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中古パソコン販売業者の経営失敗の実例です。経営不振に悩む経営者の方は、会社の倒産、破産に強い弁護士にご相談下さい。

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67 小売卸売業の経営の失敗(1):中古パソコン販売業者の失敗

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、中古パソコン販売業者の経営失敗の実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 中古パソコン販売業者が売上拡大への新事業に失敗

中高年向けの低価格パソコンの販売で急成長し、早期の株式公開を目指すものの、楽観的な事業計画と手探りの数量計画のため足踏み状態に。事業拡大が進まないことへの焦りから、関連事業への進出を行ったものの、あえなく失敗。多額の負債を抱える結果になった。

 企業プロフィール

所在地 岩手県
業種 小売・卸売業
従業員数 38名(2007年7月現在)
設立・創業 設立2003年8月・創業2002年4月
事業分野 ネット通販、その他(中古パソコンの販売,保守,メンテナンス,サポートデスクの運営他)
事業概要 中古パソコンの通信販売業者。徹底した品質管理とサポート体制で同業者との差別化を図り、知名度も向上。近年は国内・海外向けの卸売や、関連するサービスなどで多角化を図っており、19年7月期決算は年間売上高10億円を突破する見通し。
社長の年齢 30歳代
創業時の属性
(職業)
会社勤務(個人事業)


会社経営の失敗の詳細


 結論

中高年の初心者に向けた低価格の中古パソコンの販売とサポートサービスを手がけ急成長。先行メリットとして高収益と急速な知名度アップに成功したため、早期の売上10億円達成と店頭公開を目指していた。しかし、これまでになかった業態のため、仕入購入と営業販売、さらにそのプロモーションのバランスをどこで均衡させれば良いかが解らずに紆余曲折が続き、結果として設立当初の販売計画を大きく下回ることになった。増収を急ぐあまり不採算事業に手を出し、多額の資本を投入した結果、大きな負債を抱えることになった。

 設立から成功までの経緯

民間企業に勤務後、1995年独立し携帯電話等の取扱店を自営。その頃、家庭内に広く普及したパソコンであるが、実際にその機能を使いこなしている人は少ないと感じ、毎月わずかなコストで何回でもサポートを受けられる仕組みを考え、2002年4月当社の前身にあたるパソコンサポートデスクを開設。その後IT講習会を開催した際、参加している中高年の初心者にとっては使いこなせるかどうかわからない高機能の新品パソコンより、3万円程度の中古パソコンの方にニーズはあると考え、試験的に行った新聞広告に大きな反響が返ってきたため、2003年7月当社を設立した。高品質と親身なサポート体制から全国的な支持を受け、設立後1年で約9000台の中古パソコンを販売。もともと粗利の高い商品で高い収益を確保し高額所得法人に。メーンバンクやベンチャーキャピタルの支援を受けながら、早期の株式公開を経営方針として打ち出し、売上アップのため全国のパソコンスクールとのパートナー契約や関連会社の設立によるリース事業など、矢継ぎ早に経営施策を実施。本業である中古パソコン販売についても、テレビ、ラジオ、新聞などメディア戦略で販売数は順調に伸展しており設立来の販売台数は6万台を突破した。

 課題・ヒヤリとした経験

これまでになかった業態のため、手本がない。仕入購入と営業販売、さらにそのプロモーションのバランスをどこで均衡させれば良いかが解らずに紆余曲折が続き、結果として設立当初の販売計画を大きく下回ることになった。既存業種であれば、このマーケットに対し仕入れはこれぐらい、販売はこれぐらい、目標達成のための宣伝費用はこれぐらいという常識的な数字が存在する。しかし、中古パソコンを通販で扱うための数量計画策定は当初全く手探りであったため、手本となるビジネスモデルが存在しなかった。当初は仕入ルートが貧弱であったこともあり、とにかくあるものを売るという行き当たりばったりの姿勢でなんとかなったが、ボリュームが増加するにともなって様々なロスが発生、同時に市場拡大による競争で収益性が悪化するなど不都合が生じた。設立2年目もしくは3年目で年商10億円計上を目指していたが、結果的に足踏み状態が続いたのは、販売量に対して仕入量が不足したり、逆に過剰となったり、プロモーション費用が収益を圧迫するなど不安定な状態が続いたため。思うように事業拡大が進まないことで焦りが生じ、増収を急ぐあまり関連事業への進出を行ったものの、結果的に失敗。不採算事業に資本を投入した結果、多額の負債を抱えることとなった。

