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61 情報通信業の経営の失敗(5):経営統合の失敗

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、経営統合に失敗し法廷闘争となった実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 株主提案の経営統合を進めるも失敗し法廷闘争に

設立当初は資金調達を課題とし支援先を求める中、有力株主からの提案で経営統合の話が持ち上がる。一時は話を進めるも、途中意見の相違で解消。それに関して法廷闘争が発生する。また、法務トラブルを抱えたことで、一部の金融機関からの支援に多少の障害発生。大手金融機関からの継続した支援を中心に乗り切る。平成18年に和解成立。

 企業プロフィール

業種 情報通信業
従業員数 22人
設立・創業 設立:平成13年
事業分野 システム開発
事業概要 ソリューション対応のシステム開発を主力としている。
社長の年齢 30歳代
創業時の属性
(職業)
会社員(スピンオフ)


会社経営の失敗の詳細


 結論

製造コストの負担が重く資金調達が課題であったが、ベンチャー企業として資金力不足は否めず、支援先を求める中で、平成15年頃当時の有力株主により経営統合が提案される。途中意見の相違から話を解消したところ、法廷闘争が発生する。これにより、一部の金融機関からの支援に多少の障害発生。しかし、大手金融機関からの継続した支援を中心に乗り切る。平成18年に和解成立。

 設立から成功までの経緯

大手システム開発会社勤務時代に、社内で現システムの基となる内容を起案したが、受け入れられず独自で展開することを決意し独立、当社を立ち上げた。システム開発に伴う先行投資が創業当初から約4年続き、厳しい運営を余儀なくされていた。その後、一応のシステム及び生産体制が整い、平成18年には営業に注力、19年度以降軌道に乗る見通しがついた。実績を重ねていくとともに、売上高も順調に増収基調を辿っている。

 課題・ヒヤリとした経験

開発型ベンチャー企業の常として、設立初期はコスト負担が重く資金調達が課題となったが、支援先確保は容易ではなかった。そんな中、平成15年頃に当時の有力株主より経営統合の話を受けた。実現に向けて話を進めていたが、途中で意見の食い違いが生じ、結果的には経営統合には至らなかった。これに対して、その株主はこれまでにかかった経費の損害賠償請求の訴訟を起こしてきた。

 対処と結果

数千万円を掛けて大弁護団(現在の当社監査役をはじめ複数の弁護士による組織)を結成。取引行の中には法務トラブルを抱えたベンチャー企業として与信低下し、融資取引に応じなくなった先もあった。しかし、係争中においても、事業の将来性を評価していた某大手金融機関が資金支援を継続。その後は、他の金融機関も再度支援姿勢に転じた。平成18年に和解成立。

 原因

(1) 特性

弱い経営基盤から支援先を探していた
システム開発に伴う先行投資が続き、製造コストの負担も重く、資金力不足は否めず、資金調達も課題が多かった。支援先を求めていたが、ベンチャー企業として実績が乏しいこともあり、その確保は容易ではなかった。

(2) 要因

人を介した経営統合提案に対する、慎重さの不足
有力株主から提案された経営統合であったが、途中で先方の意見に疑問を感じ、話を解消した。しかし、解消によりその株主がプライドを傷つけられたと感じ、訴訟に至ったということも考えられる。人を介したビジネス案件については、そういった可能性にも注意する必要を感じる。

 経営判断

当初より比較的外部からのビジネス案件には警戒していたが、業務提携話が持ち込まれた際、当初の自力拡大方針がゆらぎ、提携を進めてしまった。

 背景

業務提携の話があったのは、M&Aブームの影響もあった。世の中の流れに乗ったと言う訳ではないが、マスコミ紙上などでも取り上げられる頻度が多く、警戒心が薄れてしまったと思われる。

 得られた教訓

これまでは「危険を冒さなければ成功を得ない」という方針であったが、このトラブル以降は、「危険な話には関わらない姿勢が大切である」という方針に転じた。一念発起してようやく当社を立ち上げ、システム運用開始にまでこぎつけたにもかかわらず、外部からの提携話にやや安易に応じたことが、結果的には法廷闘争に発展した。
ベンチャー企業が事業をする際には、大きな失敗が許されない。自社製品に自信を持つことと、外部からのビジネス案件などには細心の注意を払い冷静な判断を心掛けることが必要である。

 後日談

和解後、先方との接触は一切ない。
平成19年度は売上が飛躍的に伸展し、採算もとれる段階になる見通しである。大手クライアントとの関係も確立し、更なる発展を目指している。

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