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最先端技術をもって起業し、度重なるベンチャーキャピタルからの資金提供を受け業容拡大を図るが、技術的認知度や市場認知度の向上が当時は十分ではなく、大企業が、ベンチャー企業のアイデアに対する積極投資を控えていたこともあって、製品企画まで手掛けなければならなかった状況もあり、このことから先行投資負担が続き、累損が拡大していった。
所在地 | 宮城県 |
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業種 | 製造業 |
従業員数 | 17名 |
設立・創業 | 設立・平成14年/創業・平成14年 |
事業分野 | 半導体・電子機器 |
事業概要 | 半導体・電子機器分野で特殊技術を用いた製品の開発・製造・販売を行う大学発のベンチャー企業。自社の最先端技術による設計技術や設計通りの構造を実現する技術力、またこれらの技術についての網羅的な特許群を保有し、国内大手の電機メーカー、自動車関連メーカーなどに販売している。 |
社長の年齢 | 30歳代 |
創業時の属性 (職業) |
大学・研究所等教職員 |
独自の最先端技術を武器に、当初は光通信産業を対象に製品開発を行っていたが、ITバブル崩壊による同分野の停滞から、非通信分野の製品開発にシフト。当時の大企業が投資スタイルを変化させたことにより短期間での成果を強いられ、アイデアのみで勝負することができず、製品企画まで手掛ける必要性が生じたことから、先行投資負担が増加し、一時的に先行資金負担が増すこととなった。
昭和40年に、大学の電気通信研究所に赴任。昭和54年には教授となり、長年にわたって特殊技術の研究開発に携わる。平成12年に同大学未来技術共同研究センター教授となった後、独自の技術の特徴を活かした製品を社会に提供すべく、平成14年、同研究センター及び科学技術振興事業団の支援を受けて会社設立に至った。当初は光通信分野のマーケットを対象としていたが、ITバブルの崩壊を受け、平成15年下期より非通信分野のマーケットにシフト。また、ベンチャーキャピタルが引き受け先となって第三者割当増資を実施し、平成15年には資本金を1億1,650万円に増資。平成16年期は試作品の出荷にとどまったことから売上高は約700万円。平成17年にも第三者割当増資の実施で資本金を2億6,650万円に増資。平成15年期は大きな研究受託収入があり売上高は約1億1,000万円と伸長。平成18年期売上高は約1億円となったが、平成19年期は偏光を捉えるカメラシステムなど製品売上の増加から1億7,000万円を計上している。
当社の技術力については最先端の技術力を有しているが、技術認知度や市場認知度の向上が伴わず、これらのことが一因となって先行投資が続き、累積損失も蓄積していった。当時、大企業がベンチャー企業のアイデアに対する積極投資を控えており、製品企画まで手掛けなければならなかった状況も背景にあった。平成16年期は試作品の出荷にとどまったことで、経費の先行支出から最終赤字を計上、平成17年期も大きな研究受託収入があったが、案件の長期化などもあり販管費の増加から最終赤字を計上。平成18年期は総務省および文部科学省より研究受託収入、特許実施許諾契約による技術ライセンス一時金などを得たが、最終赤字計上となった。平成19年期も偏光を捉えるカメラシステムなど製品売上が増加したが、引き続き先行投資の状態が続いて最終赤字計上となり、繰越欠損を抱えるに至っている
学会活動、シンポジウムでの講演、雑誌の記事掲載や展示会への出品などを積極的に行い、技術の認知度を向上させた。また、マーケットでの認知度を向上させるため、マーケット内においてメジャーな企業との取引を確保。更に会社の信用力アップのため、情報公開を積極的に行った。こうした積極的な発表、PR活動を行ってきたことで大企業との取引は増えつつあり、画面の歪みを計測する装置の発売が予定されていることもあって平成20年期には経常損益のバランスを目指している。また、ベンチャーキャピタルにも情報提供を積極的に行ってきたことで信用を得て、安定的な事業資金の確保ができるようになった。
独自技術を有するが故の技術及び市場認知度の不足
大学発のベンチャー企業で最先端の独自技術を有するも、その技術の特殊性故に技術的な認知度の向上や市場認知度の向上に時間を要する企業特性を有していた。
先行投資負担が大きい
技術的及び市場的認知度の向上に時間を要することから、製品の開発・研究を進める上で、先行投資負担が重く圧し掛かってくる状況にあった。
最先端技術を有するが故に、技術開発研究と同時に、まずは技術的な認知度の向上、次いで市場認知度の向上を最優先課題して取組むべきであった。技術的または市場的な認知度を背景として会社の信用もついてくるものであり、その段階で初めて製品の安定供給などが可能になり、企業体としての実績も確固としたものなる。
バブル崩壊後の「失われた10年」を経験し、国内の大企業に投資スタイルの変化が現れた。事業部制の導入などによる迅速な意思決定が可能となった反面、短期的に成果を要求されることで投資スタイルが保守的となった。
独自技術に関しては、光通信応用への研究開発はもとよりディスプレイ、光計測、光記録など多く有用な部品・技術を生む可能性をもっているが、技術的及び市場の認知度をもっと迅速に行うべきであった。具体的には、学会やシンポジウムでの講演、雑誌の記事掲載、展示会への出展を行い、マーケットにおいての主要な企業との取引に漕ぎ着け、製品の安定供給や高品質の維持に努めている。またベンャーキャピタルより信用を得るために情報公開を積極的に行ってきたことで、現在では潤沢な事業資金を確保することができている。
平成19年期はイメージングカメラシステムなど製品売上が増加し、売上高は1億7,000万円を計上。今後は歪み計測器の発売を予定しており、平成20年期の売上目標は2億7,000万円に設定、設立当初より赤字決算が続いているが、単年度で初の黒字確保を目指している。また某ベンチャーキャピタルが運営するファンドからの投資により、資本金は約3億4,000万円まで増資。現在も、日本を代表する製造メーカーから出資を受けており、また新たな会社からも投資の話がきている。経団連の関係者が当社を訪問・見学してゆくなど高い注目も浴びている。今後も高い技術力を最大の経営資源とした技術開発型会社であり続けるとしている。