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取引先の規格変更の需要予測を誤り経営危機に陥った実例です。経営不振に悩む経営者の方は、会社の倒産、破産に強い弁護士にご相談下さい。

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14 製造業の経営の失敗(14):突然の規格変更と需要予測の誤り

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、取引先の規格変更に対する需要予測を誤り経営危機に陥った実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 取引先の規格変更に対する需要予測を誤り経営危機に

取引先から規格変更等の発注仕様の変更が頻繁に起き、通知も遅いため対応に苦慮している。独自に需要予測は行なっており変更の時期はある程度は予見できるものの、予想以上のスピードで転換が行なわれた場合、仕入業者が把握するのは困難である。また、取引実績が少ない時期は金融機関の対応も厳しく、資金調達にも苦労した。さらにベンチャー企業ゆえに人材が集まらず、人材の確保にも苦労した。

 企業プロフィール

所在地 広島県
業種 製造業
従業員数 15名
設立・創業 設立:平成11年9月/創業:平成11年9月
事業分野 その他
事業概要 マシニングセンター等の切削工具の再研磨加工業者で、最近では、切削ミル等の製造に注力して、再研磨加工比率を上回っている。大手商社や自動車部品メーカーの紹介で取引先は拡大している。
社長の年齢 30歳代
創業時の属性
(職業)
会社勤務(中途退社)


会社経営の失敗の詳細


 結論

設立当初は、従業員の確保と設備面の資金調達が課題であったが、最近では、主要取引先の突然の規格変更により受注環境が大きく変化する問題が発生している。

 設立から成功までの経緯

機械販売・修理、研磨、営業を一通り経験した代表者が、自身考案のビジネスモデルと経営ビジョンを展開するため、切削工具の再研磨加工を中心として当社を設立した。設立当初は再研磨が主体で、設備・人員にも限界があったが、製品の売上も伸長したため、本社移転や設備増強を図って売上を拡大させていった。工作機械需要の伸展を背景に、既存取引先のシェアアップと新規販売先の開拓を進め、事業の伸長が続いている。

 課題・ヒヤリとした経験 

取引実績が少ない頃は、貸し渋りの時期とも重なり、金融機関の対応も厳しく、資金調達もスムーズに進まなかった。さらに、ベンチャー企業ゆえの知名度の低さから、人材が集まらず、人材確保に苦労するなど、厳しい経営環境が続いた。また、現在は主要取引先からの規格や発注仕様の変更が頻繁に発生するという問題が起きている。しかも、当社などの外部委託業者への通知が遅い。当社のような仕入業者は把握が困難なため、対応に苦慮している。

 対処と結果

主要取引先の規格や発注仕様の変化には、数段の防御手段を講じ、需要減少に対して、常にその補完ができるように営業体制の整備を進め、外注先も有効利用した。その結果、主力先の取引が短期的に減少しても、それに代わる新規開拓や既存取引先の受注増加で増収を維持している。金融機関への対策としては、経営状況の開示を含めて情報交換を綿密に行った結果、常に危機意識を持ち続けてきた姿勢が金融機関にも認められ、収益確保により財務内容も良化していることもあり、資金調達は以前よりは容易となりつつある。
人事面としては依然として人材確保には苦労しているが、従業員にとって楽しく、生き甲斐を感じ、風通しの良い職場環境の構築に努力し、定着率向上に努めた結果、アイデア集約やモチベーションアップに繋がった。

 原因

(1) 特性

人員体制が未整備のため十分な情報収集が困難
ベンチャー企業ゆえに人材確保が難しく、十分な営業体制を整備できないことから、情報の収集にも限界があった。情報収集不足により、取引先と当社のマーケティング戦略にズレが生じることとなった。

(2) 要因

予測できない取引先の突然の規格変更が頻発
情報収集とマーケティングを行って規格変更への対応を進めてきたが、需要予測と共に転換時期についてはある程度予見できていたが、予想以上のスピードで転換が行われ、対応が困難となった。

 経営判断

常に原因分析・情報共有化によりミスを軽減し、品質面も評価され、受注を確保。大きなクレームの発生は無く、既往業績も順調に拡大してきたため、やや楽観視していた部分もあるが、規格変更などを予め想定して対応を図るべきであった。

 背景

取引実績の少なかった平成12〜15年は、金融機関の貸し渋りの時期とも重なり、計画していた設備投資ができなった時期もあった。

 得られた教訓

需要予測については常にリスクヘッジをしていく必要性を感じている。設備投資のタイミングと共に同時並行で幾重にもヘッジすることが肝要である。また、情報収集については、常にアンテナを張り巡らして、情報収集しやすい環境作りに努めることが必要である。危機意識を維持継続すると共に、日々の勉強、情報収集の必要性は常に意識している。仕入先を第二のお客様ととらえ、従業員を第三のお客様と位置づけている。各取引先、金融機関との連携を取ると共に、従業員のモチベーションアップを図っている。

 後日談

経営者は常に危機意識を持ち続けると共に、危機的状況になれば、社長自らがリーダーシップを発揮する必要性がある。但し、いわゆるワンマン経営でなく、従業員・取引先との連携を常に意識することを肝に銘じている。


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書籍:歯科医院の事業承継とM&A

学建書院,2016年