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12 製造業の経営の失敗(12):法規制による生産開始の遅延

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、法規制の誤解で生産開始が遅延し経営危機に陥った実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 事業に関する法規制の誤解で生産開始が大幅に遅延

中古のビール製造設備を輸入し、生産工場の整備に入ったところ、建築基準法等の問題から工場建築に手間取り、事業計画がスムーズに進まなかった。関連する法律・法令の理解・知識が不足していたうえ、何でも自分たちで成し遂げようと固執したこともあり、設立から生産開始まで2年余りが経過してしまった。

 企業プロフィール

所在地 岩手県
業種 製造業
従業員数 5名
設立・創業 設立:平成13年2月/創業:平成13年2月
事業分野 その他(ビール製造販売)
事業概要 地ビール製造販売業者。ドイツ製ビール製造設備を中古で購入、ドイツ人のブラウマイスターを招聘しビール製造販売を開始した。本場ヨーロッパの伝統的な醸造技術を用いたクラシカルなビールに特色を持つ。地元ほかネットでの販売により県外にも販路を拡大してきている
社長の年齢 30歳代
創業時の属性
(職業)
会社勤務(中途退社)


会社経営の失敗の詳細


 結論

ビール製造施設の整備に際して想定外の遅れが発生した。当初は既存のレンガ工場を改装してビール工場として使用する予定だったが、建築基準法(用途地域)の問題で改装ではなく建て直しを余儀なくされ、結果的に設立から実際の事業開始までに2年余りが経過してしまった。

 設立から成功までの経緯

大手ビールメーカーの営業職でビール販売をしていく中、地ビールブームの影響もあり、ビールの製造に興味を持つようになる。その希望を叶えるべく退職し、K社に入社する。同社にて地ビール製造の立ち上げに参加し、工場長として製造に携わる。その時、現在のビジネスパートナーであるドイツ人のブラウマイスターと出会う。ビジネスチャンスをうかがって平成13年当社を設立する。本場ドイツより中古のビール製造設備を輸入し、平成15年ビール工場が完成し独力での製造を開始した。初めは2商品でスタート。代表の前職での経験を活かした営業で地元の酒販店、飲食店等に販路を開拓していった。同時に、楽天市場にも出店しネット販売を開始。経費面の問題から広告宣伝等は最小限としたため、当初の出だしは鈍かったが、口コミ等で反響が広がる。平成16年に2品目、平成17年には冬期限定品を追加し、商品バリエーションが増えたこともあり売上を伸ばす。

 トラブル・失敗・課題に至る経緯 

当初は実父が経営するレンガ工場(築約30年)を改装してビール工場として使用する予定だった。計画段階において市役所・建築指導課に既存建物をビール工場として使用できるか問い合わせたところ、特に問題はないとの回答を得て、計画をスタートした。しかし、暫く経って市役所から電話があり、調べたところレンガ工場をビール醸造所に転用する事ができないとの連絡が入る。用途変更を行うには、既存建物でも新築と同様の建築基準法が適用されるため、設計事務所に建物構造計算を依頼したところ、既存建物は補強工事をしても建築基準法をクリアすることは不可能と診断される。そのため、既存建物を取り壊し、基礎工事からやり直すこととなった。しかし、建物自体が建築基準法をクリアしても、法律上では公聴会、有識者による建築審査会を経て市長の決裁がないと許可が下りない仕組みとなっており、これらをクリアするのに相当の日数を要した。

 対処と結果

事業開始が遅れることで焦りもあったが、建築基準法という法律上の問題なので、割り切って根気強く対応した。近隣住民を招いての公聴会では心配や誤解を招かないよう丁寧に説明した。管轄の市役所・建築指導課や設計事務所、金融機関等との連絡を密にし、可能な限り早い段階で事業開始ができるよう努めた。
その時期、3月の市議会が控えていたこともあり、市が策定した建築許可までのスケジュールは長期間であったが、公聴会、有識者による建築審査会では、反対意見等目立った問題はなくスムーズに進んだ。結果として、建築許可は下り、当初計画した場所に工場を建設することができた。

 原因

(1) 特性

事業に関連する法律・法令の理解・知識が不足
計画段階で市役所に確認したが誤った回答を受け、結果それに翻弄される結果となったが、建築基準法に対して当方側でも精査し判断すべきだった。生産できないと商品ができず、収入ゼロが続いたことから、許認可がおりるスケジュールを十分確認して事業計画を立案すべきだった。

(2) 要因

自分たちだけで成し遂げることに執着
計画段階から人の手を借りず、自分たちの力で成し遂げたいという考えがあり、そのポリシーに固執した傾向があった。わからない事は図書館やインターネット等で調べて対処してきたが、専門家に相談し事前に意見を得ることも必要だったかもしれない。

 経営判断の問題点

前職での勤務経験からビールの製造及び販売には精通していたが、専門外の分野においては手探りの感があった。また、生産開始から1年程は当初予想していたよりも販売量が伸びずイメージ通りにいかない状況も見られた。しかし、現在までのところでは、多少時間がかかっても問題、課題は解決に至っており、致命的な判断ミスと思われる事はなかったと考えている。

 背景

1994年4月の酒税法改正により、ビールの最低製造数量基準が2000klから60klに緩和されたことを受けて全国各地に地域密着・小規模醸造所が誕生した。規制緩和後、地ビールブームとなったが、我が国では大手メーカーによるピルスナースタイルの生産が主流であり、発泡酒の台頭もあり、ブームは次第に沈静化していった。ただ、一部マニアには依然として根強い人気がある。

 得られた教訓 

工場建設のトラブルに関しては、建築基準法の知識不足が原因として挙げられ、事業に関連する法律・法令の熟知が不可欠だと感じた。複数の見解を得るなどして充分に確認しトラブルを未然に防ぐ努力が必要であった。そのために、会社内の仲間と本音で意見を交わし、信頼関係を強固なものとし協力し合うよう心がけるようになった。また、各個人のポテンシャルを最大限に発揮できる組織づくりや社内の雰囲気づくりを心がけた。生産・商品企画・販売・総務経理など、それぞれの役割を尊重し、じっくりと問題に向き合うことでさまざま問題を解決できると考えている。

 後日談

地ビールブームが過ぎ去った後、当社を設立することとなったため周囲からは何でこの時期に?という声もあったが、「自分たちの手でうまいビールをお届けしたい」という強い気持ちで、これまで幾多の逆境を乗り越えてきた。スポンサーがいないため、資金面に制約もあるが、ヨーロッパの伝統的な醸造技術を忠実に継承し、他には真似のできない本格プレミアムビールを今後も造り続けていきたい。


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書籍:歯科医院の事業承継とM&A

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