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開発費負担の先行と資金回収の長期化で資金繰りに失敗した実例です。経営不振に悩む経営者の方は、会社の倒産、破産に強い弁護士にご相談下さい。

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37 製造業の経営の失敗(37):開発費負担での資金繰りの失敗

会社の倒産、破産に強い弁護士の鈴木陽介です。

ここでは、開発費負担の先行と資金回収の長期化で資金繰りに失敗した実例をご説明します。経済産業省の公表資料「ベンチャー企業の経営危機データベース」に基づいており、弁護士の鈴木が適宜修正編集等しています。

なお以下が会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧です。ご活用いただければ幸いです。
・ 会社の経営失敗、倒産、破産の実例紹介の弁護士のコラム一覧


会社経営の失敗の概要


 開発費負担の先行と資金回収の長期化で資金繰りに失敗

研究開発型ベンチャー企業ゆえに、開発費負担が先行。商品化第1号となった製品は農家を販路とし、性質上資金回収の長期化は予想されていたが、農家を取り巻く環境悪化により回収長期化がさらに悪化した。その間は資金繰りに苦労した。金融機関のベンチャー向け融資で、資金繰りに目処をつけることが出来た。

 企業プロフィール

所在地 北海道
業種 製造業
従業員 44名
設立・創業 設立:昭和59年6月/創業:昭和52年4月
事業分野 バイオ
事業概要 主にキノコの一種である担子菌など天然物の機能性に着目した健康食品を開発。抗腫瘍作用など認められる『アグリシリーズ』(仮称)を展開。北海道を代表するバイオ系ベンチャー企業。
社長の年齢 30歳代
創業時の属性
(職業)
会社勤務(スピンオフ/スピンアウト)


会社経営の失敗の詳細


 結論

研究開発型ベンチャー企業ゆえに、製品開発に先行投資を実施。商品化第1号となった「アグリA」は農家を販路とし、性質上資金回収の長期化は予想されていたが、農家を取り巻く環境悪化により回収長期化が加速。その影響で投資回収期間も長期化し、その間の資金繰りに苦労した。金融機関のベンチャー向け融資を活用し、なんとか資金繰りに目処をつけることが出来た。

 設立から成功まで

1977年大学を卒業した創業者が、友人からの勧めもあり個人で創業。当初は笹やおが屑の微生物を使って分解する牛の菌体飼料作りを手がけるも、その後、実験の過程で植物の生育を著しく促進させるホルモンを発見。それを基に作った農作物生育促進剤「アグリA」を商品化した。法人化後も機能性食品を相次いで開発・商品化。平成8年工場・研究所を併設した新社屋を建設し、生産・研究体制も充実。金融機関や事業会社からの出資も受け入れて資本金も拡充し、平成17年期には最高売上を記録。高い収益力も維持している。

 課題・ヒヤリとした経験

研究開発型ベンチャー企業は製品開発に先行投資を実施しなければならず、さらに「アグリA」は販路が農家となるため春先に商品を納入しても回収は農作物が成育し出荷される秋となるため、どうしても回収サイトが長期化してしまう。研究開発費等の投資回収期間が長期化したことにより、その間の研究開発費や人件費等の捻出といった資金繰りに苦労した。

 対処と結果

1984年メインバンクのベンチャー企業を対象とした無担保融資制度を活用して5,000万円、翌年は政府系金融機関からも技術開発資金1,000万円を調達し、資金面は一定の目処が付いた。販路である農家への試験的な導入の際への助言・アドバイスには時間をかけた。しかし、焦らず十分にステップを踏まえたことにより、商品の信頼性が高まり、結果的に当社の発展に寄与した。
「アグリA」の販路である農家を取り巻く環境が年々厳しさを増す中、今まで培ってきた研究開発能力で新たなマーケットを開拓できる商品の開発に着手した。「アグリA」の製造過程における高分子に着目し、それが機能性食品の開発着手に繋がり、新たに健康食品分野のマーケットを開拓できた。

 原因

(1) 特性

商品化までの期間や費用、外部環境を読みきれなかった
研究開発が先行するバイオ系ベンチャーとしての企業体の場合、商品化に至るまでどれだけの期間と資金が必要とされるかを把握するのが困難であった。また、マーケットであった農家を取り巻く環境も完全に予測するのは不可能であった。

(2) 要因

限られた販路と販売先の環境悪化で資金繰りが多忙化
当初開発した「アグリA」は農家を対象としており、販路が農家のみとなると、回収の長期化はある程度、開発当初から想定していたが、完全な予測は難しかった。農家の取り巻く環境悪化はある程度把握していたが、資金繰りに行き詰るまで長期化することは予想できなかった。

 経営判断

商品化第1号の「アグリA」は農家を販路としていたが、農家が取り巻く環境は年々悪化傾向にあった。今後成長を期待できない先が当初のターゲットであったことが、資金繰りに影響した点は否定できない。また、農家への商品の浸透にも時間をかけて理解を得ることが必要とされたことに加え、農家の取り巻く環境は予想以上の速度で悪化。金融機関からの融資を受けるなど、資金計画の見直しを行った。

 背景

当時、バイオ産業が注目され、その振興が叫ばれていたが、販路の拡大がなかなか果たせず、バイオ資源である農作物の取り巻く環境も悪化傾向にあった。また、研究開発型のベンチャー企業ほど販路の壁に突き当たっており、現在でも研究開発型企業の課題となっている。

 得られた教訓

ベンチャー企業にとって小さな失敗やカベにぶつかることは当たり前で、回り道や寄り道、角度を変えて事象を見直すことにより、そのカベを乗り越えられ、それが会社の財産となる。会社が大きくなっても「うまい話」には乗らず、身の丈にあった経営に努め、創業当時の精神を貫き通すことが、小さな失敗やカベを大きくせず乗り越えた要因と考える。
開発した機能性食品の中で、健康食品ブームに乗り一時大幅に成長したものがあったが、大手の流通過程の中では価格競争を強いられるなど、独自の販売方法の確立が必要と学んだ。また、資金繰りや当社の技術力を生かせることのできる範囲内での新たなマーケットの開拓も必要とされた。

 後日談

農作物生育促進剤の開発から、その技術を生かした機能性食品の開発には、開発に投下した資金の回収が遅れようとも、一貫して有効性はもちろん安全性を徹底的に追求した。それを公的な試験施設、研究機関、病院などで裏付けを取り、商品の付加価値を高めた。
更に昨今の健康志向といった単純なブームの乗らず、販売方法も信頼を置ける代理店を主体とすることで価格競争に巻き込まれない販売方法を確立したことが、当社の成長を支えている。
その結果、14期連続増収など企業として着実な成長を遂げ、業界における地位を確立している。

会社の経営不振、破産、倒産に悩んでいる経営者の方は、お電話下さい。会社の再生、倒産、破産に強い弁護士が、適切な対応をアドバイス・サポートします。


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