M&A・事業承継に強い、弁護士の鈴木陽介です。
個人事業の引継ぎにお悩みの個人事業主の方は、サンベル法律事務所にご相談下さい。事業の引継ぎ、承継には、M&A、事業承継に強い弁護士を関与させるべきです。
弁護士鈴木が力を入れているM&A・事業承継のコラムです。
M&Aと個人事業主の事業承継をご説明します。内容は、中小企業庁の公表資料「
経営者のための事業承継マニュアル(平成29年3月,中小企業庁)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜編集等しています。
T M&A(社外への引継ぎ)
1 M&A(社外への引継ぎ)の目的
社外の第三者への譲渡による事業存続を目指す
後継者が親族内、あるいは社内の役員・従業員にいない場合は、社外の第三者への引継ぎ(M&A等)による事業存続の道があります。これまでM&Aに対しては、かつては「身売り」「マネーゲーム」といったマイナスイメージがありましたが、近年では、M&Aによる事業の維持、譲受け先の事業との融合による飛躍などプラス面が注目され、事業承継の一つの在り方として認知されています。
2 M&Aの準備
企業価値を高めて有利な条件で譲渡する
M&Aで事業を引き継ぐための準備の一つに「磨き上げ」があります。磨き上げは、事業の競争力向上や内部統制の構築など、企業価値を高める取組のことです。企業価値を高めることで、より良い譲受け先が見つかる可能性や、譲渡価格が上がる可能性が高まります。
3 M&Aの代表的な手法
株式譲渡と事業譲渡によるM&Aが一般的
中小企業のM&Aは、株式譲渡(自社株式を他の会社や個人に譲渡)と事業譲渡(会社・個人事業主の事業を他の会社や個人事業主に譲渡)のいずれかで行われることが一般的です。
M&Aは、専門的なノウハウが必要とされます。そのため、一般に専門の民間業者、金融機関、士業等専門家などのサポートを受けながら進めます。
なお、中小企業のM&Aの仲介を専門に取り扱う民間の会社がありますが、得意分野や業務の範囲、報酬体系などがそれぞれ異なります。事業承継のセミナーに参加したり、顧問税理士などに相談したりしながら自社にあった仲介機関を選定しましょう。
【M&Aで用いられる手法】
株式を第三者に譲渡する
株主が譲受け先の会社や個人に変わるのみで、従業員、取引先・金融機関との関係は変化しない。事業承継後も円滑に事 業を継続しやすい半面、簿外債務や経営者が認識していない債務等も承継される。
事業全体を譲渡する
個別の資産ではなく、設備、知的財産権、顧客など、事業に必要なものを譲渡する。譲渡資産を特定するので、譲受け先は簿外債務等を承継するリスクが少ない。個人事業主が起業家に承継するケース(個人への引継ぎ)でもよく行われている。
特定の事業を譲渡する
譲渡の対象資産が選別される。譲受け先を見つけやすい事業・資産を譲渡したり、手元に残したい事業を選別することができ、柔軟性の高いM&Aが可能。ただし、事業全体の承継が完了するわけではない。
譲渡の条件を明確にする
M&Aでは、どのような手法、内容で事業を譲渡したいのか、経営者自身が考えを明確にしておく必要があります。その上で、希望に適った事業の譲受け先を探すことになります。
【M&Aのマッチングに向けた流れ】
1 仲介者・アドバイザーの選定
M&Aを仲介する業者の選定は、過去の実績や利用者の声などを事前に十分に調査して信頼できる仲介機関を探すことが重要です。
2 契約締結
M&Aを実施する際は、情報の漏洩がないよう、秘密厳守が大切です。取引先等の第三者に対してはもちろん、社内の役員・従業員に対しても知らせる時期・内容は十分に注意しましょう。
3 事業評価
一般に中小企業の企業価値の算定は、時価純資産にのれん代(年間利益に一定年数分を乗じたもの)を加味した評価方法等が多く用いられています。
4 交渉
交渉では、@譲渡価格、A今後の事業展開や経営方針、B従業員の待遇などについて、納得する妥協点を見つけていきます。
5 譲り受け企業の選定
6 基本合意書の締結
7 デューデリジェンス
