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運送会社が価格競争に窮し倒産した実例です。経営不振に悩む経営者の方は、会社の倒産、破産に強い弁護士にご相談下さい。

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80 運輸業の経営の失敗:運送会社の倒産

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、運送会社が価格競争に窮し倒産した実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 運送会社が価格競争で収益確保に窮し債務超過で倒産に

大手航空3社による寡占状態に一石を投じる形で、低料金制の運賃設定を打ち出したが、大手3社が追随し価格競争となったことで、財務基盤が脆弱な当社は収益確保が困難となった。設立当初から機材や業務の一部を外部に委託し、機材整備等の専門性の高い部分は、競合相手に委託せざるをない状況で、割高な委託費用の支払いが発生したことも高コストにつながった。独自のサービスも展開できず、計画どおりの搭乗率が維持できなくなり、コストがかさんだことから、収益を圧迫し債務超過に陥り、民事再生法を申請するに至った。

 企業プロフィール

所在地 北海道
業種 運輸業
従業員数 575名
設立・創業 設立:平成8年11月/創業:平成8年11月
事業分野 定期航空運送事業
事業概要 航空運送事業を展開、現在は4路線、毎日17往復の定期便を運航している。
社長の年齢 50歳代
創業時の属性
(職業)
国・地方公務員


会社経営の失敗の詳細


 結論

大手航空3社による寡占状態に一石を投じる形で、低料金体制の運賃制度を打ち出したが、大手3社が追随し価格競争となった。元々財務基盤も脆弱で、高コスト体質にあったことから、収益確保が困難となり、債務超過に陥ったことで、民事再生法を申請するに至った。

 設立から成功までの経緯

幅運賃制度が導入されたものの、当時大手航空3社による寡占状態にあったことで一向に価格が低下しない傾向に一石を投じる形で設立された。平成10年に定期航空運送事業免許を取得、同年12月には運賃を大手3社の7割程度に抑え、第1便が就航した。この間平成9年期、平成10年期は売上高ゼロで経費が先行していたが、その後は順調に業績を伸ばしていった。

 トラブル・失敗・課題に至る経緯

運航当初はこれまでの大手の運賃と比較して6〜7割程度の運賃設定としたことで、割安感が利用客に浸透し、搭乗率は高水準で推移。しかし、その後大手3社も運賃の値下げを実施したことで、価格面での優位性が失われることとなり、その他のサービス面でも違いを示すことが出来なかったため、搭乗率は徐々に低下し収益性の確保が難しくなっていった。

 対処と結果

当初運賃設定は統一していたが、官公庁への支援を要請し、融資や補助金などの支援を得て、複数の料金体系に変更、独自のマイレージ制度を導入するなど、顧客ニーズに対応したサービスの充実に努め、低料金での営業の維持を図った。しかし、この結果システムの導入に関するコストの増加が拡大。マイレージシステムについても、大手のものと比較すると利便性に欠けていた。価格競争で大手と直接的に競うことは難しく、平成14年期に債務超過となり、民事再生手続き申立てに至った。

 原因

(1) 特性

財務基盤の脆弱性と価格競争
価格競争を行う場合には、財務基盤が充実していることが前提となるが、ベンチャー企業の当社としては大手3社と比較して資本力に乏しかった。大手が値下げに追随してきたことで当社の価格面における優位性が失われ、サービス面での差別化を図れなかったことから、体力勝負の価格競争に陥っていった。

(2) 要因

高コスト運営と搭乗率の低下
財務基盤が脆弱なため、設立当初からすべての機材を自前で調達することは難しく、一部の機械設備や機材の整備を外部に委託していたことにより、コストがかさんだことが経営を圧迫することとなった。しかも、専門性の高い部分については、競合相手である大手に委託せざるを得ないため、割高な委託費用を設定され、結果として高コストな経営を余儀なくされた。また、設立前の事業計画の段階で試算していたコストと利用客数が、計画どおりに推移しなかったことが収益性を確保できなくなった要因である。

 経営判断の問題点

官公庁へ金銭的な支援を要請したり、委託経費の削減を進めるなど収益性の改善に努めたが、搭乗率の低下は止まらず、黒字化ができないまま民事再生手続き開始の申立てに至った。低価格を武器に新規参入を図ったが、予想以上に早い段階で大手3社も追随してきた。独自のサービスを打ち出せず、自社の経営体力に見合わない価格競争を展開したことで、収益性を高められなかったことが最大の問題であった。

 背景

官公庁からは資金的な支援を得られたが、その支援についても限界があった。また、当初は地場企業として地元顧客の多くが当社を利用すると見込んだが、実際は便数が多く利便性の高い大手を利用する顧客が多かった。

 得られた教訓

設立当初より資金が潤沢に確保し、自前で機材の所有や整備を行うことができていればコスト面については削減できた可能性もある。また、低価格で人を輸送するという面を重視し、機内で不要と思われるサービスを削減したことから、当社のオリジナリティーを高めることができなかった。この面でのサービスの充実があれば搭乗率が高まった可能性もある。事業計画については、当初から事業の概要、資金計画などを詳細に作成する必要性があるが、実際に稼動しないと見えない要素も多く存在する。問題が発生する都度、どれだけ適格な対応ができるかにかかっている。

 後日談

大手航空会社の支援を得て、同社のシステムを利用したり共同運航を行うなど、業務の効率化が進んでおり、平成15年期からは黒字に転じた。現在は、4路線を運航し営業基盤を築いている。今日に至るまで、重大インシデント以上(重大事故に至る可能性がある事態)に指定された、事故・トラブルは1件もなく、低価格の運賃を維持した上で、安全性に関する信頼度についても高まっている。

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