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事業承継(親族内承継)での事業承継税制、相続時精算課税、退職金をご説明します。事業承継にお悩みの方は、中小企業のM&A・事業承継に強い弁護士にご相談下さい。

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8-2 親族内承継(2):相続時精算課税、事業承継税制、退職金活用

M&A・事業承継に強い、弁護士の鈴木陽介です。

会社の引継ぎにお悩みの経営者の方は、サンベル法律事務所にご相談下さい。会社の引継ぎ、承継には、M&A、事業承継に強い弁護士を関与させるべきです。


弁護士鈴木が力を入れているM&A・事業承継のコラムです。

親族内承継での暦年課税贈与、相続時精算課税、事業承継税制、小規模宅地等の特例、退職金をご説明します。内容は、中小企業庁の公表資料「事業承継ガイドライン(平成28年12月,中小企業庁)」に基づいており、弁護士鈴木が適宜編集等しています。

 親族内承継のコラム

1  親族内承継(1):後継者の選定・育成

2  親族内承継(2):事業承継税制、退職金の活用

3  親族内承継(3):従業員持株会、遺言の活用

4  親族内承継(4):買取資金の調達、名義株の整理

5  親族内承継(5):保証・担保の承継、資金調達


財産の承継−事業承継での税務対応


 親族内承継においては、先代経営者から後継者に対し、株式や事業用資産を贈与・相続により移転する方法が一般に用いられています。この場合、贈与税・相続税の負担が発生しますが、事業承継直後の後継者には資金力が不足していることが多く、場合によっては会社財産が後継者の納税資金に充てられることもあります。この場合、事業承継直後の会社に多額の資金負担が生じることとなり、事業承継の大きな障害となっています。

 以下では、事業承継に向けた準備を進める経営者・後継者や支援機関が知っておくべき基本的な制度等について、概括的に紹介します。いずれの手法も一長一短があり、個別具体的な事案においても適合的な手法を採用する必要があることは言うまでもありません。また、手法によっては前もっての準備が必要な場合もあります。

 従って、可能な限り速やかに、税務面に関しては税理士に、資金調達については金融機関等に対して相談するなど、専門家の適切な助言を仰ぐべきです。

 暦年課税贈与

 財産を生前贈与する場合、贈与税が課税されます。いわゆる暦年課税贈与を活用する場合、年間110万円の基礎控除を受けることができます。一方、税率は10%〜55%の累進課税であるため、株式の評価額が高い場合には贈与税も非常に高額となり、後継者に多くの株式を贈与することが困難となる場合があります。

 相続時精算課税贈与

 生前贈与を行う場合、上記の暦年課税贈与によることが原則ですが、受贈者の選択により、「相続時精算課税制度」の適用を受けることができます。同制度の概要は以下のとおりです。
【相続時精算課税制度】
〇 相続時精算課税を選択できるのは(年齢は贈与の年の1月1日現在のもの)、贈与者が60歳以上の父母又は祖父母であり、受贈者が20歳以上かつ贈与者の推定相続人である子又は孫に該当する場合。
〇 贈与税は特別控除により累積で2500万円までは課税されない。
〇 贈与額が2500万円を超えた場合、その超えた部分については一律20%の贈与税が課税される。
〇 贈与財産の価額は、贈与者について相続発生時に、相続財産の価額に合算され、相続税において精算される(贈与時に贈与税を納付していた場合、納付すべき相続税額から控除される。)。

 ただし、一旦相続時精算課税制度を選択すると、その後同一の贈与者からの贈与については同制度が強制適用され、暦年課税制度によることができないため、注意すべきです。また、贈与者の相続時には、贈与財産の贈与時の価額が相続財産に合算されるため、贈与財産の価額が相続時に上昇した場合には有利に、下落した場合には不利に働きます。従って、暦年課税制度と相続時精算課税制度のいずれによるかは、贈与が可能な期間や所有財産の価額の動向を勘案して慎重に選択する必要があります。

 非上場株式等についての事業承継税制

 平成20年に成立した経営承継円滑化法に基づき、平成21年度税制改正により、「非上場株式等についての相続税及び贈与税の納税猶予・免除制度」(事業承継税制)が創設されました。事業承継税制は、事業承継に伴って発生する相続税・ 贈与税の負担により事業継続に支障が生ずることを防止するため、一定の要件のもと、その納税を猶予・免除する制度です。

