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M&Aの失敗で資金ショートした経営失敗の実例です。経営不振に悩む経営者の方は、会社の倒産、破産に強い弁護士にご相談下さい。

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64 情報通信業の経営の失敗(8):M&Aの失敗での資金ショート

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、海外取引先のM&Aの失敗の影響で資金ショートした経営失敗の実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 海外取引先のM&Aの失敗の影響で運転資金がショート

売上が見込んでいたほど伸びず、人件費負担が荷重となっていたなか、海外取引先のM&Aによって不良債権が発生。たちまち運転資金がショートする状態となった。もともと与信背景が乏しく、資金調達は容易ではなかったため、突然の不良債権の発生で、資金繰りが圧迫することになった。

 企業プロフィール

所在地 東京都
業種 情報通信業
従業員 22名
設立・創業 設立:平成12年8月/創業:平成12年8月
事業分野 情報システム開発
事業概要 顧客とのリレーショ ンシップを深めるべく顧客情報を一元化し、顧客満足度の向上を実現させ、結果として企業収益の増大につなげるためのシステムであるカスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)のソリューション提供が主業。現在はセキュリティシステムにも注力して事業を展開している。
社長の年齢 50歳代
創業時の属性
(職業)
会社勤務(中途退社)


会社経営の失敗の詳細


 結論

ベンチャー企業ゆえに与信背景が乏しく、もともと資金調達は困難であるなか、取引先のM&Aによって不良債権が発生。運転資金がショートし、資金繰りが圧迫することになった。

 設立から成功まで

現代表が以前勤めていた企業においてCRM事業に注目し、手掛けることとなったものの、時期尚早であったため市場に受け入れられず、間もなく撤退を余儀なくされた。この事業に期待を持っていた現代表と数名が独立し、平成12年新たに当社を立ち上げた。ITバブルの背景もあって一時はCRMへの注目が高まったが、その後バブルが弾け、暫くは売上1億5,000万円前後の横ばい推移が続いた。近年では、個人情報保護法やSOX法の施行を背景にセキュリティ事業に進出。不正侵入検知、ネットワーク診断、ウィルス監視などの監視系システム及びログイン認証、情報保管などの認証系システムやサービス、コンサルティングの提供を手掛けるようになり、事業分野を拡大させている。投資家たちからの注目も集まるようになり、順次増資を行い、平成19年には資本金は2億円弱となった。

 課題・ヒヤリとした経験

当社は海外メーカーの代理店であったため、取引先のM&Aなどによって不良債権が発生したケースが2度ほどあった。経営基盤が確立していないなかで、業績への影響は免れられなかった。当社はベンチャー企業であり、与信背景が乏しく、もともと資金調達は困難であったが、財務基盤が弾力性を欠くなかで、突然の不良債権の発生や取引先のM&Aで、たちまち運転資金のショート状態となり、資金繰りが圧迫することになった。

 対処と結果

当社の場合は人脈に恵まれ、関係者の紹介などがあり、通常では得られなかったであろう金融機関からの資金援助を得ることに成功し、難を乗り切った。投資家からの増資により運転資金が確保されたことで、資金ショートを免れ、事業を継続することができた。最近においては当社の事業内容が投資家たちの注目を集め、評価されたことで大幅な増資がなされている。これによって更に業容を拡大するまでに至っている。

 原因

(1) 特性

経営基盤が確立していなかった
見込んでいたほど売上が伸びなかった一方で、先行投資としての人件費負担など固定費が重く、財務基盤は脆弱であった。また、実績に乏しく十分な資金調達もできない状況であった。

(2) 要因

取引先の動向に左右されやすい
海外メーカーの代理店という立場ゆえに取引先の動向に左右されやすい状況にあり、代理店契約先のM&Aによる影響を免れられなかった。経営管理の整備も遅れ、取引先の与信情報のチェックを怠っていた。

 経営判断

先行投資とも言える従業員採用のタイミングを誤り、売上が伸びていないにも関わらず新規雇用を進めていったため資金不足に陥ってしまった。人件費は常時の支出であるが故に大きな負担となった。不良債権の発生により、運転資金が枯渇し、資金繰りにも苦労することになってしまった。

 背景

ITバブルの崩壊は当社の収益が伸び悩んだ要因であることは否めない。またアメリカの企業から輸入販売を行う代理店という立場にあったが、同国はM&Aがさかんに行われており、取引先動向に当社事業も左右されることとなった。

 得られた教訓

売上が伸び悩む中で人件費を始めとする固定費負担は重くのしかかり、資金調達が困難を極める状況下で資金ショートの危機を招いた。業況を見極め適切なタイミングで採用を行い、固定費過多を招かないことが重要である。今後の業容拡大を見込んで従業員を採用を進めるが、その採用のタイミングを見極めるのが重要である。

 後日談

現在は投資家たちの支持を得られ、資本金は度重なる増資を経て2億円弱となった。未だ収益性には乏しいながら自己資本は厚みを増している。また海外メーカーとの取引においては安定株主を有する企業と取引が始まるなど、安定した商品供給が得られるよう取引先を選別している。

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書籍:歯科医院の事業承継とM&A

学建書院,2016年