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特殊技術を世界で初めて導入した金型であるため、参考にできる前例等の知識が乏しく、手探りの状態でスタートせざるを得なかった。マーケットの絞込みが出来ず、対応可能な分野、不可能な領域の判断もできない中で、ユーザーからの全てのニーズに対応しようとし過ぎたため、技術的に不可能な領域にまで手を出してしまった。
所在地 | 広島県 |
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業種 | 製造業 |
従業員数 | 8名 |
設立・創業 | 設立:平成13年4月/創業:平成13年4月 |
事業分野 | その他(一般金型製造、特殊金型開発・製造) |
事業概要 | 近年は大手クライアントからの受注を中心に業績を伸ばし、特許を有する特殊金型についても大手関連へのアプローチを図っている。まだ認知度は低いものの、徐々に実績が増加、売上高は順調に伸展している。 |
社長の年齢 | 60歳以上 |
創業時の属性 (職業) |
会社員(会社役員) |
技術の特殊性ゆえターゲットの絞り込みが十分にできず、発生しうるトラブルや課題について想定することも難しい中で、ユーザーのニーズ全てに対応しようとしたため、技術的に対応不可能な領域にまで手を広げてしまった。
某自動車メーカー関連会社の代表取締役社長時代に特殊金型の開発に着手、試作等を進めた。平成12年に親会社がこの関連会社を売却したのを機に退職、この特殊金型に関する特許を譲り受け、平成13年当社を設立した。金型という成熟した分野で、従来なかった技術を世界で初めて導入。オートバイの燃料タンク用プレス金型からスタートして某自動車メーカーからテスト金型を受注、次にハイサイクル樹脂成型用金型の開発を手掛け、射出成型用金型にも適用、平成14年度科学技術振興機構の委託企業にも認定された。その後も公的機関の補助金制度の活用や投資会社からの出資による資金調達により研究・開発を進めている。この金型技術への認知度はまだ低く、現状では除々にこの特殊金型の実績を重ねている段階である。
当初、特殊金型をPRするためのアプローチ方法が良く分からず、ターゲットの絞り込みも十分ではなかった。当社の技術は、世界初の試みのため、活用できる領域、範囲等、様々な検証を全て終えてからスタートする訳にはいかない。事前にトラブルや課題を想定することが困難であった。品質や納期、活用可能範囲等、ユーザーの求めるニーズと当社の技術レベルのギャップが大きく、これを埋めていくことに苦労した。こうした手探り状態の中で、ユーザーニーズ全てに対応しようとしてしまった結果、浴槽用金型等、技術的に不可能な領域にまで手を出してしまったこともある。
営業先は大手企業に絞ってアプローチし、試作等の受注へと繋げた。顧客ニーズとのギャップを埋めるために、丹念に検証しながら、課題やトラブルと向き合い、特殊金型技術の対応可能な分野、不可能な領域の確定も進めていった。結果的にはユーザーニーズを探る絶好の機会となり、ギャップを埋めていく中で、試作を経て本格的な取引に繋がったケースが出てきている。また、ノウハウが蓄積され、今後の事業展開に重要な情報が得られることとなった。
特殊技術を有するが故の手探りでのマーケティング
特殊技術を世界で初めて導入した金型であるため、参考にできる前例等に乏しく、手探りの状態でスタートせざるを得なかったため、どの顧客にターゲットを絞るべきかわからなかった。引き合いを受け、その都度、対応していくしかない状況であった。
ユーザーからの多様な要求の全てに対応
応用できる範囲を絞り込むのに、参考にできる前例がなく、対応可能な分野、不可能な領域の判断ができない中で、ユーザーからの全てのニーズに対応しようとし過ぎた。
どういったリスク、問題が出てくるかについて、事前の想定や認識に多少の甘さがあった。ただ、まだまだ途上段階という状況では、困難な業務を受注するなどのトラブルはあったものの、経営判断に問題点があったとはいえない。むしろ、世界初の試みであるが故の、成功に向けて進んでいくための必要なプロセスであったともいえる。こうしたノウハウの蓄積は、先々の経営判断には有効なものになるであろう。
金型の世界では、景気低迷を背景に発注者からのコストダウン要請が強まっている。さらに、品質を維持しながら納期短縮を求める姿勢が強く、特に大手からの要求度は高く、金型事業者にとっては厳しい状況が続いている。
参考にできる前例が乏しく、引き合いの都度、方策等を考えていく対処法を取らざるを得なかった面が多いため、トラブルの全てを回避することはできなかったであろう。ある種、実験的な要素が強く、様々な課題に直面したことで今後に活用できる知見を数多く得たと考えている。改めて強調するほどのことではないが、一つ一つを丹念にクリアしていくと共に、同じ失敗を繰り返さないよう、社内でこうした情報の管理や周知徹底等を含め、ノウハウを蓄積していくことが将来の財産である。ただし、いくらユーザーからのニーズとは言え、何にでも手を出すことはリスクが高く、資金や人材等、社内の体制等も考慮して見極めていくことも重要である。
まだまだまだこれからという段階だが、対応する技術については得手、不得手な分野、領域が明確になりつつあり、大手関連企業へのアプローチ等により、少しずつ認知度も高まり実績も増えている。これまでは致命的というほどのトラブルはなかったが、せっかく蓄積してきたノウハウをうまく活用していかないと、失敗ともなり得る。今後は、企業を存続させていくためのベースを構築するため、後継者育成を含め、意欲的に取り組んでいく。