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価格競争に対応するため、業界の潮流に乗り、人件費の安価な韓国、中国に製造を外部委託した。変化の厳しい業界であるため、スピーディな意思決定が必要であったが、取引先の調査や検討など、品質を保つための努力を怠り、エラーや納期遅延などのトラブルが発生するようになった。品質は大幅に低下し、日本で商品化することは困難となり、大幅な赤字を計上することとなった。
所在地 | 東京県 |
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業種 | 情報通信業 |
従業員数 | 8名 |
設立・創業 | 設立:平成13年4月 |
事業分野 | ソフトウェア開発 |
事業概要 | サーバ側でアプリケーションソフトやファイルなどの資源を管理するシンクライアントシステムの開発及びそれを用いたソリューション提供を展開。セキュリティ意識の高まりを背景に、大手企業を始め、地方自治体、金融機関などに販路を築いている。 |
社長の年齢 | 30歳代 |
創業時の属性 (職業) |
会社勤務(中途退社) |
平成16〜17年、シンクライアントのハードウェア製造に関して、韓国、中国企業に製造を外注委託したが、エラー、納期遅延が多発するなど、品質に問題が発生し、日本市場では売物とならなかった。これにより、大幅な赤字を計上するに至った。
平成13年に創業。当時、日本でシンクライアント開発を手掛ける会社はなく、その市場性を見越して、システム関係の仕事に従事していた創業者と前代表が韓国T社社の一部出資を取付けて立ち上げた。シンクライアントは企業及び自治体のセキュリティ対策により拡大が期待されていたものの、実際の導入の際には、案件の大型化がなかなか進まず、設立後収入はしばらく厳しい状況が続き、売上高は平成15年期1億6,000万円、同16年期2億2,000万円に留まった。同17年期の変則決算を経て、同年、上場企業のU社の子会社となり、同社得意先と取引を開始し販路は拡大、同18年期は、売上高6億7,000万円と大幅増収となった。但し、依然として収益基盤の確立を見るに至っておらず、当期損失を計上している。
平成16から17年にかけて、ハードウェアを商品化するに当たり、価格競争に対応すべく、他のシステム会社と同様、人件費の安価な韓国、中国に製造を外注委託することとなった。試作品段階では、良い製品を提示され、量産化を決定したが、いざ生産を開始すると、エラー、納期遅延などのトラブルが発生するようになり、品質は大幅に低下、日本で商品化することはできなかった。平成18年期の当期損失計上の主因となってしまった。
即時に当外注委託先との取引を中止した。取引を長引かせなかったことで、業績への悪影響は最小限に留めることができた。その後は、社内に品質管理部門を設置するほか、グループ会社に製造を委託するなどして品質の向上に努めた。
なお、以前より進めていたU社による当社買収が決定し、平成17年に2億円超の増資、資金調達はスムーズに進んだ。品質の向上を果たしたシンクライアント製造部門は、最終的に平成18年のグループ再編によってK社に事業譲渡されることとなった。
移り変わりの激しい業界
日進月歩で進歩する技術や市場動向に対応するには、スピーディな意思決定による事業運営が必要である。変化の激しい業界に対応すべく、海外への外注委託を素早く決定した。
取引先に対する必要な検討を怠った
短時間で決定を行った分、取引開始に至るまでに十分な時間をさくことができず、相手先の調査・検討を怠ってしまい、安易な経営判断を下すこととなってしまった。また、取引先に対する管理の体制も不十分であり、一連のトラブル発生を未然に防ぐことができなかった。
あまりにも価格面や素早い商品化を優先しすぎたため、試作品の品質のみで取引の開始を決定し、詳細な企業調査や生産体制の確認など、品質を保つための努力を怠ってしまった。スピーディな意思決定が裏目に出た形といえる。市場が求めたていたのは、安価な価格だけでなく品質の良い商品であったため、結果的に同商品は日本市場では売物とはならなくなり、大幅な赤字を計上する要因となってしまった。
企業や自治体のセキュリティ意識の向上、環境に対する意思の上昇に伴う消費電力の低下に対するニーズなど、当時より当社商品に対する要求は多く存在しており、社会的、経済的な状況としては、むしろ当社に追い風にあったと考えられる。また、多くの企業が商品価格を抑えるため、製造を海外へ外注委託しており、当社も業界の潮流に乗り、外注生産を開始したが、結果的にはトラブルによって失敗に至った。
ベンチャー企業であったことから、社内の管理体制が不十分であった。意思決定は迅速であったが、海外市場の動向や外注先企業を詳細に調べ、トラブルが発生する可能性がないか慎重に検討する必要があった。また、そもそも中核事業ではないハードウェア製造を強化するべきであったのか、業界の流れに固執することなく、生産の可否の判断を下す必要があった。
変化が激しい市場だからこそ、リスクを見極めて、引く勇気を持つことが大切である。そのためには、管理体制を強化し、世の中のニーズに対応して臨機応変に事業を構築する必要がある。また、安易に海外展開するのではなく、日本のベンダーで生産することができないか検討する必要があった。実際に現在は日本のベンターによる生産も行っており、一定の成果を上げている。
現在は、上場企業の子会社として、グループ一体の下、事業を展開し、売上は比較的堅調な推移を辿っているが、未だ採算面は厳しい状況が続いている。親会社は監査法人より継続企業に関する疑義を表明され経営状況は順調とは云えず、当社業績においても親会社の動向に左右されやすい点は否めない。ただし、セキュリティ意識の高まりの中、当社の保有技術自体は、将来性のあるものであり、今後の伸張回復に期待したい。