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26 製造業の経営の失敗(26):ニーズのない商品開発の失敗

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、ニーズのない商品を開発した経営失敗の実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 提案を受け開発するも商品のニーズがなく失敗

バイオ関連装置の提案を受けて開発に取り組んだが、後になって全く売れない商品であることがわかった。正式な契約を結ばなかったため、当社がすべての負債を背負う事態となった。もともと受身の開発姿勢があり、市場調査を自ら行わなかったため、必要とされている装置であるとの提案を盲目的に受け入れてしまった。最終的な責任の所在を決めずに開発を進めていたため、資金投下した1億円の回収は断念せざるを得なかった。

 企業プロフィール

所在地 兵庫県
業種 製造業
従業員数 82名(内臨時10名)
設立・創業 設立:昭和62年10月/創業:昭和62年10月
事業分野 自動化機械
事業概要 昭和62年10月、ニット編機や航空機エンジンの部品における加工・製造を手掛けるメーカーの特機部門を独立させる形で設立。メカトロ技術をベースに、自動化装置、検査装置、溶接装置、充填装置などの開発・製造を手掛ける。複数の国立大学と提携し、技術開発に取り組んでいる。
社長の年齢 29歳以下
創業時の属性
(職業)
会社勤務


会社経営の失敗の詳細


 結論

クライアントからの製品化の提案を受けて開発したが、実際に営業活動を進めてみると、ニーズなど存在せず商品化できないことが判明した。正式な契約を結ばす、開発の最終的な責任の所在を決めずに開発を進めていたため、すべての負債を負うという結果になった。

 設立から成功までの経緯

昭和56年ごろには、特機部門を立ち上げ、本格的に進出を始めると、昭和62年10月、特機部門を分社させる形で当社を設立し、代表取締役に就任。親会社が当社を分社化するまでに培ってきた技術力に加え、当社が属している電池業界が安定的な受注が望める環境下にあり、親会社の信用背景もあって比較的順調に成長を遂げてきた。現在では2つの工場とコアビジネス開発部を持ち、絶えず順調な伸びとはいかないまでも、堅調な業績を推移し、採算性も不安のない内容を形成するに至っている。

 課題・ヒヤリとした経験

平成15年から2年間、知人から紹介された某機関からの提案でバイオ関連の装置開発に取り組んだ。大学において研究に必要な装置であり、他の研究室でも必要な装置であるとの提案であった。ニーズがあり、自社商品として商品化する価値があるとの認識で1億円を投下して開発を進めた。しかし、実際にサンプルが出来上がって営業活動を進めてみると、ニーズなど存在せず商品化できないことがわかった。提案側と正式な契約を結んでいなかったため、資金の回収もできなかった。

 対処と結果

提案側は何も被害を受けず、当社がすべての負債を負うというという結果になり、裁判問題にも発展しかねない状況にあったが、事を大事にするのは誰しもが望むところではなく、現状を受け入れた。しかし、正式な契約を結ばすに開発を進めたり、最終的な責任の所在を決めずに開発を進め、結果的に資金回収が不可能になったケースはこれで2回目であったので、これを教訓にすると決め、以後、契約には細心の注意をはらうようになった。

 原因

(1) 特性

主体性を持たない受身の営業・開発姿勢
積極的な営業展開は行わずに、クライアントからの委託や依頼を受けてから開発を行うかどうか検討し、採算性を踏まえての研究・開発という運びとなることが多い。そのため、得意・不得意分野を問わずに受託してしまうこともある。

(2) 要因

市場分析が足りないうえ、必要な契約を交わさなかった
自社商品として開発するにもかかわらず、市場調査や将来性など、全て提案してきたクライアントに依存してしまった。正式な契約を結んでいなかったため、負債は全て当社が背負うことになった。また、商品の性格が自社が得意とする分野でなかったことも要因である。製作をするにあたり、商品の知識が乏しく、実効性についても無知であった。

 経営判断

受け身の姿勢に徹していたことが最大の戦略ミスであった。提案を受けて自社の商品として売り出す以上は、自社としても市場の動向を調査する必要があり、商品の将来性についてもよく検討する必要があった。よかれと思った提案であったとしても、自社の損益に直結する以上は、自社の技術レベルと先方の提案の内容、採算性などを踏まえた上での開発を行うべきであり、完全に受身で、更には得意ではない分野での冒険は事前準備が必要であった。

 背景

バイオ技術の発展は目覚しいが、研究用具のレベルや使用者のニーズも移ろいやすい。当時は研究者側からすれば、当該商品へのニーズもあると思われており、当社もそう信じていたが、現実には研究者の認識と現在のバイオ技術を取り巻く環境のズレがあった。当社にとって得意分野ではなかったうえに、市場調査を怠ったことから、結果的には市場のニーズと相容れず、開発した商品をほとんど活用させることができずに終わってしまったといえる。

 得られた教訓

受身の姿勢で構えず、当社からもアプローチをするなり、主体的な戦略やリスク管理が必要であった。自社の商品として売り出す以上、しっかりとした市場調査を行い、市場の動向を見極めていれば避けることが出来た可能性が高い。また、大学側からの提案を受けて開発を行ったが、正式な契約を結ばないままに開発を進めてしまった。以前、契約事項のミスで同じような失敗をしており、そのときの失敗を生かすことができず、再度同じ失敗をしてしまった。以前の失敗を教訓として心得ておけば、もう少し慎重になりえた。正式な契約なしでの事業の推進は責任の所在がはっきりしない。経営を行ううえではリスクの分散化を図ることが重要である。しっかりした契約事項を結ぶことと、契約を遵守していく姿勢もリスク管理につながる。そして、以前の失敗を教訓とすることも重要である。

 後日談

今回のケースで2回目の失敗であったので、これを教訓にすると決め、以後、契約には細心の注意をはらうようになった。契約事項に関しては最後まで詰めてからしっかりとしたものを結ぶとともに、パートナーの選択にも以前の教訓を踏まえた選択を行っており、結果として堅実な経営体質に一歩近づいた。
当社は誰の目から見ても優良企業であり、ベンチャー企業としてモデル的な成功例であろう。設立後20年弱であるが、親会社と相互に競い合い、磨き合って成長してきた。業績は絶えず順風満風とまではいかないものの、企業としては珍しく、経営が傾くような大きな事件を経験したことがない。しかし、周囲からは、失敗を克服したことのない企業は成長しないと指摘を受けており、大きな失敗を経験していないことを逆に心配されているとのことである。


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