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画像処理装置への注目が集まるなか、早期の新事業部門の立ち上げを図ったが、予想以上に立ち上げに時間がかかり、開発コストなどの先行投資がかさみ赤字に転落。先行投資に起因する損益悪化の認識が甘く、期間損益の欠損に対して対行信用が低下し、一時的に資金繰りに影響が出る事態となった。
所在地 | ― |
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業種 | 製造業 |
従業員数 | 55名 |
設立・創業 | 設立:平成10年12月/創業:平成10年12月 |
事業分野 | 半導体・電子機器 |
事業概要 | 独自の画像処理開発装置で注目を集めており、企画、開発から量産、保証、販売まで全てをサポートする一貫体制が特色。ハードフェア技術、ソフトウェア技術に加え、光学技術や解析アルゴリズムを含むアプリケーション技術についても万遍無い知識と経験を有している点が大きな強みで着実に実績を伸ばしており、株式公開も視野に入れている。 |
社長の年齢 | 40歳代 |
創業時の属性 (職業) |
会社勤務(中途退社) |
他社からスタッフを引き継いで、新しい事業部を立ち上げたが、予想以上に立上げに時間がかかり、業績悪化を招いてしまった。立上げの遅れによって先行投資がかさみ、期間損益の欠損が発生。これに対して一部金融機関の取り組み姿勢が慎重になり、一時的に窮屈な資金繰りを余儀なくされる事態となった。
代表者は前職にて画像処理事業に従事していたが、会社の方針で別業務に取り組まざるを得ない環境となり、画像処理事業に注力したい気持ちが大きかったため、画像処理技術の市場性に注目した代表者、他3名で独立し起業した。平成10年12月の設立以降、汎用画像処理装置、画像処理を駆使したFAシステムなど、開発力、技術力を生かして新製品を漸次投入することで事業規模を拡大していった。人の目に代わる画像処理技術を駆使した当社製品は物作りの現場において注目を浴び受注は徐々に拡大していった。資金面もベンチャーキャピタル、金融機関の支援で支障なく調達されており、株式公開に向けた取り組みが具体化しつつある。
従来から興味のあったシステム事業を展開するため、他社からスタッフ8名を引き継いでシステム事業部を立ち上げた。しかし、事業部の立ち上げ準備や開発期間に時間がかかり、先行経費負担が膨らんだ。半導体不況も重なって業績悪化を招き、赤字決算に転落することとなる。期間損益の欠損に対して一部金融機関は取引姿勢を変え、一時的に窮屈な資金繰りを強いられることとなった。
長期的なスパンでは社業拡大には不可欠と割り切り、資金面は新たな支援行を獲得すると同時にベンチャーキャピタル等、エクイティーファイナンスによる資金力拡充に努めた。業績の悪化時においては、開発からセールスまでに期間の掛る自社開発商品に平行して短期間で収益に結びつくソフト開発を請け負って厳しい時期を乗りきった。システム事業部の立上げ後、時期は予定よりは遅れたものの、投資に見合った収益確保が可能なまでに成長しており、現在は主力事業部門に位置づけられつつある。
資金調達力の脆弱性
事業拡大に当たっては間接金融に加えて直接金融の重要性も認識していたが、当時は資金調達力が決して満足とは言えず、一時的な環境変化による業績悪化が資金調達力の喪失に結び付きかねない危険性を孕んでいた。
予想に反した新事業部立上げの遅れ、金融機関の対応
収益をあげるものとして期待したシステム事業部の立上げであったが、予想に反してなかなか収益には結び付かず、開発コストの先行経費が収益を圧迫する事態を招き、結果として赤字転落に陥り、一時的な対行信用の低下を招いてしまった。
事業成長の場面に於いては借入金、社債等の間接金融に加えて直接金融でのエクイティーファイナンスが不可欠と考えている。現時点でこそベンチャーキャピタルの資本参加で潤沢な事業資金を確保しているが、当時は期間損益悪化による信用変化で資金調達力に変化が生ずるとは深刻には考えていなかった。また、将来的には収益の柱に結び付く事業部門の新設とは言え、立上げ時期の遅れ、先行投資に起因する損益悪化の認識が甘かったと考えられる。
画像処理装置への注目が集まる環境下で、同事業部門立上げの時期を逸する事はビジネスチャンスを喪失しかねないと判断、他社からスタッフを引き継ぐ事でスピーディなスタートアップを狙った。
事業部の立上げに関しては事業スタートの時期を見誤らず、先行投資に起因する収益面への影響、対行与信の変化の可能性をいち早く認識する事で資金調達面の強化に向けた早期の行動が取れたものと判断される。業績悪化の際には、自社開発商品に捉われずに短期間で収益確保が可能なソフトフェア開発の請負も手掛ける方針に切り替えた事で厳しい時期を乗り越えており、その政策は成功であったと考える。こうした経験から適時に方針を転換してでも最良の策が打てる代表者の判断の柔軟性が必要であると感じた。
システム事業部門の立上げの遅れが主因で赤字決算を強いられるたが、翌年は同事業部門は収益を挙げるまでに成長、工場の自動化、省力化の必要性も追い風で受注は漸増傾向を辿って大幅な増収、黒字転化を果たした。
本年度もベンチャーキャピタルの資本参加、金融機関の支援拡大で資金力は強化され、年商は10億円を突破するとともに、収益拡大も確実である。
株式公開への意欲は強く、既に公開に向けた具体的な行動が進められる段階にまで成長を遂げ、更なる成長性が期待される。