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過去、一時は増収傾向を辿るも、価格競争激化から収益性が低下。このような状況下で約1億円の大口焦付債権が発生した。主力行とは従来から保証協会付融資の取引に留まっており、支援体制は消極的で資金繰りが悪化。当時の円安から海外仕入値が上昇、事業運営は窮屈になっていった。工場新設については、賃貸工場の老朽化及び会社資産をふやす目的で行い、賃貸料の範囲内での返済であり、この点で大きな資金圧迫はなかったが、売上不振と価格競争激化による利益率低下に加え、大口焦付が発生し、正常な事業運営が困難となった。
所在地 | 福岡県 |
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業種 | 製造業 |
従業員数 | 18名 |
設立・創業 | 設立:平成8年5月/創業:昭和40年3月 |
事業分野 | その他(家具製造) |
事業概要 | 食器棚、書棚、サイドボードなど棚物家具製造を得意とする。従来に比して販売先数は大幅に減少したが、既存取引先の一部(家具販売店、家具卸業者)と取引を継続。従業員はピーク時の1/4となり、平成19年期売上は約4億円。 |
社長の年齢 | 40歳代 |
創業時の属性 (職業) |
会社員(個人事業主) |
競合の進行から価格競争が激化し収益性が低下するなか、約1億円の大口焦付が発生。この事態に、主力行とは保証強化融資のみの取引で支援に対し消極的で、資金繰り悪化の一因となった。また当時の円安傾向から海外仕入値が上昇、生産工程の見直しで作業効率の向上を図り、抜本的な改善に至らず、民生再生法手続き開始を申し立てた。
昭和40年に先代が創業、小口取引を建前として堅実な事業運営に徹していた。63年頃現代表が事業を継承し、平成8年に法人化した頃から現代表の意向で事業拡大が本格化。当時、地場、県外量販店との取引が増加。会社資産を作る目的で、平成9年には約2億円を投下して実質本社を移転、移転先に工場を建設した。増産体制を整えるため、従業員も従来の35〜36名内外から2倍の約70名に増員。結果として、家具生産量は大幅に増加して年商は以降10億円を越え、ピークの平成14年期は売上高約13億7000万円に達した。
工場新築後、受注増もあって増収傾向にあったが、一方で競合が進み価格競争が激化していった。当社の主力製品の価格帯は5万円前後であったが、主力製品価格帯が10万円前後の地場大手企業が平成11年頃から値下げを開始。製造コストについても、円安傾向に入り、海外からの資材仕入値が徐々に上がっていった。さらに、増員による人件費を中心とする販管費の増加、価格競合の激化による収益性の低下により、次第に事業運営は窮屈になっていった。こうしたなか、焦付も散発的に発生、平成15年には約1億円の大口焦付が発生、資金繰りが悪化することとなった。
生産工程を見直し、作業効率を向上して無駄な時間、経費抑制に努めた。例えば、返品率の減少、不要人員の削減を断行した。現代表の指揮の下、毎月1回全社員を集めて効率化会議を行った。また、資金繰りにおいても、当社がなし得る全ての施策を実施したが、他社との価格競争の更なる進行に加え、製造コストの大幅削減に至らず、平成15年の大口焦付発生後は急速に資金繰りが悪化。平成17年に入っていよいよ資金繰りに困窮し、民生再生法手続き開始を申し立てた。負債総額は約6億6,000万円。平成18年に裁判所の認可を受けた。なお、小口を除く債権者へは債権90%カットの10年分割払いで承認。その後、配当も年に一度実施し、従来に比べて事業は縮小したが、平成19年期は年商約4億円を計上している。
財務基盤の脆弱さ
従業員増加による固定費の増加と、海外からの仕入れ値の上昇もあっていっこうに利益率は改善しなかった。後になって、生産効率を追求したが、固定経費節減には結びつかなかった。
価格競争の激化、大口焦付債権の発生
地場大手企業の低価格帯製品への参入により価格競争が激化するなか、目先の受注に捉われ、利益率が低い受注が多くなり、収益性が悪化した。市場の変化を見誤り、債権管理の甘さもあって大口焦付が発生し、正常な事業運営が困難となった。
現代表の市況判断の失敗が大きい。地場大手企業の値下げ攻勢を読みきれず、価格競争の激化から収益が急速に悪化。従来から財務体質が脆弱なため、会社資産を増やす目的で工場新設も行ったが、それ以前に価格競争と仕入れ単価の上昇に耐えられなくなった。
家具資材は海外からの輸入も多かったが、円安傾向であったためコストが高くついた。長引く景気低迷で、マンション、住宅、家具の買い替え需要が思ったように回復しなかった。これは当社だけでなく、既存取引先の多くが影響を受けていた。こうした状況が続いたため、地場大手同業者が安い価格帯の製品を多く製造するようになり、価格競争が泥沼化していった。
売上を無理に追わず、選別受注を行って利益率優先策を講じるべきで、与信管理も強化し、確実な売掛金回収を行う必要があった。また、金融依存度を低く抑え、資金流動性の維持を心掛けるべきであった。取引先との長年の付き合いから仕入先より必要量以上の仕入れを行うケースもあり、情に流された面もあり資金繰り安定のためこれは行うべきではなかった。着実な資本蓄積が会社経営には必要だと身にしみて分かった。
当然ながら、現在は金融機関から融資は受けられず、現金取引のみとなっているが、売上縮小もあって資金繰りは以前よりやり易くなった。民事再生法申立て時には当社から離れていった仕入先や販売先が多かったが、そうした中でも企業規模の大小に関わらず、当社の身になって取引を継続してもらっている企業があり、取引先との親密な付き合いが重要であることが再認識できた。ここ数ヶ月は月商2,000万円前後の推移だが、配当実施など債権者への対応はどうにか出来ており、身の丈にあった事業運営を心掛けており、地道に当社を再生していきたい。