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市場を先読みし技術力で製品開発するも成約しない経営失敗の実例です。経営不振に悩む経営者の方は、会社の倒産、破産に強い弁護士にご相談下さい。

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59 情報通信業の経営の失敗(3):製品開発と市場の先読み

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、市場を先読みし技術力で製品開発するも成約しない実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 技術力で市場を先読みし製品開発するも成約せず

世界最高水準の当社の技術力に対する評価は高く、市場出現を見越して新製品を開発した。開発時点ではその製品を活かしきれる最終製品がなかったが、現在この製品を必要とするマーケットが出現しようとしている。しかし、後発では大企業との競争に優位性を持てないため、他社に先駆けて開発した意義は大きい。

 企業プロフィール

所在地 福岡県
業種 情報通信業
従業員数 46名
設立・創業 設立:平成15年6月/創業:平成15年6月
事業分野 ソフトウェア
事業概要 デジタル家電に搭載するファームウェア(ハードウェアの基本的な情報を扱うために機器に組み込まれたソフトウェア)の開発、RF&アナログ技術の開発を主業務とする。当社が開発するシステムは、デジタルカメラ、DVDやプリンタなどに使用され、大手電機メーカーを対象とした営業を展開している。
社長の年齢 40歳代
創業時の属性
(職業)
会社勤務


会社経営の失敗の詳細


 結論

平成16年に世界最高レベルの機器を開発。この機器に関しては、市場出現を見越して開発したもので、世界最高水準で当社の技術力に対する評価は高まった。現在、この製品を必要とする市場が萌芽しつつある。

 設立から成功までの経緯

平成14年にシステム開発企業に入社後、15年同社の100%出資により当社を設立。16年に第3者割当増資を行った後、17年に現社員が親会社の所有していた株式を買い取り、同社との資本関係を解消、完全な独立を果たした。設立第1期目の平成16年期は子会社としての運営だったが、第3者割当増資後は、商号も現商号に変更して本格稼動を開始。当社が得意とするアナログやファームウェア分野は競合が少なく、その技術が利用されるデジタルカメラ、DVDの普及も重なり、売上高は大幅な伸長を見せ、着実に成長を遂げている。

 トラブル・失敗・課題に至る経緯

当社の世界最高水準の技術力に対する評価は高く、平成16年には世界最高レベルの機器を開発した。この機器の開発は、開発時の様々な課題を解決するために将来出現するであろう市場を見込んでのものであった。サンプル出荷を行い本格的な生産を開始できる体制を整えたが、その時点ではその技術を活かしきれる製品自体がなかった。現在、この製品を必要とするアプリケーション分野が出現しはじめた状況にある。

 対処と結果

当社のもともとの基幹となるプラットフォーム開発などの案件の受注拡大に努め、業績確保に取り組んだ。営業面では、何度も足を運んで根気良く説明を重ね、コミュニケーションを密にとるなど、誠実に対応することで顧客の信頼構築に努めていった。実績を重ねることで億単位の案件受注など、業績拡大につなげることができた。当社の開発した機器は、技術力を示すシンボル的な位置付けとなっている。

 原因

(1) 特性

新製品の技術が高度過ぎた
世界最高水準の技術力により当社独自の機器を開発したが、それを活用しきれる対応製品自体がないという状況。高度すぎるため、市場ニーズに先行した。現状、市場が出現し始めた段階。

(2) 要因

マーケット予測の先走り
新製品は、後発ではインパクトを優位性を確保できないため、同業他社に先駆けて開発し、潜在的マーケットを見込んで製品開発に踏み切った。時代を先取りしすぎたが、現在、市場が出現し始めた。

 経営判断の問題点

マーケットの立ち上がりを予測するのは困難であり、ある程度の見切り発車は止むを得ない部分がある。ただ、売上の柱として新製品を投入したわけではなかったので、同製品の売上がゼロでも運営に大きな影響を及ぼすことはなかった。

 背景

現状、世界的に市場が草創期にあり、モバイル機器だけでなく、カーナビげーションシステムなどの自動車関連への応用など、大きな将来性がある。

 得られた教訓

市場の成熟度を待って開発に着手したとすれば、世界の競合他社に遅れをとる可能性があり、先発の優位性を発揮できなくなる。高い技術力の維持こそが当社の生命線であり、技術開発力に対する評価が開発受託案件の受注に直結する面もある。当社は自社製品に期待をかけすぎることなく、確実にある程度の業績が見込める部門を確立していたため、新製品の受注がなくても、大きな影響を受けることはなかった。また、高い技術力を持つところには、市場の情報が集まってくるということも実感している。

 後日談

世界的に新製品を必要とする市場が開けつつあり、当社の知名度も世界的に上がっている。今後は、主に海外の競合との開発競争、ビジネス面での迅速性が求められると感じている。

会社の経営不振、破産、倒産に悩んでいる経営者の方は、お電話下さい。会社の再生、倒産、破産に強い弁護士が、適切な対応をアドバイス・サポートします。


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