デューデリジェンスとは、譲渡する側の企業の価値の調査を譲り受ける側の企業が行うことです。財務・法務・不動産・事業の資料などが、基本合意の内容と合っているか確認します。
8 最終契約締結
9 クロージング
譲受け先とのシナジー効果を発揮できる事業発展のチャンス
M&Aでは、その実行を最終目的とするのではなく、M&A後の譲受け先の会社との経営統合をいかに円滑に進め、統合の効果を最大化するかという視点が重要です。
譲渡側の経営者がM&A後に新会社に残るメリット
自社の強みや知的資産を譲受け先が確実に承継し、活用していくためにはM&Aを行った双方の合意のもとに、譲渡側企業の旧経営者が一定期間、顧問などとして会社に残ることも有効です。
4 企業価値の算定方法
M&Aでの会社の企業価値は、最終的には譲受け先との交渉を経て合意に至った価格ですが、@資産・負債の状況、A収益やキャッシュフローの状況、B市場相場の状況などが企業価値を算定する目安となります。
一般に中小企業のM&Aの場合は、時価純資産にのれん代(年間利益に一定年数分を乗じたもの)を加味した評価方法が用いられることが多くなっています。
純資産価額とのれん代による企業評価の算定事例
時価純資産+のれん代=企業価値
評価算定の結果と実際の譲渡価格は別
企業価値は、業種や事業規模、競合相手の有無、市場の成長性といった要因も算定に加味されます。そして、実際の譲渡価格は、譲受け先の資産状況、M&Aに対する緊急度などにも左右されるので、企業価値の評価の結果は、あくまでも目安の一つと考えておく必要があります。
5 相談先(国のM&A支援機関)の紹介
国のM&A支援機関「事業引継ぎ支援センタ―」
M&Aの相談先として、国の運営する「事業引継ぎ支援センター」が全国47都道府県に設置されており、社外への引継ぎに関する窓口相談、マッチング支援などの事業を行っています。
窓口では事業引継ぎに精通した専門家が秘密厳守のうえで相談対応を行っています。
<相談事例>
●後継者がいないため、廃業するしかないのでしょうか。従業員の生活も守らなければいけないし、何か良い方法はないでしょうか。
●会社を譲渡したいが、どのように進めていけばよいでしょうか。
●知り合いが引き継いでくれると言っています。どんな手続きが必要なのでしょうか。
●会社を買収したいが、どのように取り組めばよいでしょうか。
U 個人事業主の事業承継
1 個人事業主の事業承継の課題
取引先との関係をどう維持していくかが事業継続のカギ
個人事業の事業承継に係る課題として、「取引先や顧客との関係をいかに維持するか」ということがあります。取引先や顧客は、事業主との個人契約によってつながっているので、事業主が死亡した場合、取引先などは「もはや誰のお客さんでもない」という状況が発生します。経営者の生前に後継者を決めておく、取引先・顧客にも紹介しておくといった対策が重要です。
事業承継に伴い改めて提出が必要な届出も
相続により事業承継した後継者が、引き続き所得税の青色申告制度や消費税の簡易課税制度の適用を受けたい場合は、税務署に改めて申請書などを提出します。
【個人事業主の事業承継「3つの要素」と留意点】
人(経営)の承継
早期に親族内の後継者を確保することが重要。後継者候補が「事業を承継したい」と思えるような経営状態を確保することが不可欠。
資産の承継
事業用資産の分散は事業運営に支障をきたすケースが多い。生前贈与による早期の承継、遺言等の適切な活用が望まれる。
知的資産の承継
事業遂行に必要な許認可等を後継者が取得し直したり、取引先等との関係を引き継いだりする必要がある。
後継者人材バンクによるマッチングサポート
後継者人材バンクでは、後継者不在の事業者と創業を志す個人起業家をマッチングし、店舗や機械装置等の引継ぎをサポートします。
個人事業の引継ぎ、M&Aに臨む個人事業主の方は、お電話下さい。事業承継・M&Aに強い弁護士が具体的にアドバイスします。なお歯科医師の方は歯科医院の事業承継とM&A、歯科医院の居抜きのコラムもご覧下さい。
事業承継・M&Aのコラム
中小企業庁の事業承継マニュアルに基づくコラムです。
個人事業主の事業承継・M&Aの際にご活用下さい。
コラム:事業承継マニュアル