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6 製造業の経営の失敗(6):商品力の過信による販売失敗

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。


ここでは、商品力の過信による販売失敗の実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 商品力への過信から市場アピールを怠り販売不振に

消費者向けの電子錠の販売ビジネスは高い評価を得て、資金調達や販売代理店の獲得はスムーズに進んだ。しかし、商品に対する強い自信から市場にアピールする努力を怠り、加盟店による販売方法にも問題があったため、商品の優位性が市場になかなか浸透していかなかった。

 企業プロフィール

所在地 山口県
業種 製造業
従業員数 17名
設立・創業 設立:平成8年/創業:平成6年
事業分野 半導体・電子機器
事業概要 自社開発の自動扉施錠システムを中心としたセキュリティ機器の販売で代理店方式により全国販売を実施。マンションデベロッパー、住宅メーカーの物件に標準装備、OEMでの提供を行っている。
社長の年齢 50歳代
創業時の属性
(職業)
会社勤務(中途退社)


会社経営の失敗の詳細


 結論

商品力には自信があり、当初から代理店販売による全国展開を目論んだが、商品自体の市場での認知は低く、代理店の営業力の弱さもあり商品の販売は低迷、設立後4年間売上は加盟料がほとんどを占め赤字計上が続いた。

 設立から成功までの経緯

金融機関の職員出入口専用の電子錠を開発、販売するメーカー勤務時代、電子錠は生活習慣を変える商品で、消費者向けにもビジネスチャンスがあると感じ、製品の開発に着手、平成8年6月に当社を設立し事業化した。銀行からの紹介により、FC加盟に実績を持つM社と提携し加盟店を募集し、20社との契約が決まった。1社あたりの加盟金は200万円で、第2期にあたる平成10年5月期の売上は4,000万円となった。ベンチャーキャピタルからの出資も決まり、県の補助金制度の認定を受けるなど、資金調達(約1億円)も順調に行われた。

 課題・ヒヤリとした経験

FC加盟に実績を持つM社と提携した結果、加盟店は増加していったが、製品自体はなかなか売れなかった。同社は加盟店を集めるには長けている一方、商品そのものについての認識は習熟しておらず、加盟希望者に対する研修の内容も個人向けの訪問販売的なものであった。代理店も儲けを重視し、見た目ではなかなか優位性が分からない「説得商品」でありながらのユーザーへの説明は充分に行われず販売は伸び悩んでいた。市場での商品の認知度は全く無く、代理店の営業力のなさもあり商品の販売は遅々として進まず、設立後4年間売上は加盟料がほとんどを占め赤字計上が続いた。代理店が増えることで営業用のサンプルなど販促分で販売個数が増加し年商は上がるが、一過性の販売にすぎず、なかなか軌道に乗れない状態が続いた。

 対処と結果

状況を打開するため、M社との提携を解消し、自社営業による代理店募集に切り替えた。代理店には商品の優位性を時間を掛けて説明し、住宅メーカーの営業マンに同行しエンドユーザーに直接商品説明を行うなど、代理店を経由しない直接販売も積極的に開始し、当社が受注したものを代理店に振り分けた。また、代表者の息子を専務として東京に派遣し、東京からの情報発信で商品の認知度を高める戦略をとった。その結果、エンドユーザーへの説明をしていくことで消費者からの高い評価を得て、次第に市場での認知度は高まり、複数の住宅機器メーカーへOEM商品として供給を開始するとともに、マンションデベロッパーでは分譲物件に標準装備を行うなど相乗効果が現れ出した。

 原因

(1) 特性

優れた商品として過大な自信を持っていた
良質な商品の開発、製造を行うことが大事だと思い込み、代理店に任せれば売れると思い込んでおり、代理店を増やせば販売は付いてくるとの甘い見通しがあった。

(2) 要因

商品の優位性を伝えず、認知度を上げる方法を誤った
加盟店募集をM社に委ね、商品の優位性を市場に浸透させる手段をとらなかった。代理店には法人・個人への直販を指示、ノンテリトリー性を導入し代理店の販売力によって地域格差をなくそうとし、特約店設置も許可していたが、代理店にとっては扱い商品の1つに過ぎず思うように初期導入分以外の販売は進まなかった。

 経営判断

従来、鍵とは住宅の「部品」のひとつとしてメーカーの主導でエンドユーザーに提供されてきたもので、ユーザーニーズが反映された「商品」ではなかった。金融機関で使用されていた電子錠のノウハウを活かし、リモコンでの開錠、閉め忘れがない等、防犯と利便性に優れた商品は生活習慣を変えることができ、必ず受け入れられると判断し事業化した。しかし、当初募集した代理店の販売力を見誤り、自社での販売努力を行わなかったため、商品に対する高い評価を得ながらもなかなか売れる商品には育たなかった。

 背景

住宅用鍵メーカーはエンドユーザーへの直接販売は行わず、建材メーカー、設計業者、工事業者など関連業者経由で販売、商品開発も業者から受けた情報で行い、直接ユーザーの声を反映したものではなかった。このためユーザーは選択余地がほとんどない状態で、そもそも鍵についての商品の優劣の判断をする知識は乏しかった。

 得られた教訓

商品の優位性だけでは商売は出来ない。市場における認知度を高める努力が欠かせない。代理店販売方式は早期に販路を確保するには有効であるが、自社での販売努力も積極的に行うべきで、ある程度は自社でイニシアティブを取って募集し、候補者の販売力と取り組み姿勢を把握すること、数ではなく質を見極める必要があった。
また、専務の活躍によって販売が強化されたほか、製造のアウトソーシング先より有能な人材を執行役員として迎え、製造プロセスの見直し製造コストの削減を実現するなど、周囲が大きな役割を担ってくれた。事業を進めるにあたっては経営者の独自判断だけでは十分ではない。社内に有能な人材を確保することが成長の要因であるとわかった。

 後日談

商品の市場投入には自己満足ではうまくいかない。作り手、売り手、使用する人全てが納得しなければ商品は売れない。いくら良い商品でも使い方が分からない物は売ろうとしないし、知らない物は誰も買わない。ウォシュレットしかり、携帯電話しかり、それまで世に出ていなかった商品が市場にあって当たり前のように浸透するには10年かかる。しかし、当たり前のように浸透し便利さに慣れてしまえば、人は手放すことができなくなる。あせらず足元を見ながらじっくりと取り組みたい。

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