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無料インターネットプロバイダーサービスと企業広告を組み合わせた「ハイパーシステム」を発表し、インターネットブームに乗り、一躍時代の寵児と呼ばれるようになった。しかし、当初予想した市場規模ほど需要は大きくなく、外注システムのトラブルなどもあり、広告受注は伸び悩んだ。さらに、事業計画との乖離から証券会社から株式公開の見送りを宣告され、それ契機に金融機関が一斉に貸し剥がしに転じた。資金繰りが悪化し、資金ショートを起こし、自己破産申請に至った。
所在地 | 東京都 |
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業種 | 情報通信業 |
従業員 | 62名 |
設立・創業 | 設立:平成3年6月/創業:平成3年6月 |
事業分野 | 情報通信業 |
事業概要 | インターネット普及前夜にインターネットと広告を結び付けた無料プロバイダーの仕組みを開発した。世界初の画期的なビジネスモデルによって注目を浴びた |
社長の年齢 | 20歳代 |
創業時の属性 (職業) |
その他(会社経営者) |
当初計画していた売上高と実際の業績が大きく乖離。外注したシステムにトラブルが発生したこともあり、広告受注が伸び悩んだ。これを懸念した証券会社が株式公開の延期を申し出たことで、信用不安が拡がり、融資を行っていた銀行が次々に貸し剥がしに走り始める。資金ショートを起こし、破産を申請し倒産に至った。
平成4年に「顧客データベース構築システム」の販売をきっかけに業績が急伸し始め、同8年には広告とインターネットを組合わせた「ハイパーシステム」を発表。以後はアスキーネットなど大手企業を中心にサービスを開始した。広告収入を基本としたビジネスモデルを掲げ、同じく大手主体に広告募集を開始した。平成8年にニュービジネス協議会より「ニュービジネス大賞」を受賞。同年の売上高は約7億円、経常利益は約2億円を計上した。
株式公開を目指し証券会社と折衝していたが、当初計画していた売上高70億円という業績が事業計画に対して大きく乖離。また外注したシステムにトラブルが発生したこともあり、広告受注が伸び悩んだ。これを懸念した証券会社が株式公開の延期を申し出たことで、信用不安が拡がり、融資先の銀行が次々に資金回収に走り始めた。同時期に第三者割当増資で入手した6億円を全額返済資金に回したことで資金がショートし、同年12月に破産を申請し倒産に至った。
システム障害が多発したため、システム構築を内製化したが完了に1年近くの時間を要した。資金繰りでは銀行支援を申し出たが、貸し渋りや貸し剥がしの最中にあり、支援は受けられなかった。これを契機に全ての支援が受けられなくなった。広告主もシステム障害から、本来の目的であるマーケティング活動が途絶えてしまうことから、離れていくようになり、株式公開も主幹事証券会社より延期を申し出られ、資金繰りは一気の頓挫した。
市場の読み間違いと外注システムトラブル
インターネット人口がまだ少なく、当初予想したよりも市場規模が小さかったため、広告主が集まらなかった。また、外注していたシステムが広告主に提供するデータが出力できなくなるというトラブルが発生。広告主がどんな顧客からどのような反応が得られたかを把握できなくなり、広告効果を確認できないことから、広告主が離れていった。
株式公開の延期と銀行からの貸し剥がし
業績が証券会社が期待していた数字と大きく乖離していたため、株式公開が延期となった。この事業計画のズレを受けて、銀行から一斉に貸し剥がしを迫られた。一旦返済した後も再度貸し付けてもらえると考えていたが、その後支援を受けることはなかった。
銀行の与信機能を甘く見ており、組織の行動原理を理解していなかった。直接金融と間接金融の性格をよく理解しておらず、ベンチャー企業である当社は、当然銀行ではなく、リスクマネーであるベンチャーキャピタルの支援を選択すべきであった。システムトラブルに関しては、提供するサービスの核となるシステムがずさんな設計であったことから、大手ではあったが外注先の選定を誤った。また、市場規模の成長予測や売上の見込みが甘く、これに乖離した実態を利害関係者が見るなり、一気に信用不安が発生してしまった。
当時、インターネットは始まって間もなく、基幹となる通信インフラが整わず、個人利用者も限定されていた。サービスは画期的ではあったが、時代の先を行っていたが追い越しすぎた感がある。
銀行の基本的な姿勢を勉強し、世間の常識を勉強し、さらには窮地に慌てず対処する方法を身に付けていれば回避できたであろう。事業に失敗した当事者は慌てふためくもので、このような時こそ一歩後ろに下がって状況を分析する余力を身につけるべきであり、さらには世の中の理、すなわち利害関係者の心理状態や行動特性など身に着けるべきであった。簡単にいえばビジネスや金融・財務に関する仕組みを勉強することとなるが、これが失敗経験なくしては思いつかないものでもある。
経営者として利害関係者との調整の難しさを知り、バランスよく配分することの重要性を知った。また先行きでもブレることのない基本理念に根ざした経営を心掛けること、物事に動じない、焦らない自身を確立することが、ベンチャーには必要であると学んだ。