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技術的に無理な受注で損失を拡大させた経営失敗の実例です。経営不振に悩む経営者の方は、会社の倒産、破産に強い弁護士にご相談下さい。

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25 製造業の経営の失敗(25):技術的に無理な受注での失敗

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、技術的に無理な受注で損失を拡大させた経営失敗の実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 研究開発費の捻出のため技術的に無理な受注で損失拡大

研究開発型企業として、開発費が先行する体質にあり、製品開発費の負担が膨らみ赤字計上が続いていた。次期製品への開発投資も必要となり、その資金を捻出する必要から、資金確保のため、技術的に無理な案件を受注してしまう。技術者からは困難な状況を知らされていたが、資金確保が最優先ゆえ、代表者の独断により受注。結果、多額の損失を被ることとなった。

 企業プロフィール

所在地 秋田県
業種 製造業
従業員数 68名
設立・創業 設立:昭和63年5月/創業:昭和59年1月
事業分野 半導体・電子機器(半導体パッケージ外観検査装置開発製造)
事業概要 長く大手メーカーの下請として稼動してきたが、同社との取引中止から平成8年半導体パッケージ検査装置事業を開始。検査装置用画像処理強化システムを開発販売。業容を順調に拡大し、平成18年に上場。
社長の年齢 30歳代
創業時の属性
(職業)
その他(個人事業主)


会社経営の失敗の詳細


 結論

製品開発に多額の開発費を費やし、赤字計上が続くなか、その後も次期新製品に向けて開発を続けていったため、開発費負担から資金的に苦しくなっていった、資金融和を図るため、技術的に困難な受注にも手を伸ばし、結果として損失を拡大させることとなった。

 設立から成功までの経緯

昭和59年に起業し、昭和63年に法人化した。起業時より、企業を大きく成長させ、メーカーになりたいとの目標があったが、11年間は大手メーカーの下請であった。平成7年にメーカーとの取引が打ち切りとなり、受注の見通しが立たなくなるなか、メーカーとして自立することを決意。平成8年より半導体パッケージ検査装置事業を開始した。その後、検査装置第1号機、第2号機、第3号機等を相次いで開発。業容も順調に拡大基調を辿り、平成18年には上場を果たした。

 トラブル・失敗・課題に至る経緯

平成8年より開発を進めた半導体パッケージ検査装置は4年以上の歳月をかけて平成12年に完成した。しかし、その間、開発費がかさみ、その後も第2号機、3号機と開発を続けていったため、開発費負担から赤字計上が続いて、資金的にも苦しい状況にあった。特に平成13年頃は開発費が増大し、売上も上がらなかったため、状況はさらに悪化した。資金的緩和を図るべく、積極的な受注獲得に走ったため、当時の当社としては技術的に難しい案件を受注してしまう。ユーザーの希望する仕様には至らず、納品が不調に終わり、約8,000万円の損失を計上する事となった。前年に検査装置第1号の開発が完了し、次期主力製品とすべく第2号、3号と開発に取り組んでいたが、開発費がかさんでいたうえ、次期製品の開発費を捻出し、資金を引き出すためには受注を増やすしかなかった。技術的には難しい装置の受注ではあっても社長の判断で進めていった。途中、技術者に相談し、受注先の仕様に沿うことは困難であるとも判ったが、開発費の捻出に走り、無理な受注でも推し進める結果となった。

 対処と結果

技術的な課題があり、製品化がかなり困難な受注に対して、集中して取り組めばユーザーの納得する製品の完成に至ることも出来たが、当時進めていた検査装置第1号機および2号機の開発が止まってしまうため、技術者と相談した結果、無理に受注した製品の開発を断念し、第1号機と2号機の開発に集中することとした。この対処により、平成14年には次期主力製品として開発を続けていた、2号機の開発が完了。以降、このシステムを搭載した検査装置シリーズが販売開始となり、平成15年期には収益も黒字に転じ、その後の業績は順調に進展する結果となった。

 原因

(1) 特性

研究開発型企業として開発費が先行する体質
研究開発型企業として開発費が先行する状況が続き、次期主力となる検査装置の開発を続ける上で資金の捻出は必要であった。資金を引き出すためには受注が必要であり、創業以来の代表者が単独で判断して、資金の捻出を行うべく、無理な受注を得ることとなった。

(2) 要因

開発資金確保のために無理な受注を重ねた
次期主力機器となる検査装置の開発を推し進めるには資金が必要であった。技術者に相談すれば受注した製品の開発は困難であるとの状況であったが、資金の捻出を先行して受注に走り、結果的にはユーザーの希望する仕様には至らず、多額の損失を被ることとなった。

 経営判断の問題点

非常に危険な判断を一人だけで下したこと。トップの判断が良い時もあれば、悪い時もある。会社の規模が小さく、トップが決めれば、従業員は黙って従う体制にあった。様々なリスクがあり、トップがバランス良く考えなくてはならなかった。技術的な面から見るとハードルが高かったが、資金確保を優先事項として、技術と資金のバランスを考慮せず、トップの判断で資金的な部分に走ってしまった。

 背景

社会、経済、政治的背景などの世の中の状況は、失敗の背景には全然関わりはなかった。会社単独での課題であり、トップ一人の判断で資金的な問題を解決すべく、無理な受注獲得を推し進めた結果であり、遠因が世の中の状況から経営に及ぼすという事はなかった。

 得られた教訓

トップ一人で全部判れば良いのであるが、技術的な部分等、不明な点が多いものである。技術的な部分であれば、技術部門の人間で、精通した人物に相談し、その後、総合的な判断をして、結論を出す体制であれば、このようなトラブルが発生する事はなかった。結果的には無理に受注した製品の開発を断念し、開発に集中し、完了させたことで、進展に繋がったが、会社自ら窮地に追い込んだ責任は判断を下したトップにある。

 後日談

資金的に一番苦しい時期を乗り越えて、平成14年には検査装置第2号機の開発が完了、その後の進展に繋がり、平成18年には証券取引市場に上場を果たした。開発を続ける各種検査装置はバージョンアップも着実に進み、上場と前後して経営責任も更に大きくなり、より緻密で的確な判断が要求されている。北京オリンピックを控え、薄型テレビを始めとするデジタル家電の需要が高まる時期にあたっており、業界全体の向上が見込まれ、更なる飛躍を誓っている。


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