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10 製造業の経営の失敗(10):商品開発の長期化の失敗

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、商品開発の長期化による経営危機の実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 商品開発が長期化し先行投資負担が膨張

シート発熱体の原材料の存在を知り、すぐに起業を決意。研究開発に着手するも、商品化へのプロセスで、外部の研究所、協力企業の力が必要となる。結果、商品開発に4年もの歳月を要することとなり、先行投資負担が膨らんだ。

 企業プロフィール

所在地 青森県
業種 製造業
従業員数 5名
設立・創業 設立:平成13年4月/創業:平成13年4月
事業分野 その他(発熱シート製造販売、土木工事)
事業概要 融雪工事に活用できる、厚さ0.4mmのシート発熱体の製造販売を手掛ける。地元県内一円の一般家庭や官公庁関連の融雪工事にも実績がある。シート発熱体の特色を活かし、住宅の融雪工事に留まらず、農業用、医療用など幅広い分野への浸透を図っている。
社長の年齢 50歳代
創業時の属性
(職業)
会社員(中途退社)


会社経営の失敗の詳細


 結論

シートの素材に注目し商品化を考えたまでは良かったが、ゼロからスタートの商品開発だったこともあり、商品化に向けた研究機関、協力企業を探すことから開始し、研究試験の方法、企業選定などに苦労。予想以上の開発研究時間を要し、先行投資が嵩んだ。

 設立から成功まで

長年建設業に従事し、今後ますます先行きが不透明になることを危惧していた中、シート発熱体の原材料の存在を知り、シンプルな機構で発熱させ、融雪に使えないものかと研究を始めたのが起業のきっかけとなった。平成13年、手探りの状態でシート発熱体の研究を開始し、平成15年「中小企業創造活動促進法」の認定を受け、県や大学との連携により本格的研究に取り組んだ。ゼロからの商品開発であったため、試行錯誤を繰り返し、4年の歳月を費やした。その後、平成17年に実用新案登録、商品販売を実施した。18年期では同商品の総売上に占める販売実績が5割と超え、兼業の土木工事割合を上回るまでに成長し、順調な業績推移を辿っている。

 課題・ヒヤリとした経験

ゼロからスタートの商品開発だったこともあり、商品化に向けた研究機関、協力企業を探すことから開始した。研究試験の方法、企業選定などに苦労し、当初1〜2年での商品化予想が、実際に商品化されるまでには予想を超える研究・開発時間を要した。それに伴い先行投資が嵩み、投下資本が回収できない期間が続くこととなった。

 対処と結果

社内に専門知識を持ったスタッフがいないため、外部の研究所や企業に協力を要請することとした。主に大学の研究所や首都圏の企業に商品開発の技術協力を要請していった。しかし、知名度不足のため、企業からの反応も薄く、探すのに時間と手間を要することとなった。知名度の向上を図るべく、平成15年「中小企業創造活動促進法」の認定を受けた。その後は、県や大学との連携により、商品開発に向けた研究・開発が実現した。そして、ようやく平成17年から本格的な商品販売となった。

 原因

(1) 特性

商品開発に関するノウハウの不足
シート素材の特性に着目し商品化を目指したまでは良かったが、ゼロからスタートの商品開発であった。それゆえに商品化までにはより多くのプロセスを要する点など、商品開発に関するノウハウに不足があった。

(2) 要因

予想以上の商品開発長期化
研究開発は多くの実験を必要とし、試行錯誤の連続となる中で、外部の研究所や協力企業の力が必要となった。このため予想外に研究開発に時間を要することとなり、当初計画より商品化が遅れた。 

 経営判断

起業に際し、充分な商品開発のノウハウがないままスタートしたことが先行投資を膨らませた一番の要因である。当初は、完成形としていた商品の構造が非常にシンプルだったため、単純に部品の組み合わせで早期の商品化が可能になると判断した。だが実際には、さまざまな場面を想定した実験が必要で、試行錯誤の連続となった。専門知識がなかったことから外部委託に依存し、先行投資が嵩む結果となった。商品開発に際して準備期間や専門スタッフが不足する中、起業を急ぎすぎた面もあり、主力商品となるまでに多年を要してしまった。

 背景

ベンチャーとして事業を起せば、注目が集まり、成功に向けたステップとなるのではという、社会的風潮に煽られた感もある。実際は、脆弱な資金背景のまま事業を開始したことから、時期尚早であった。これを解消するために制度融資を利用しようとしたが、当時はベンチャー向け制度融資も不足していた。

 得られた教訓

商品構造自体はシンプルでも、それを商品化し、実際に販売するまでには様々な実験・検証が必要で、この点で認識不足であった。商品化までの具体的な過程を明確化する専門スタッフの確保、あるいは事業をサポートしてくれる行政レベルでのバックアップ体制を確立した上での起業が必要であった。商品化に至るまでの過程に苦しめられたのは事実であるが、ゼロからの試行錯誤であったため、社内の技術レベルは高まった。少数精鋭であるため、自分の担当する部門の問題解決を自発的に行わざるを得ず、このため社員一人一人のスキルアップに繋がったもので、ゼロからのスタートがプラスに働いた面もある。

 後日談

早期での商品開発を目指し、勢いのみで起業した感があったが、開発当初から大きなカベにぶつかり、結果的に商品販売までに多年を要することとなった。ただ、先行投資は嵩んだが、満足できる商品ができるまで開発研究を我慢して続けたことで、結果としてベストな商品を開発できたと自負している。資金力が乏しいため、起業までの準備期間と商品開発までの過程には大変な苦労が伴ったが、社員一人一人が問題解決に向けた行動を行うきっかけともなり、組織としての連帯感も生まれ、現在も良い状態が続いている。


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  ・ 商品開発が長期化し先行投資負担が膨張


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