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60 情報通信業の経営の失敗(4):ソフトウェア開発会社の失敗

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、ソフトウェア開発会社の経営失敗の実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 依存していた基本システムが販売中止となった失敗

基本システムとしていた外資系ライブラリーが販売中止となり、基本システムを含めた開発をゼロから手掛ければならなくなった。この開発に1年余を費やすかたちとなり、この時期に業績低迷を余儀なくされた。ソフトウェア開発業界は基本システムなどを他社技術に依存せざるを得ない面があり、外資系ライブラリーの販売中止は予見されていた。システム開発には資金も時間もかかり、目先の利益を追求するあまり会社存亡に係る経営の根幹に目を背けてしまっていた。

 企業プロフィール

所在地 茨城県
業種 情報通信業
従業員数 14名
設立・創業 設立:平成10年5月/創業:平成10年5月
事業分野 ソフトウェア
事業概要 高性能通信プラットフォームシステムの受託開発が主体。当社の手掛けるプラットフォーム(ソフト)は、通信分野に限らず金融、医療情報システム等に導入、独自の販路開拓と技術開発により広くユーザーを獲得。技術家集団として業界内でも高い評価を得ている。
社長の年齢 40歳代
創業時の属性
(職業)
会社員(スピンオフ)


会社経営の失敗の詳細


 結論

基本システムとしていた外資系ライブラリーが販売中止となり、基本システムを含めた開発をゼロから手掛ければならなくなった。この開発に1年余を費やすかたちとなり、この時期に業績低迷を余儀なくされた。目先の利益追求に捉われ、システム開発への着手が遅れたことも業績低迷の一因となった。

 設立から成功までの経緯

前勤務先で光通信システムの開発研究員として勤務する傍ら某大学院にて博士号を取得。社内ベンチャーに応じて、約100件の応募の中で、高性能通信プラットフォームシステムの受託開発事業が第1号としての認定を受けた。通信分野で培ったシステム開発は、ハードを使ったサービス事業へ向かう時流の中で、多様化の可能性があり、それを期待されての認定であった。平成10年に当社を創設。前勤務先グループ向けの販売に加えて、自社販路の開拓により、医療機関向けに販売を開始した。“短時間”“低コスト”を売りとする自社ソフトは広くユーザーへの浸透が図られて、順調に業績を伸ばしていった。

 トラブル・失敗・課題に至る経緯

新バージョーンの開発も手掛けて順調に業績を確保してきたが、基本システムとしていた外資系ライブラリーが平成15年に販売中止となり、基本システムを含めた開発をゼロから手掛ければならなくなった。この開発に1年余を費やすかたちとなり、この時期に業績低迷を余儀なくされた。ソフトウェア開発は基本システムを他社製品に依存するケースが多々ある。他社技術に依存せざるを得ない体質は当社も経営上憂慮していたものの、それが現実のものとなり経営が大きく混乱する事態となった。

 対処と結果

外資系ライブラリーの販売中止は事前に予見され、不測の事態に備えて自社システムの開発を模索していたが、開発前に販売中止が現実のものとなり経営に混乱が生じた。自社システムの完成は販売中止に遅れて半年後に完了したが、自社システムの開発には、資金も時間も費やすこととなり、この時期に業績も低迷した。ただ、この結果、他社技術に依存することなく、自社単独でのシステム開発が出来る体制となった。システム開発には資金も時間も費やす結果となったが、この経営混乱に社員が一丸となって取組んだことにより社内の結束力がより強固ものとなった。顧客先には技術家集団として評価が向上、その後の受注拡大に結び付いた。

 原因

(1) 特性

他社技術に依存した基本システム
ソフトウェア開発業界は、独創性を追求できる一方で、基本システムなど他社技術に依存せざるを得ない一面を抱えている。

(2) 要因

外資系ライブラリーの販売中止
外資系ライブラリーの販売中止が予見されていたにもかかわらず、システム開発は資金も時間も費やすために、目先の利益追求のために開発が立ち遅れた状況になっていた。

 経営判断の問題点

つい楽な方向に経営の舵を取りがちとなり、目先の利益を追求するがために会社存亡に係る経営の根幹に目を背けてしまった。経営者として将来的な予見を十分に見極めていたにもかかわらず、対応が遅れてしまった。

 背景

ソフトウェア開発は他社製品の基本システムを活用するケースが多々ある。他社技術に依存せざるを得ない体質のため、提供元の動向に影響されやすい問題を抱えている。

 得られた教訓

外資系ライブラリーの販売中止は十分に予見可能であったが、起業より順調に業績を伸ばしていたことで、目先の利益追求に捉われ、次へのステップが立ち遅れた。リスクを回避するための次の一手を早々に打つべきであった。もし、半年システム開発への着手がさらに遅れていたら、現在、存続していなかったと思う。先行きを見極める判断の遅れが大きく経営を混乱させ、業績も一時はかなり落ち込み、過去に蓄えてきた資金を吐き出す事態となった。当社のような経営体質が脆弱なベンチャー企業にとっては、一つの経営判断のミスや遅れが会社存亡に係る危機となることを痛感した。特にIT業界におけるベンチャー企業は、一攫千金を狙い、一儲けするとなかなか次へのステップを踏めない企業が多々見受けられ、既に消滅した会社も多い。当社も場合も同様の傾向があったことを実感しているが、本当にあと半年経営判断が遅れていたなら消滅していた可能性も十分にあり、その点では非常に幸運であったと考えている。

 後日談

当社以降に前勤務先の社内ベンチャーにより起業した会社もあったが、当該事業は既に同社グループ会社に飲み込まれ、今は当社のみが存続している。危機に直面して一丸となって頑張ってくれた社員に感謝したい。危機を乗り越えたことで、その後は顧客先に技術家集団として認知度も増し、受注先の拡大にも結びついている。ある意味で本当に幸運であったと思う。
国内のシステム開発の現状をみると、大手企業ですらソフトを動かすためのシステムをコストの安価なインドや中国に発注するケースが多々見受けられる。この業界においても次世代への技術伝承が円滑に行われていないことを大変憂慮している。将来的には、国内企業がソフトウェアの技術開発自体を海外企業に依存せざるを得ない状況になっていくのではとの危機感も感じている。

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