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事業拡大志向から、当初の石油製品の卸業務から、ガソリンスタンド経営、運送事業や既存のスタンドに隣接した運転手向けの食堂を開設するなど、経営の多角化を進めた。これらの兼業事業は小規模ながら黒字を確保できたが、本業の石油製品販売やガソリンスタンドで乱売合戦に巻き込まれ赤字幅が拡大、加えて大口取引先が倒産し、大口債権が焦付いたため資金繰りがつかなくなり、民事再生を申し立てた。折からの規制緩和によりガソリンスタンド間の価格競争が激化しているにも拘らず、仕入先の要請でスタンドを相次いで開設、また大口取引先に固執するあまり、多額の手形を融通し、結果的には不良債権が1億円以上に膨らんだことが、経営破綻の要因となった。
所在地 | 富山県 |
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業種 | 小売・卸売業 |
従業員数 | 6名 |
設立・創業 | 設立:平成6年3月/創業:平成6年3月 |
事業分野 | その他(石油製品販売) |
事業概要 | 地元でガソリンスタンド2店舗を経営。その他、県内で運送事業も手掛ける。平成18年民事再生申立て後は、他県のガソリンスタンド2店の経営から撤退して、本社も現在地に移転。また石油製品卸売部門からも撤退、事業規模を縮小して経営再建に取り組んでいる。 |
社長の年齢 | 30歳代 |
創業時の属性 (職業) |
会社勤務 |
代表の事業拡大志向は強く、当初の石油製品の卸業務から、ガソリンスタンド経営にも乗り出した。その後、運送事業や既存のスタンドに隣接した運転手向けの食堂を開設するなど、経営の多角化に踏み切った。これらの兼業事業は小規模ながら黒字を確保できたが、本業の石油製品販売やガソリンスタンドで乱売合戦に巻き込まれ赤字幅が拡大、加えて大口取引先のF社が平成18年に倒産、同社に対して約1億1000万円が焦付いたため資金繰りがつかなくなり、同年5月民事再生を申し立てた。
平成6年現代表が石油製品卸を目的に設立。平成10年頃よりガソリンスタンドの経営にも乗り出し、事業規模拡大により株式会社に改組。平成12年、S社から石川県内のガソリンスタンドの業務を受託。平成17年には過去最高となる約37億円余りの売上を計上し、業容を順調に拡大してきた。
平成14年、S社から石川県内2ヶ所のガソリンスタンドについて、これまでの業務受託(手数料収入)という方式を改め、正式に経営を引き継ぐよう要請を受け自社経営とした。ただ折からの販売競争激化により売上は減少、加えてS社に対する賃借料支払いも重荷となり赤字に転落した。経営者として常に会社を大きくしたいという願望があり、当初は石油製品の卸業務が主体であったが、ガソリンスタンド経営に乗り出したことで2店目、3店目と出店して売上の拡大を目指した。同時に、当初は委託経営による手数料収入であったが、仕入先の要望もあり自社経営に切り替えることで売上規模の拡大を目指した。
平成15年から神奈川県厚木市内に営業所を開設して運送事業に乗り出し、また既存のスタンドに隣接した運転手向けの食堂を開設するなど、経営の多角化に踏み切り利益の改善を目指した。その結果、兼業事業では小規模ながら黒字を確保できたが、本業の石油製品販売で乱売合戦に巻き込まれ赤字幅が拡大、兼業事業でカバーできる状況ではなかった。加えて大口取引先のF社が平成18年に倒産、同社に対して約1億1000万円が焦付いたため資金繰りがつかなくなり、同年5月民事再生を申し立てた。
オーナー経営者の拡大志向
折からの規制緩和によりガソリンスタンド間の価格競争が激化し採算性の悪化が見込まれているにもかかわらず、経営者の拡大志向ゆえ自社経営のスタンドを相次いで開設するなど、多角化を推し進めていった。またオーナー経営であり、社内には社長に対して経営内容について進言できるような人物はいなかった。
大口取引先に依存した経営状況
卸部門においてはF社に集中した営業状況となり、それに伴い同社の経営動向に左右され易い体質となっていた。実際、同社からは支払いの遅延が度々発生していたほか、手形の融通も懇請され、同社の破綻を避けるため1600万円もの手形を融通し、結果的には不良債権が1億円以上に膨らむことになった。
競合激化でガソリンスタンドを取り巻く環境が悪化しているにもかかわらず、仕入先の要請を受けてスタンドを相次いで開設したこと。また大口の販売先を失いたくない一心で、相手の経営状況も精査せず多額の手形を融通してしまい、結果的には傷口を広げてしまったことが大きな誤りであった。
特石法の廃止や規制緩和の影響でスーパーや商社がガソリンスタンドの経営に乗り出すなど異業種からの参入が相次ぎ、乱売合戦に拍車がかかっていた。セルフ方式のスタンドも増加し、販売価格の低下が続き赤字経営が続いた。その後、原油価格の高騰で販売価格は持ち直してきたが、仕入コストも上昇を続け利益を確保することは容易ではなかった。
F社から資金融通を要請された段階で、毅然とした態度で断っていれば、今回の事態を招くことはなかった。また冷静さを失い、目先のこと(同社との取引がなくなること)ばかり考えてしまい、結果的には独断でその要請(資金融通)に応じてしまったが、あの時に社員や友人にも相談して意見を聞くといった「聞く耳をもつ」という姿勢が何よりも重要であったと考えている。例え重要な取引先からの要望であろうとも、時には断る勇気も必要である。下請的な立場であれば、納期や価格、取引が、相手の言いなりでは利用するだけ利用され、結果的には自身の破滅を招くことにもなる。
民事再生申立後は、県内のスタンドを閉鎖し、卸売部門からも撤退するなど縮小経営に転換。そうした中で平成18年8月に再生計画の認可を受けることができ、約定通りの配当を維持できるよう努めている。