株会社の活用
14 個人事業主の事業承継


種類株式の概要

 種類株式の類型

 平成18年に施行された現行会社法によって、種類株式活用の可能性が大きく広がりました。会社の個別的なニーズに対応して、様々な活用方法が考えられます。近年、事業承継の円滑化を目的とした種類株式の活用が広がってきており、目 的に即した有効活用が望まれます。

 種類株式とは、定款によってその種類ごとに異なる内容を定めた株式ですが、会社法では、以下の事項について異なる内容を定めることができるとされています(会社法第108条)。

1 剰余⾦の配当

 普通株式よりも優先して⼀定の剰余⾦の配当を受けることができる優先株式、逆に劣後する劣後株式など。

2 残余財産分配

 会社が破産⼜は清算した時の残余財産について、普通株主よりも優先して分配を受けることができる優先株、劣後する劣後株など。

3 議決権を⾏使することができる事項

 議決権を全く持たない無議決権株式や、取締役選任権のみを有する株式など。

4 株式の譲渡

 株式の譲渡について会社の承認を必要とする譲渡制限種類株式。

5 株主から会社への取得請求権

 株主が会社に対し、当該株主の保有する株式の買取を請求することができる取得請求権付種類株式など。

6 会社から株主への取得請求権

 株主の保有する種類株式について、⼀定の事由が⽣じたことを条件として、会社が強制的に当該株式を買い取ることができる取得条項付種類株式など。

7 株主総会特別決議による当該種類の株式全部の強制取得

 株主総会特別決議により、強制的に当該種類の株式全部を会社が取得できる全部取得条項付種類株式など。

8 株主総会決議事項等に関する拒否権

 株主総会・取締役会決議事項について、当該種類の種類株主総会における承認決議を必要とする拒否権付種類株式など。

9 種類株主総会での取締役等の選解任

 種類株主総会において取締役・監査役等を選解任することができる選解任種類株式など

10 株主ごとの異なる取扱い(種類株式ではない)

 ある特定の株主についてのみ、1株1議決権の原則の例外を定めることなど(A株主が所有している株主については1株100議決権とする、など)。

 上記の「株主ごとの異なる取扱い」については、近年、認知症等により現経営者の判断能力が低下した場合への対応策としても注目されています。

 具体的には、例えば株式の大半を後継者に生前贈与し、先代経営者は1株だけ保有している状態において、先代経営者が株主である限りは議決権を100個とする、としておき、さらに「(先代経営者)が医師の診断により認知症と診断された場合においては、議決権は1個となる」旨を定めておけば、会社の意思決定に空白期間が生じることを防止することができます。

 なお、「株主ごとの異なる取扱い」は種類株式と異なって登記されないため、外部からその存在や内容を知られることがないというメリットもあります。

事業承継での種類株式の活用方法

 議決権制限種類株式

 先代経営者の相続財産の大部分を株式が占める場合、後継者に株式を集中させると、他の相続人から遺留分の主張が行われる可能性があります。そのため、後継者には普通株式を相続させ、他の相続人には無議決権株式を相続させることで、遺留分減殺請求による株式(議決権)分散リスクの低減を図ることが考えられます。

 取得条項付種類株式

 一般に、経営者以外の株主が死亡した場合、相続により株式が分散してしまうことがあります。そこで、「株主の死亡」を取得条項における条件としておくことで、株主が死亡した場合には会社がこれを買い取ることとし、株式の散逸を防止することができます。

 ただし、取得対価は分配可能額による財源規制を受けるため、注意が必要です。

 譲渡制限株式

 当該種類の株式の譲渡について会社の承認を必要とする種類の株式であり、現在では多くの中小企業が、すべての株式を譲渡制限株式としています(そのような会社を「株式譲渡制限会社」といいます)。

 これにより、例えば経営者以外の者がその保有する株式を、経営者にとっては望ましくない第三者に売却しようとした場合、会社(株主総会や取締役会)はこれを承認しない判断をすることにより、株式の分散を防止することができます。


種類株式の導入手続き

 種類株式のための定款記載例

 株主総会の特別決議による定款変更が必要です。一例として、譲渡制限株式を発行する場合の定款記載例を紹介します。
(株式の譲渡制限)
第○条 当会社の発行する株式の譲渡による取得については、取締役会の承認を受けなければならない。ただし、当会社の株主に譲渡する場合は、承認をしたものとみなす。


 なお、既発行の普通株式を種類株式に変更することも可能ですが、当該株主の利益を害するおそれがあるため、全株主の同意が必要であるとされています。

 種類株式の活用にあたっては、自社の状況や経営者の希望、株主の利益に配慮した適切な設計と慎重な導入手続きが不可欠です。また、種類株式の承継等に関する税務上の取扱いが明確でない部分も存在するため、早期に弁護士・税理士等の専門家に相談すべきです。


会社の引継ぎ、M&Aに臨む中小企業の経営者の方は、お電話下さい。今後のとるべき方向性や留意点などを事業承継・M&Aに強い弁護士がアドバイスします。



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弁護士鈴木陽介書籍M&A

書籍:歯科医院の事業承継とM&A

学建書院,2016年