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金融機関の融資先選別のなか、容易に融資が受けられたことから新店舗出店を進めたが、収益性が低さから徐々に財務内容を圧迫。人気が一段落すると金融機関から過剰投資と判断され、一転して貸し渋り、貸し剥がしに直面、債務返済が重くのしかかり、資金繰りに行き詰った。
業種 | 飲食、宿泊業 |
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事業分野 | 飲食店 |
事業概要 | 都心を中心に飲食店を展開。店舗は内装に凝った作りであり、本格的な料理を廉価で提供し、女性客などを中心に幅広い層に人気を博している。 |
バブル崩壊後の金融機関の選別融資が進むなか、当社店舗の人気を受けて容易に資金調達が可能であったことから、積極的な新規出店を推し進めた。しかし、原価率の高さや多額の内装費により1店舗当りの収益性が低いことに課題を抱えていた。その後、金融引き締めによって、貸し渋り、貸し剥がしに直面。先行投資に伴う借入利息負担が重荷となり、資金調達も困難となった。
各店舗とも大型の商業施設など保証金が高く、また内装も凝った作りを当社の「売り」にしていたため、借入金額も非常に高いものなっており、徐々に財務内容を圧迫していた。バブル崩壊以降も金融機関の融資先選別のなか、当社には比較的好意的な融資姿勢を示され、新店舗出店に関して金融借入は比較的容易にできた。しかし、金融ビッグバン以降は金融機関の態度は一変、金融引き締めにより、財務内容を細かく調べられると過剰投資と判断され、貸し渋り、貸し剥がしが始まった。先行投資に伴う借入利息負担が重荷となり、資金調達も行き詰った。
出店計画の慎重な検討や見直しを行い、早急に不採算店の早期撤退などを行った。また、仕入先や協力者などを当たり、協力者からの支援を受けるなどが行われた。しかしながら、社内から出店体制を大きく見直す事を促す意見が出たが、経営者の意向が強い社内風土から、大きく変更させる事はできず、収益性を度外視した大型商業施設への出店など、強気の出店は続けられた。
過去の成功体験が足かせに
ユーザーニーズの把握を常に行わなければならない飲食店経営であるが、凝った内装やスタイルに拘るあまり収益性が悪化。過去の成功経験や企業イメージが徐々に足かせになっていった。消費者をさらに惹きつけるために過剰な投資に走ってしまった。
拡大路線による過剰投資が経営を圧迫
新規出店の拡大路線による過剰投資が経営を圧迫していった。特に、首都圏以外の進出においては地域の特性などマーケティングのズレが生じ、出店に失敗するケースが相次いだ。
飲食店の低採算性体質は依然として残る状況が続いたが、売上重視で採算性にはあまり目を向ける事が無いまま強気の出店を続けてしまった。
金融機関は早期是正措置導入の影響で、自己資本比率の維持・上昇を図るため、貸出資産の圧縮や選別 融資の強化が行われたが、一方で融資先がなくなったことから、成長している企業に対しては融資の引き合いが集中することとなった。他の中小企業が資金調達に苦心するなか、当社に対しては好意的に融資が進められたのは、当時、行列をつくり数多くのメディアに取り合えげられるなど、注目が集まっていたためである。
新規出店計画が次々と持ち上がり、それに歯止めがかからず、過剰投資に陥ってしまった。その債務返済が大きな負担となったことから、今後の新規出店に関してはより慎重に行うとともに、投資に関してはすべてを金融機関の借入に頼らない事が大きな教訓となった。新規出店などの投資に関しては事前にマーケティングを綿密に行う事や、資金計画についても楽観的な予測に頼らない事が必要であった。
凝った内装や装置を用いて客を驚かせる仕掛けは、その当時斬新さが受け、瞬く間に人気を集めることとなったが、やがては飽きられるようになっていった。消費者の興味は移ろいやすいものであり、踊らされることがないよう、経営には慎重な舵取りが必要であろう。
創業者の企業コンセプトは現在も若い女性や幅広い層に人気があり、基本的な企業姿勢に関しては大きな変更はなく、高いカリスマ性や経営手腕は今でも評価されている。出店も縮小しながらも集客数の見込める大型商業施設などでの展開が行われている。ただ、無理な出店は行わず、今期は従来の半減に近い売上規模に止まるが、再建は順調に進んでいる。