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17 製造業の経営の失敗(17):設備投資の失敗による倒産

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。


ここでは、設備投資の失敗による倒産の実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 設備投資と人材拡充に失敗し、資金ショートで倒産に

畳という伝統的分野において革新的製品を開発。大掛かりな設備投資と営業人員の拡充を図り売上は急速に拡大した。しかし、市場への浸透の遅れや人材教育のつまづき、類似品の発生等により売上は鈍化し、資金繰りが逼迫、資金ショートを起こし民事再生法の適用を申請した。

 企業プロフィール

所在地 福井県
業種 製造業
従業員数 20名
設立・創業 設立:平成8年7月/創業:平成8年7月
事業分野 その他(畳の製造販売)
事業概要 合成樹脂材を使用したオリジナルの畳を製造販売している。変色しにくい、高耐久、汚れにくい、防ダニ・防カビ性に優れているなどの長所を強みにホテルや旅館、保育所などに納入ルートを構築。さらに、防水性に優れた畳、タイルカーペット畳など次々と新製品を開発している。
社長の年齢 40歳代
創業時の属性
(職業)
会社勤務(その他:実父経営の会社)


会社経営の失敗の詳細


 結論

多品種を扱うことを目指し、それに伴う開発投資、設備投資、人員の増強を行った。しかし、成長振りがあまりにも急激であったために会社の組織管理体制が整わず、売上の伸びが鈍化。資金のほとんどを銀行借入に依存していたため、資金繰りが次第に悪化していき、資金ショートを起こした。

 設立から成功までの経緯

家業である畳店から分離独立し、設立創業した。畳が日本の文化でありながら減少の一途を辿るようになったことを背景に、高機能の畳の開発に着手。開発から製造までの一貫体制を確立した。同製品は県の創造法や経営革新計画、新連携の認証を取得し、各種制度資金にて生産能力拡大や新製品開発に積極的に取り組み、売上が拡大。発足から10年で年商約19億円にまで伸長することとなった。

 トラブル・失敗・課題に至る経緯 

単独製品では販路拡大が難しいため、床材としての機能製品等多品種を扱うことに注力した。その際の開発費用、それに伴う設備投資、営業開発費用が増加。人員も投入した。しかし、それを支えるシステムづくり、人材教育が不十分であり、目的意識も徹底していなかった。また、一般消費者をターゲットとしたことで、開発品が市場で認知されて売上に結びつくまでのタイムラグが1〜2年と大きいうえ、消費者からの商品欠陥などに関するクレームが多発した。これに対応しながら製品を改良するのに予想以上の時間を要した。

 対処と結果

開発品の欠陥発覚時には、ユーザーに対して製品交換や改良した商品への無償交換、メンテナンス等フォローをきめ細かく行った。ユーザーからは信頼を得ることができ、販路も広がった。しかし、新たな課題として、他社の粗悪だが安価な類似品が出回るようになり、その対策には具体的なものが見当たらなかった。

 原因

(1) 特性

革新的商品に対する業界の壁
開発した製品は、全くの新製品というよりは、従来の畳を代替する革新的存在であった。そのためこれまでの常識を覆す必要があった。畳という伝統的分野では、その壁は非常に厚く、これを打ち破るには大変な時間、労力、費用を要した。

(2) 要因

人員教育のつまづき
労力確保のために短期間で多くの人員を採用したが、その人員の教育が思うようにできなかった。これが売上低下を呼び込むこととなり、設備投資や開発費用の大半を銀行借入に依存していたことで、次第に資金繰りが悪化していった。

 経営判断の問題点

メーカーとして地盤を確立するためには、各種制度融資の利用だけでは限界があり、やはり資本の充実、もしくは業務提携、資本の調達が必要であった。その意味では、ベンチャーキャピタル等の利用、資本提携等資本の増強をしなければならなかったと思う。

 背景

品質を考えない低級類似品が低価格で出回るようになった。営業先である現在の建設業界では、品質よりも価格が重視される感があり、営業に苦戦した。最終的には、粗悪品から当社製品に回帰する部分も少なくはなかったが、回帰するまでに相当の時間を要した。

 得られた教訓

開発や営業の方向性は合っていたが、建設業界から要求される安価性に耐えるだけの体力がなかった。また、エンドユーザー直販においては、費用がかかりすぎるため、販売の代理店網の確立、商社等との取り組みが必要であった。この取り組みができれば、先行投資部分をもっと抑えることができたかもしれない。人材、資金などモノづくりには、多額の投資が必要である。故に、最初から全国展開ではなく、特定の商圏の営業に特化し、その市場を把握してから次の市場を開拓すべきであった。

 後日談

現在同社は再生計画案を思案中である。スポンサー企業の選出などを含めて、今後も各種開発品が市場に浸透し、企業が永く存続できるよう慎重に考え、じっくりと事業展開を図っていく考えである。


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学建書院,2016年