 事業承継税制(相続税)を利用した場合、大きな税負担の軽減効果が期待できます。

1 非上場株式等についての相続税の納税猶予・免除制度

  本制度は、後継者が相続又は遺贈により取得した株式(ただし、相続開始前から後継者が既に保有していた完全議決権株式を含めて会社の発行済完全議決権株式の総数の3分の2が上限)に係る相続税の80%の納税が猶予される制度です。
 本制度の適用を受けるためには、経営承継円滑化法に基づく経済産業大臣の「認定」を受け、5年間平均8割の雇用維持等の要件を満たす必要があります。要件を満たせなかった場合には、猶予中の税額を納付しなければなりません。
 また、以下の場合に、猶予された相続税の一部又は全部が免除されます。
@後継者が死亡した場合
A会社が倒産した場合
B後継者が次の後継者へ贈与を行った場合
C同族関係者以外に株式を全部譲渡した場合(譲渡額が猶予額に満たない場合、その差額部分は免除され、譲渡額を納付すれば足りる)

2 非上場株式等についての贈与税の納税猶予・免除制度

 後継者が贈与により取得した株式(ただし、贈与前から後継者が既に保有していた完全議決権株式を含めて会社の発行済完全議決権株式の総数の3分の2が上限)に係る贈与税の100%の納税が猶予されます。
 要件及び効果については、【相続税の納税猶予・免除制度】と概ね同様です。

3 贈与税の納税猶予中に先代経営者が死亡した場合

 【贈与税の納税猶予・免除制度】の適用を受けている間に、先代経営者(贈与者)が死亡した場合には、後継者の猶予されていた贈与税は免除され、代わりに相続税が課税されることとなります。ただし、一定の手続き(切替確認)を受けると、上記の【相続税の納税猶予・免除制度】に移行することとなります。

 以上のとおり、事業承継税制では、相続税と贈与税の納税猶予及び免除制度を組み合わせて活用することで、相続のみならず生前贈与による株式の承継に伴う税負担を軽減することができ、将来にわたる円滑な事業承継が可能となります。

 小規模宅地等の特例

 一定の宅地等(相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等をいい、借地権も含まれます。)を相続した場合には、相続税の課税価格から一定の割合を減額する制度です。

1 特定事業用宅地等の特例

 特定事業用宅地等(被相続人等の事業の用に供されていた宅地等)は、申告期限まで事業を継続すること等の条件を満たした場合、400uまで評価額の80%が減額されます。この制度は、土地を事業用に利用している個人事業主にとって、非常に有用な制度であるといえます。
 例えば、500u、総額1億円の土地、相続人が子供1人の場合の計算例は以下のとおりです。
【減額される額】1億円×400u/500u×80%=6,400万円
【相続税の課税価格】1億円−6,400万円=3,600万円
【課税遺産総額】3,600万円−3,600万円(基礎控除額)=0円

 なお、一定の要件を満たす同族会社の事業を承継する場合についても同様の減額があります(特定同族会社事業用宅地等の特例)。この制度は、経営者個人の所有する土地を自社の事業に利用している会社経営者による利用が想定されます。

 退職金

 一般に、退職金はその支給を受けた人の所得税等の課税対象となりますが、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した退職金、いわゆる死亡退職金(死亡後に確定した生前退職金も含む)は、相続税の課税対象となります。

 死亡退職金のうち、被相続人のすべての相続人が取得した退職金の合計額が、下記の非課税限度額の枠内であれば、課税されません(限度額を超えた部分について課税されます。 )。
【非課税限度額】
  500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

 なお、個人事業主であれば、小規模企業共済制度の活用により、会社における退職金と同様のメリットを受けることができます。


会社の引継ぎ、M&Aに臨む中小企業の経営者の方は、お電話下さい。今後のとるべき方向性や留意点などを事業承継・M&Aに強い弁護士がアドバイスします。



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弁護士鈴木陽介書籍事業承継税制 相続時精算課税 退職金

書籍:歯科医院の事業承継とM&A

学建書院,2016年