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システム開発でクレームが多発しトラブルとなった経営失敗の実例です。経営不振に悩む経営者の方は、会社の倒産、破産に強い弁護士にご相談下さい。

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62 情報通信業の経営の失敗(6):システム開発のトラブル

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、システム開発でクレームが多発しトラブルとなった実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 システム開発でクレームが多発しトラブルに

顧客の真の要望に沿ったシステム開発が出来ずに、トラブルに発展した例があった。エンジニア達が、技術的な面でのクオリティ重視に偏向していた。さらに、顧客、営業、開発プロジェクトの各々の思いと行動がバラバラだったため、結果として顧客の満足するシステムが納期までに納められずに、開発のやり直しを強いられ開発工数が膨大なものになり大きな赤字プロジェクトになってしまった。

 企業プロフィール

所在地 兵庫県
業種 情報通信業
従業員数 100名
設立・創業 設立:平成7年10月/創業:平成7年10月
事業分野 情報システム開発、インターネットソリューション事業、他
事業概要 システム開発及び保守運用、ITコンサルティング、WEBサイトプロデュース、アウトソーシング等を手がけ、特にオープン系システムの開発に強み。官公庁・大手企業筋を主体に取引基盤を構築して着実に実績を積み重ねており、業容は拡大傾向にある。
社長の年齢 30歳代
創業時の属性
(職業)
会社勤務(その他:会社役員)


会社経営の失敗の詳細


 結論

顧客の真の要望に沿ったシステム開発が出来ずに、トラブルに発展した例があった。エンジニア達が、技術的な面でのクオリティ重視に偏向していた。さらに、顧客、営業、開発プロジェクトの各々の思いと行動がバラバラだったため、結果として顧客の満足するシステムが納期までに納められずに、開発のやり直しを強いられ開発工数が膨大なものになり大きな赤字プロジェクトになってしまった。

 設立から成功までの経緯

阪神大震災発生直後の平成7年10月に「元気な神戸を取り戻したい」との思いからデジタルコンテンツ事業を行う新会社を設立した。当初はWEBサイトの構築などを手がけていたが、営業を継続する内に技術者を拡充していき、エンジニアの請負事業も開始、利益を確保できる体制を築いた。その後、既存顧客から自社システムの構築などの相談・要望も受けるようになり、事業領域を更に拡大してきた。現在ではJ-SOX法に基づくITコンサルやWebセキュリティ診断、SNS製品開発など多岐に亘る事業を展開している。

 トラブル・失敗・課題に至る経緯

顧客向けにシステム構築を提供する際、顧客サイドと当社開発担当者サイドとの間に、システムの仕様などについて認識のズレが生じる事が発生した。顧客の真のニーズを十分に汲み取れず、納品したシステムが顧客の要望と大きく乖離し、クレームに発展し、信用失墜に繋がりかねないというケースが発生した。当社はエンジニア集団のため、顧客から新規システムの開発などの依頼を受けた際、どうしても技術的なところから企画に入ってしまう傾向があった。技術面でのクオリティ重視に偏向してしまい、顧客内部の真の要望という点を深く認識・把握しないままシステム開発をスタートしてしまうという体質から抜け切れない状況にあった。

 対処と結果

改善の方法として、「お客様の経営課題を一緒に考える」をキーワードとした。具体的にはまず、営業担当者が、顧客が課題として抱えている内容を十分にヒアリングし、経営課題全般を確認すること。その中で、システム面で解決出来る点を探り、システム開発の受注に繋げるという営業手法を導入した。この結果、問題の解決につながり、顧客満足度は大幅に改善され、各顧客との関係の強化にもつながった。また、先方の現場担当者だけでなく、決裁権者とも認識を共有することで、認識のズレはなくなり、クレームの発生にも繋がらなくなった。現在、既存顧客として70社程度を抱えているが、いずれも取引開始以降、高い評価を得ており、リピート受注なども堅調であり、顧客の囲い込みに成功している。

 原因

(1) 特性

エンジニア集団としての企業体質
エンジニア集団としての企業体質があり、顧客サイドの経営課題やニーズなどを十分把握せずに技術的な面でのクオリティ重視に偏向していた。

(2) 要因

顧客の真の要望を見抜けない、仕様鵜呑みのエンジニア体質
顧客内部の統制がとれていない状態であるにもかかわらず、品質・納期を重視するあまり、顧客のシステム担当者の意見のみを鵜呑みに顧客経営層の意向を確認しないままシステムの構築にあたってしまう傾向があった。これは営業と開発との連携がとれていなかったことに起因する。

 経営判断の問題点

顧客内部においてシステム担当者と経営層の意向が異なるケースは珍しくない。プロジェクト統括・管理する人間が、営業サイドから吸い上げた顧客の情報と開発サイドから吸い上げた意見を言葉だけで判断し、顧客の経営課題・ニーズがどこにあるのかを把握出来ていない状況も多い。営業サイドと開発サイドの認識のズレが調整出来ていなかったため、顧客内部のズレに気づかなかったと言える。こうした管理職者の誤りは当然、経営者の誤りでもある。

 背景

当時、ITブームとして社会のIT化が加速する中、「システムは万能なるもの」と思いこんでいる経営者が多かった。システム導入・IT化を行えば、すぐに経営面全般で課題が解決されプラスに働くものと考え、過剰な期待を抱いてしまう傾向があり、顧客と当社の認識のズレを広げる遠因であったと言える。

 得られた教訓

営業担当者が顧客と十分な意志の疎通を行い、開発サイドと認識を共有し、管理者がお互いの認識・意見のズレを無くす努力をすればトラブルの発生は少なくなる。また、顧客のシステム投資の決裁権者の特定が最優先であるという点。先方の現場担当者だけでなく、決裁権者とも認識を共有することが重要であり、この点をしっかり押さえていれば、クレームの発生には繋がらない。これは当社のみに限らず、あらゆる業種において、企業間取引を行う場合、先方の決裁権者との意志の疎通がしっかりできていれば、取引はスムーズに進むと考える。

 後日談

問題点については現在、完全に解決されており、その他の営業面・経営面における課題や大きな問題は抱えていない。顧客満足度の向上により、各顧客との関係は良好で、売上は伸長傾向を重ねている。過去の問題点については、今から思えば苦い失敗ではあったが、これによって学んだことも多く、現在に至るまでの成長を支えた原動力ともなっており、意義はあったと考える。

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