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中国合弁企業の製品管理に不備があり、自社製品に賞味期限切れの調味料の使用が発覚した。人的なものを含めた供給体制の確立が遅れ、取引先からも納期厳守に追われていたため、海外における品質管理、生産管理にまで十分目が行き届いていなかったことが招いた失敗。
所在地 | 岡山県 |
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業種 | 製造業 |
従業員数 | 31名 |
設立・創業 | 設立:平成12年8月/創業:平成12年8月 |
事業分野 | その他(乾燥食品製造) |
事業概要 | 特殊技術によりインスタント食品の具材、スナック菓子、珍味などを製造。OEM生産を行なう。積極的な商品開発、市場開拓によって事業規模を拡大し、中国での生産本格化によって直前期年商は16億円台にまで成長している。 |
社長の年齢 | 50歳代 |
創業時の属性 (職業) |
会社員(スピンオフ) |
中国合弁企業の製品管理ミスから、自社製品に賞味期限切れの調味料の使用が発覚。大手得意先から納期厳守を指示され、これに追われていたため、品質管理体制等に甘さが出て、製品約37万個の自主回収を余儀なくされた。
前勤務先で食品事業部長を務めていたが、所属企業が実質破綻状態に陥り、事業分割となった。これを機に平成12年に同僚とともに当社を設立、代表取締役社長に就任、前所属企業の食品事業部を買収して今日に至る。前職時代の主要得意先と取引が継続でき、メインバンクも工場買収資金を融資してくれたため、経営基盤がスムーズに整い、1期目の決算で年商4億8,000万円を上げた。生産能力の高さを最大の武器に、前勤務先では消極的だった商品開発に注力、大手食品メーカーとの取引も増えた。その後、中国企業へ生産委託を開始。当初は半製品を輸入していたが、中国に合弁企業を設立し生産を強化、完成品まで製造できるほど生産体制が充実し、業績向上に寄与した。
新規得意先からの契約が増え、生産に追われるようになってきたことから、中国で合弁企業を設立し、当地で生産することとした。資本金と運転資金で計2億円の融資をメインバンクに要請、内諾を受けていたが、中小企業の海外工場設立に関してはリスクが高すぎるとの理由から、設立直前になって融資の実行が中止となった。当社の運転資金を中国の合弁企業に振り分けてしばらくは凌ぎ、なんとか稼動にごぎつきたものの、平成19年に合弁会社で製造した製品に使用期限の過ぎた調味料が使用されていたことが判明、約37万個が自主回収となった。中国合弁企業の管理が行き届かなかったことから起きたミスであった。
製品に使用期限の過ぎた調味料が使用されていたことが発覚した後、平成19年8月中旬に自主回収を完了させた。国内、海外ともに品質管理体制を強化、特に海外については管理責任者の権限を強め、管理の範囲も拡げることで当面は対応、販売会社からも常駐の管理者にチェックさせることとした。品質管理対策の結果に関しては、現状、対策を施したばかりで、今後、結果が問われることになる。
品質管理体制の未整備
品質管理については、これまでクレームの発生はあったが、その都度、品質管理体制を強化して改善を行なってきた。しかし、人材不足で管理者に適した人材がおらず、育成するにも時間が足りなかった。また、外部より人材を登用しようとすれば相当なコストがかかり、躊躇したところもある。
納期厳守に追われ、海外の品質管理に目が届かなかった
食品メーカーの不祥事が増え、品質規格が厳格化、得意先からの要請も年々シビアとなっていた。それでも国内工場はその都度、問題事項の改善にあって大事に至らなかった。得意先からは、さらにシビアな納期厳守を指示され、これに対応するためスピード化を図ったが、結果、海外の製造現場における品質管理までには完全に目が行き届かなくなった。
前身企業の経営不振を教訓に商品開発や市場開発に注力したことで、新規の得意先や契約が増え、売上は拡大したが、大手得意先からは納期厳守を指示され、これにやや追われることになっていた面はある。人的なものを含めた供給体制の確立が遅れ、品質管理、生産管理に問題が生じることとなった。
食品メーカーの不祥事が増え、食の安心、安全についての意識が強まり、管理基準も厳しくなっている。大手食品メーカーと取引をしているが、取引先からの管理面での要望は年々シビアになり、当社の経営規模からすると人的、資金的にはやや厳しいものとなっている。
国内同様、海外工場にもしっかりとしたマニュアルを作成し、それが厳守できているかどうかチェックできる体制づくり、管理者の養成などが足りなかった。食品メーカーを続ける以上、安心、安全を追求する姿勢は一時的なもので終わっては駄目であり、システムとして定着させることは勿論のこと、社員一人一人の意識や企業文化として永久に継続されるべきものであり、今後の最大の経営課題と認識している。
当社の様な中小企業には当然ながら資金的な問題は付きまとう。自社商品による営業展開は将来の目標であるが、在庫負担や営業拠点の開設などリスクは多い。そのため、大手食品関係のOEM生産を行なっているわけだが、製品の共同開発中に突然契約を中止され、そのアイデアを持ち去られたこともあった。現状、資金面は問題なく推移しており、この間に再度、品質管理や生産管理を見直し、強みである生産能力や商品開発、市場開発能力を生かし、安定、安心、安全な企業として関係筋より認知される企業に成長したい。