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市場投入が遅れ、営業ノウハウもなく、販売不振に陥った経営失敗の実例です。経営不振に悩む経営者の方は、会社の倒産、破産に強い弁護士にご相談下さい。

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29 製造業の経営の失敗(29):市場投入の遅れの失敗

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、市場投入が遅れ販売不振に陥った経営失敗の実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 市場投入が遅れ営業ノウハウもなく販売不振に

各種特許を有し、高い技術力が評価され、資金調達はスムーズに進んだが、製品化後の市場投入が遅れ、営業人材の不足もあり、売上は計画を大きく下回った。社員の大半が技術者で営業ノウハウを有する人材がいなかったため、販売は思うように進まなかった。

 企業プロフィール

所在地 大阪府
業種 製造業
従業員数 11名
設立・創業 設立:平成15年3月/創業:平成11年6月
事業分野 その他(精密機器製造)
事業概要 環境測定機器の製造・販売が主たる業務。環境・産業・食品・文化財というテーマを軸にした実用例がある。大学や公的研究機関や民間企業に納入実績を有する。現在は、分析機器フェアに出展するなど、斯業界での知名度を高めつつある。
社長の年齢 50歳代
創業時の属性
(職業)
会社勤務(中途退社)


会社経営の失敗の詳細


 結論

開発・研究はスムーズに進み、逐次製品化に至ったが、営業面ではノウハウが不足していた。製品化後の計画が十分に練られていなかったため、販売は思うように進まなかった。売上が計画を大きく下回り、徐々に返済原資の捻出が厳しくなっていった。

 設立から成功までの経緯

平成11年に設立。産学共同による革新的な機器を開発、各種特許に裏付けされた相応の技術力を有し、各方面で高い評価を獲得、ベンチャーキャピタルなどからの出資及び公的融資制度により資金調達も円滑に進み、業容を拡大、平成16年期には約1億6,000万円の売上を計上していた。

 トラブル・失敗・課題に至る経緯

業種柄、開発・研究などに対して慢性的な資金先行が続いたが、ベンチャーキャピタル等からの出資・融資は受けやすい状況であり、資金調達を繰り返した。製品の開発、研究、特許などの環境整備に対しては、経営者をはじめ社員でも経験があり、無難に進んでいたが、製品化後の計画がほとんど練られていなかったため、市場投入やその後の市場開拓が進まなかった。社員の大半は技術者で、営業に対するノウハウが不足している状態であったため販売は低迷。技術開発だけが日々進む中、同市場に大手企業などが参入するようになり、市場においては後発メーカーとして次第に競争力を失っていった。

 対処と結果

営業力強化に向け、諸策を検討したが、当社の業歴は浅く、事業経験を有する社員もおらず、有効な対処法が見出せなかった。営業力を高めるにもノウハウがなく、万事を尽くす前に経営不振に陥り、民事再生法の申請に至った。

 原因

(1) 特性

営業人材が圧倒的に不足していた
技術者の集まりであり、営業ノウハウを有する人物がいなかった。また、それに対する投資も後出に回ってしまい、人的投資の遅れが販売低迷に繋がった。

(2) 要因

製品の市場投入が遅れた
製品化後の動きがスムーズに行かず、市場投入までに相当の時間を要した。販売に至った時期には、既に同業他社、大手企業が参入しており、販売量も大きく計画を下回ってしまった。

 経営判断の問題点

良い製品の開発が販売に繋がるという理念があったため、当社設立以降、資金は研究・開発費に費やされてきた。しかし、営業や販売力の不足には注力してこなかった。また市場の進み具合や成熟状態を見極めることができなかった。優れた製品の開発は実現したものの、販売できる段階に至った時には既に後発組となり、大手と競争をせざるを得ない状態に陥るなど、製品市場に対する戦略が不足していた。

 背景

バブル崩壊後の長期不況下ではあったが、当社は環境の研究・開発・製造が主たる製品であり、環境問題への関心の高まりから需要は相応にあった。現状においても逐次規制や法律が整備され、市場は拡大傾向にある。

 得られた教訓

市場にどれだけ早く製品を投入するかが、最大の命題であったが、なかなか販売までたどり着けないなど、タイミングよく製品投入ができなかった背景がある。企業経営や営業などに長けた人物が社内に不足し、様々なチャンスを逃してきた。当社の技術に対する評価は高く、ベンチャーキャピタルや公的融資などにより得た資金を人的投資へ回し、管理・営業のできる人物を育てる(及び招聘)ことができていれば、成功への道筋が開けたのではないかと考える。
大手が参入しないニッチな市場をいち早く見つけ、シェアを拡大するためには、製品力の他、現場での旗振り役が必要である。当社のような中小企業体では、同市場で大手企業が参入した場合には、次のターゲットを見つけざるを得ない。市場動向を見極める力も技術力と平行し備えなければならず、研究・開発から製造、販売とトータル的な経営が必要不可欠であった。

 後日談

平成16年に民事再生法を申請。新たに新会社を設立し、業務を引き継ぎ事業を継続している。なお、オーナーに経験豊富な事業家を迎え、経営者としての経験の下、営業面での指針も明確になってきた。平成19年期売上は1億3,000万円を計上、回復基調となっている。各種展示会などへ積極的に参加、新聞やテレビなどメディアへ取り上げられることもしばしばであるなど、販売力強化へ向けた策も講じられ、同じ轍を踏まぬよう企業努力が続いている。


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書籍:歯科医院の事業承継とM&A

学建書院,2016年