 対処と結果

試行錯誤の連続であったが、新マーケットに対する挑戦だからしかたがないと割り切って対応。その時々で最善と思われる計画を立案し、結果を分析して次の計画に活かす地道な作業を繰り返した。ある日突然劇的な好転を示すことはなかったが、結果的にはもっとも効率的な対策であったと思われる。ありがたかったのは、資金面・情報面に加えて細かい事業運営についても親身になってアドバイスしてくれた銀行やベンチャーキャピタルである。徐々にノウハウが蓄積され、精度の高い予測や計画立案が可能となり、さらにマーケットの状況や事業計画に基づいた弾力的な運用ができるようになった。このことが、最近増えている同業者の参入に対して競争力を維持している要因でもある。直近業績は、仕入・営業・宣伝のバランスがとれたことで売上は120億円と急拡大。収益性も大幅改善を見込んでいる。

 原因

(1) 特性

新興市場であるため手本や経営ノウハウを持っていなかった
手本となるビジネスモデルが存在しないため、数量計画策定は当初全く手探りであった。販売量に対して仕入量が不足したり、逆に過剰となったり、プロモーション費用が収益を圧迫するなど不安定な状態に陥ったため、スムーズに成長できない足踏みの状態が続いた。

(2) 要因

計画通り伸びない焦りから、新規事業に乗り出すものの失敗
設立当初の事業計画が楽観過ぎたため、思うように事業拡大が進まないことで焦りが生じ、関連事業への進出などその場しのぎ的な運営を行ったが結果としては失敗、多額の負債を抱えることとなった。

 経営判断の問題点  

設立来の順調な業容拡大から、当初想像以上の成果を上げられたことで楽観的な雰囲気が社内に蔓延したため、急激な市場拡大に応じて見直しが必要であっても事業計画や運営方針は放置した。急激な業容拡大には常に倒産リスクの増加というデメリットがつきまとう。また多くの場合、自分の力で創業を成し遂げた経営者がワンマン経営を行った結果、社内外で付き合う人間がイエスマンばかりとなる。当社の場合、代表者の気さくな人柄が周囲の人間の尽力を引き出し、結果的にかすりキズ程度の損害で食い止めることができたと見られる。

 背景

設立第一期決算で 3億9,900万円を計上。急進する売上に、銀行やベンチャーキャピタルが群がるなど周囲の期待が高まり、早期の売上10億円突破と株式の店頭公開を経営方針に打ち出した。しかしながら、周囲の期待とは裏腹に売上は伸び悩んだ。事業計画で掲げた成長を実現するために、リース事業など、慣れない新規事業に手を広げることとなった。

 得られた教訓

最善最速の手順でノウハウの構築ができたのは、親身になって相談に応じてくれた銀行やベンチャーキャピタルなど親しい取引先のおかげである。本来であれば、経営者自身が気付かなければならないことだが、社内・社外にきちんと意見を言ってくれるアドバイザーがいれば、失敗を回避できたのではないかと考える。具体的には早い段階で社内のコミュニケーション構築と経営企画に関わる人材育成を行い、将来的な事業リスクに対応できる組織作りを目指すべきであった。数量計画の策定が難しいことは充分に予測していたつもりであるが、設立当初の事業計画が楽観過ぎたため、予想以上であった。また、類似・隣接する業界についての研究を行っていれば、違った展開ができたかもしれない。

 後日談

事業計画の遅れはともかく、焦った末の関連事業失敗で予定していなかった負債を抱えたのは手痛いが、新しいマーケットを作るという社会的な役割から考えれば、産みの苦しみと言えるものだ。逆に、窮地に陥ったことで様々に考え、試行錯誤を繰り返したことが現在計画している新しいビジネスのヒントとなったケースもあり、全てが無駄であったとは思っていない。

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学建書院,2016年