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2度にわたって取引先から焦付債権を蒙ったことにより資金ショート、自主再建を断念し民事再生を申請するに至った。特に2度目の焦付発生先は、取引高が全売上の30〜40%を占めるなど、特定の取引先に依存した経営状態にあり、与信判断も甘くリスク分散が図られていなかったことが大きな要因となった。
業種 | 小売・卸売業 |
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従業員数 | 1名 |
設立・創業 | 設立:平成14年7月1日/創業:昭和56年12月 |
事業分野 | その他(食品添加物、水産加工品販売) |
事業概要 | 水産業者への副資材(調味料、保存料)の販売業務でスタート、その後水産加工品の販売を手掛け業務を拡大した。ブローカー的な運営で、代表者一人により一応の収益体質を保っていた。 |
社長の年齢 | 50歳代 |
創業時の属性 (職業) |
その他(個人事業主) |
全売上の30〜40%を特定の取引先で占めるなど、特定の取引先への依存度を増す中、2度にわたる取引先の焦付債権発生により、民事再生法を申請するに至った。
昭和51年に知人と起業するものの内部分裂を起こし、その後、昭和56年に個人創業した。以後、個人経営を続け、平成14年に法人化した。従来からの特定の大口取引先を中心に受注を行い、年商ベースでは3億円前後での安定的な推移を続けていた。中小零細企業ゆえ、新規開拓における価格競争にはとてもついていけないとして、何とか従来の取引先を保つことで運営を続けてきた。
平成16年、福岡県の業者に対して約5,000万円の焦付が発生した。借入金などを投入し穴埋めしてなんとか凌いだ。その後はその借入金の返済を順調に続け、約5年で目途がつくはずであった。しかし、平成18年、新たにまたも約5,000万円の焦げ付きが発生した。前回の返済も進んでいない状況のなか、新たな資金補填は難しく、万策尽き、法的手続きに至った。最初の焦げ付きは無警戒なものであったが、2度目の焦げ付きは、前回の返済を続けて行くために、売上確保が必要であったことから取引を継続していたものであった。2度目の焦付発生先との取引は、売上比率が全体の30%〜40%にまで占める、いびつな格好となっていたのはわかっていた。しかし、新規開拓も出来ないこともあり現状維持の取引を続けてしまい焦付き発生に至った。
2度目の焦付発生先が倒産する6ヶ月前に支払いが難しいとの話が入り、3ヶ月前から当時の取引先7社で同社の存続方法を話し合ったが結論に至らず、ついに18年1月には不渡りになるとの状況から、各社が200万円を出し合って不渡りを逃れた。継続を話し合っていた中の1社が同社の経営を引き継ぐ意向があり、社内で検討するとのことであったが、後日、一転して不可能との返答があった。その結果、継続を断念して2月に自己破産の申し立て、当社もこれを受け連鎖倒産に至った。
特定の取引先に依った取引基盤
1社の売上高が全体の売上の30%〜40%と膨らんでいき、依存度が高まったが、新規顧客開拓をしても価格競争になるだけで、そうしたことに時間をかけるなら従来の顧客との結びつき強化しようと考えた。危険とわかりつつ売上高維持により楽な経営をしてしまったところがある。
大口取引先の倒産
平成16年の最初の5,000万円の焦付発生から、返済に没頭するようになり、経営者としてのリスク管理を怠った。リスク分散ができなかったことから、2度目の債権焦付きで一気に倒産へと至った。
一度は水産加工珍味を扱ったり、ペットフードを扱ったりと新規市場を目指したこともあったが、代表者一人による個人企業と変わらない運営状況で動きに制約があるなか、現状維持に甘んじてしまった。見た目では2度目の焦付発生先が中国から仕入れを行ったり、新商品を投入したりしていたため活発な会社と思えたが、その裏では不良在庫が発生していたり、赤字経営に陥っていた。当社はそういった情報を得ることなく、盲目的になっており、与信管理を怠っていた。
水産加工業界全般が伸び悩んでおり、市況が低迷するなか、新たな顧客、市場を求めるには厳しい環境であった。
一度目の焦付き以降は、現状の売上を維持できれば5年で返済に目処がたつため、多少不安視される相手でも取引を続けて行く必要があると判断した。新規顧客、新規市場を求めるのも厳しいことから、現状維持に走ってしまったことが誤りであった。自分に経営者としての資質が足りなかったのかもしれない。2度目の焦付発生先さえ存続すればと考えたが、与信判断が甘く、取引先の選別を行う決断が出来ず、経営者としての能力の限界を感じた。
取引先のなかでは現金決済を強いるところもあったが、一般債務が少なかったことから比較的協力を得られたのは運がよかった。自分が死んでからこういった借金などのトラブルが発生するより、自分一代で終わらせる事業なので、自分の代できれいにしておきたい。最初、倒産するのはみっともないとか、家族に会わす顔がないなどと悩んだが、すべて自分で背負っていかなくてはいけないと現実を受け入れたとき、前向きに考えられるようになった。