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設備投資への資金調達が難航した経営危機の実例です。経営不振に悩む経営者の方は、会社の倒産、破産に強い弁護士にご相談下さい。

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9 製造業の経営の失敗(9):設備投資への資金調達の難航

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、設備投資への資金調達が難航し経営危機に陥った実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 担保不足などにより工場建設のための資金調達が難航

早い段階で許認可を取得するなど、信頼性を高めることに努めてきたが、資金調達の面では、信用に乏しく、工場建設のための資金調達に苦労した。最終的には、各自治体より補助金を受け、政府系金融機関の融資も受けられたことで資金面の問題は解決。以後は、着実な業績推移を辿っている。

 企業プロフィール

所在地 茨城県
業種 製造業
従業員数 7名
設立・創業 設立・創業/平成13年6月
事業分野 有機肥料製造販売
事業概要 産業廃棄物を利用した有機肥料の製造販売を手掛ける。全国的にもほとんど例を見ない製品のため、注目度は高いものとなっている。
社長の年齢 60歳以上
創業時の属性
(職業)
その他(自営業)


会社経営の失敗の詳細


 結論

中小企業ゆえに、対外的信用が低く、特に工場設備に関しては億単位の資金が必要となったことから、資金調達面で苦戦した。担保不足などから民間金融機関の大規模な資金調達は得られなかったが、各自治体より補助金を受け、更に政府系金融機関より借入れを行なうことができた。以後、支障ない資金運営が可能となっている。

 設立から成功まで

平成13年6月、複数の地元自営業者による資金出資をもって設立した。産業廃棄物に関する法令が強化される中、施設を設置することで問題の解決を図り、また、産業廃棄物による環境破壊を勘案し、有機肥料に転換する技術を開発したことが起業の要因となった。
加えて、生産した肥料を農家に販売することで、無駄の少ない有効利用を可能とした。業績については、着実な増収推移を辿っている。

 課題・ヒヤリとした経験

事業開始時は決して資金面に余裕があったとは言えず、対外的に信用を固め、金融機関からの融資を受けるまでの期間は資金繰りに苦労した。地元の自営業者達が資本金を出資していることもあり、多額の資本金を募ることはできず、設立時の資本金は400万円で、機械設備の充実を図るには到底足りるものでもなかった。その後、500万円に増資したが、運転資金の需要も高まり、自己資金の範囲で賄いきれないのが実情だった。
特に設備に関しては億単位の資金が必要となったことから、資金調達が大きな課題となった。

 対処と結果

工場建設に伴う総投資額は数億円にのぼり、当初の設備資金は各自治体よりの補助金を当てたが、それでも全てを賄うことはできず、外部資金に依存せざるを得ない状況を強いられた。民間系金融機関ではどうしても担保が必要となり、当社独自の資産力や代表者の資産力には限りがあることから、数千万円程度の借入に留まった。これ以外の資金調達は政府系金融機関よりの借入れをもって対処した。
当社経営に対する理念と事業計画に対する自負を、政府系金融機関の担当者に説明。許認可業者であり、各自治体から補助金を得ている事業であることも後押しし、各担当者しいては同行から当社の事業計画に対する理解と信頼を短期間で得られた。同行支援を受けてからは、支障ない資金運営が可能となった。

 原因

(1) 特性

他に類のない新規事業かつ中小企業ゆえの対外信用の低さ
数億円単位の初期投資は、地元の自営業者達の資本出資では到底調達することはできず、外部資金の導入を計画。許認可等の取得は全て完了していたが、当時としては全国的にも類を見ない事業であり、中小企業でもあることから、金融機関の信用確立及び当社の事業内容の理解を得るまでに苦慮した。

(2) 要因

当初の計画以上の資金負担
億単位の資金が必要であったが、調達に関しては一部見込み発車的な面も否定は出来ない。加えて、売上高の拡大と共に運転資金の需要が拡大したことも、当初の計画以上の資金負担を招くことになった。

 経営判断

多額の設備投資に対する資金調達については、自社の経営規模などを勘案すれば調達が容易でないことは分かっていたが、金融機関から事業内容が理解されなかったことや、地元の融資先に当社と同様な事業を営む同業者がなく将来性を懸念されたこともあり、予想以上に難航した。その点では、当初の資金計画案が一部現状に合わなかった可能性もある。結果としては政府系金融機関の理解が得られたことで、正常な運営が可能となっている。

 背景

産業廃棄物に関する異臭問題や環境問題から法規制が強化され廃棄物の処理に制限が設けられると、廃棄物に関係する業界に影響するとともに、それに対応するための新たなサービスの需要が生じたことが大きな要因として挙げられる。

 得られた教訓

当社経営に対する理念と事業計画に対する自負を政府系金融機関の担当者に説明し、融資担当者を含めた同行の信用性を得られた。将来的な展望をしっかり持っていたことや、許認可を取得していたことも信頼性を高めた要因の一つでもあった。許認可事業であることで、法令順守を徹底し、信頼を確保できたことも大きい。
事業を発足させるだけでなく、事業を継続するには、資金力がどの程度必要になるのか、人材は獲得できるのか、というテーマは避けることができない。事業を継続するなかで、このバランスは崩れやすく、一時的な判断より長期スパンによる計画性が重要視される。

 後日談

現在では資金需要も落ち着きを見せ、更に売上高も順調に推移してきている。借入れ返済も順調にすすみ、徐々に金融負担は軽減化している。更に全国的に見ても同業者が少ないこともあり、自治体からの問い合わせや見学者が増えており、各方面から注目されている。


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学建書院,2016年